朝起きてひとり、一日何も予定が入っていないと気づいたときほど幸せな瞬間はない。今日の舞台はベッドの上。パジャマも着たまま、だけど大好きなファッションで自分をとことん甘やかす。話題の俳優・中島歩さんが演じるおいしい脳内ストーリー。
甘やかすとは浸ること
「甘やかす時間と頑張る時間は裏表。常に相互に作用する、自分にとって大切なもの」と語る俳優・中島歩さん。話題作への出演を重ね、これまで以上に大きな注目を集める彼が、そんな“甘い時間”を求める理由とは。
「先日久々に、覚えるセリフがないゆっくり過ごせる時間ができて。どうしてもやることは無限に出てくるから、意思をもって『今日は余計なことを何もしない』と自分を甘やかしました。仕事をうまくやろうとか、自分のキャリアを伸ばそうと努める日々の中で、何もしないと決めて本当に何もしないときこそ、『このために頑張っていたんだ』と幸せを感じますからね」
そのために重きを置いているのは、「今」に焦点を当てること。3年以上続ける瞑想から得た感覚だという。
「近頃、この瞬間に“浸る”ことを意識しています。あれしなきゃこれしなきゃと、今じゃない何かに思いを寄せていると、途端に気が急いて、自分を見失いそうになる。例えば今に集中して状況と気分に合わせて音楽を聴くことで、一瞬一瞬に浸れるようになるんです。急いで家の掃除をするときはダンスミュージックを、ちょっとぼんやりするときはアンビエントやボサノバを聴くと、そのときの自分らしくいられる。俳優として役を演じることやモデルとして服を見せることも、同じく浸るということ。やっているときは余計なことを考えず『今を生きている』という感覚になる。頭も身体もリラックスすると現場でアイデアが今まで以上に出てきて、演技の自由度が増していくんです。だから結果的に浸ることは甘やかすことにつながる」
中島さんの演技を見ていて、「今を生きている」と感じることがあった。先日最終回を迎えたドラマ『Tシャツが乾くまで』の中にいる園田樹生だ。
「どんな作品でもどんな役でもどんな状況でも、いかに素でいられるかという取り組み方を常にしています。特にこの作品では、妻を亡くすという悲しみを背負う役柄なので、演技でのデフォルメをせず、心が動いたときに自然と言葉が出て身体が動くよう意識しましたね。と言いつつ、実は撮影に臨むまでに不安もあったんです。感情の振れ幅や出力が大きいキャラクターですし、登場人物それぞれが多面的に描かれるから、自分にこの脚本を乗りこなすことができるかわからなかった。それによって視聴者がついてこられなかったり、もしかしたら僕たちの役の行動にイライラしたりするのではないかと。でもいざ現場では、土井(裕泰)さんをはじめとする演出家や共演者の皆さんと気になる点を解消し合い、すごく楽しく演じさせていただきました」
放送が始まり、視聴者の反響を見聞きしながら撮影を進める中で、本作の面白さを嚙みしめていたという。
「多面的な人物像を描くことで、人は人を、言葉を使って単純化しようとするのだと学びました。誰もが相手を理解しようとするために、自分のフィルターを通して“そう思いたい人”としてとらえる。なので言葉にすることで、その他のいろいろなフィーリングを取りこぼす気もして。本作はそんな単純化を壊す物語を描いた、実は挑発的な作品だと感じています。そこに身を置き思ったのは、人に伝えたり気づきを得たりするために言葉という存在は大切にしながらも、『なんかいい』という自分の感性に素直に浸ることも大事にしたいということですね」
1988年宮城県生まれ。俳優として数々の話題の映画やドラマに出演。今年は『俺たちバッドバーバーズ』(テレ東系)で連ドラ初主演。『Tシャツが乾くまで』(TBS系)では沼る大人が続出し社会現象に。出演映画『男ともだち』(三島有紀子監督)が11月6日公開予定。