せっかくなら、しっかりお金をかけて一生もののトラウザーズを手に入れるのもいい。サヴィル・ロウとヴィヴィアン・ウエストウッドで研鑽を積んだ、英国の「新しいクラシック」。
英国製にこだわり抜いた人生をともにするトラウザーズ

ヴィヴィアン・ウエストウッドでメンズのデザインマネージャーを務めた後、2019年に自身のブランドをスタート。クラシカルなデザインをベースに、現代的なエッセンスを取り入れた服が国内外で人気。
サヴィル・ロウでテーラーリングを学び、2019年に自分の名を冠したブランドを立ち上げたハリー・マンデーさん。ビスポークテーラーでありながら、タイムレスな既製品作りでも注目を集める。英国製にこだわったフレアパンツの魅力について聞いた。
「ブランドコンセプトは大きく分けて二つあります。一つはローカルプロダクション、すなわち英国製であることです。以前はスーツなどは英国生産が多かったのですが、最近ではイタリアで作られることが増えているのが現状です。自分たちもロンドン郊外の小さなアトリエでものづくりをしていますが、英国にはスモールビジネスで展開する生地店や機織店が多く存在するので、そういったところと積極的に組むようにして、Made in UKを貫いています。もう一つは、自国の生産背景にこだわることにもつながりますが、丈夫で長く着られる服を作ること。英国のトラディショナルなデザインをベースに、少しだけ現代的なエッセンスを入れ、個性を出しているのがポイントです。既製のトラウザーズとしては、フレアとストレートの2型を展開。デザインは、僕の父がサヴィル・ロウでオーダーしたスーツの組下であった、クラシックな一本を参考にしながら、モダンなフレアシルエットを追求しています。膝と裾幅の差寸を大きくすることで、膝から下の生地の揺れが美しくなるように計算しつつ、よりフレアが強調されるシルエットを目指しているのです。サヴィル・ロウだけでなく、ヴィヴィアン・ウエストウッドで経験を積んだことも大きく影響していますね。また、生地、パターン、縫製だけでなく、余裕をもってウエスト調整ができるようにしているのも特徴です。通常のサイドアジャスターでは6㎝くらい調整できるのですが、こちらは10cmほどに伸ばしながらもフィットした腰まわりを実現。年を重ねてお腹が出てきたときには、ウエストをゆるくすることもできるんです(笑)。そういったアレンジを加えているので、20年以上はいていただき、未来のクラシックになればと考えています」

ジャケットを合わせたときの流れるようなフォルムが美しい。フロントはLポケット仕様。



英国のビスポーク文化を継承しながら、ハリー・マンデー流に解釈されたシルエットやディテールが特徴。長く愛用できることをコンセプトに掲げ、’70年代のアーティストが好んだフレアカットを普遍的なシルエットに昇華している。また、20年以上のウエスト変化に対応できるサイドアジャスターもさすが。
HARRY MUNDY
ロンドン郊外にアトリエをもつビスポークテーラー。2021年からは既製服を作り始め、日本のセレクトショップでの取り扱いも増えている。