この疑問を解決するにあたって、オーラリーをはじめて知る、もしくははじめて着る、一見コワモテな4人の男にアウター以外を私服で合わせセルフスタイリングしてもらう。彼らの背景や現状の話と、デザイナー岩井良太さんのこだわり話から「黒のもつ優しさ」の秘密をひもとく。
「オーラリーの柔和な黒が、父親の顔を引き出してくれる」(着る人・野村空人)
作り手の声
着込んだような墨黒のニュアンスを再現すべく、私物のヴィンテージのフーディをもとに色味を何度も微調整。ウール混ならではのまばらな染まり方を生かしつつ、古着のかすれた風合いにしました。シルエットは短丈に設計することで、現代のどんな人のワードローブにも馴染むバランスへと落とし込んでいます。(岩井)
着る人の声
黒のフーディは、海外を飛び回っていた20代の頃からの相棒。当時は黒=強さを纏うための色でしたが、父親になって子ども服の柔和な色に触れたことで、漆黒ではなく墨黒のようなニュアンスのある色味を選ぶようになりました。オーラリーの墨黒が父らしい優しいムードにしてくれました。(野村空人/42歳/バーテンダー)
「全身レザーの攻めた着こなしもオーラリーなら怖くない」(着る人・冨田和久)
作り手の声
黒はレザーの美しさを最も引き立ててくれる色。素材と色の特性を生かしつつ、艶っぽすぎないレザーシャツを作りたかった。軽やかなベビーカーフの素材がいちばん際立つ黒を追求しました。デザインで常に考えているのは老若男女、誰でも似合う「振り幅」をもたせること。だから優しく見えるのかもしれません。(岩井)
着る人の声
年を重ね、恥ずかしくて避けていたレザーとの距離感に変化が。オーラリーの素材使いは秀逸で、ベビーカーフのしっとりとした艶が、アラフォーのやや枯れてきた肌をカバーしつつ馴染む。シルエットにも力みがなく、若い頃は無縁だった全身レザーの着こなしも怖くないのが不思議。(冨田和久/39歳/古着店オーナー)
「ショールカラーが黒コート特有の強さを中和してくれる」(着る人・矢舟テツロー)
作り手の声
ほかのアイテムの黒には茶色やグレーといったかすかなニュアンスを加えていますが、このショールカラーコートはあえて漆黒です。細やかで起毛感のあるウールが光をやわらかく受け止め、黒に立体感を与えながら、シルエットまで優しく見せてくれるんです。印象の強い色ほど素材でニュアンスを調整するのがポイント。(岩井)
着る人の声
どこに行くにも間違いなし、そして少しだけ緊張感もある。そんなコンサバな理由から、アウターは黒と決めています。このコートはふっくらとした起毛感に、ショールカラーも相まって黒特有の強さを中和してくれる。かわいげがあり緊張が解けますね。(矢舟テツロー/シンガーソングライター・ジャズピアニスト)
「人当たりのいい黒がコミュニケーションを円滑にする」(着る人・木村史園)
作り手の声
厚手のオーガニックコットンを後染めした深みのある黒に、褪色のニュアンスをかすかに加え「フェードブラック」と名づけました。ともするとのっぺりと見えるバルカラーコートに顔料染めを採用することで、新品でありながら着込んだようなアタリを出して奥行きを出す。着る人の心情にマッチする服であるとうれしいです。(岩井)
着る人の声
30代前半まで全身黒が定番でしたが肩書のある仕事が増えるにつれ、黒のもつ威圧感や、仕事相手に与える印象が気になってきました。このコートの褪せた黒にはそんな威圧感がなく、どこか謙虚。優しい印象の茶系との相性もよく「人当たりのよさ」を求める今の自分にしっくりきます。(木村史園/44歳/モデル・制作)