この春、ラグジュアリーの構図が激変! ブランドの舵取りが続々と交代し、ときめきが止まらない。新ディレクター渾身の「初手」を受けて立つのは、同じく今春新しい魅力を振りまく俳優・中島歩。UOMO誌上初のロングインタビューとともに「新星」同士のベストマッチを見よ!
01|DIOR by Jonathan Anderson
全世界が固唾をのんで見守った1stコレクション。ディオールのクリエイティブ ディレクターに就任したのはクラフツマンシップを愛するジョナサン・アンダーソン。メゾンの主要ラインを一人で統括するのは、なんと創業者のクリスチャン・ディオール以来初のこと。温もりあるドネガルツイードのコンパクトなジャケットと武骨なウォッシュドデニムという、エレガントなテイストミックスはジョナサンの真骨頂。今後の展開にも胸が高鳴る。
02|GUCCI by Demna
ファンだけでなく、若者からも今いちばん関心を寄せられているアーティスティック・ディレクターこそ、グッチの未来を託されたデムナ。昨年9月にルックブック形式で公開された、彼が初めて手がけたコレクションが“La Famiglia”だ。「グッチらしさ」を再解釈した37のキャラクターのうち、今回は“Cocco di Mamma”(マザコン)をピックアップ。鮮烈なキャラ設定ながら、個々のアイテムは実に着やすい。グッチ新時代の幕が開いた。
03|CELINE by Michael Rider
「いったい何者?」というざわめきを、圧倒的なクリエイティブで一蹴した新生セリーヌのマイケル・ライダー。プレッピーをベースにしたフレンチシックなラインナップは遊びのわかる40歳男子にこそふさわしい。ジャケットのタイドアップに、赤いニットを肩掛けしてノスタルジックなムードに仕上げるのがモードのニューコード。
04|JIL SANDER by Simone Bellotti
かつてのジル サンダーらしいクリーンでピュアな美学を再解釈しつつ、よりパワフルで洗練された世界観を構築したシモーネ・ベロッティ。シルエットはジャストもしくはタイト、レングスの差異で表現するレイヤード、センシュアルな肌見せなど、メンズウェアのゆるい潮流に食傷気味だった大人に刺さるポイントがこれでもかと詰まっている。ソフトワックスカーフスキンの極薄レザージャケットは、新生ジル サンダーの魅力を十二分に表現しており、美しいスラックスで潔く堪能してほしい。
05|BOTTEGA VENETA by Louise Trotter
職人技に敬意を表し、勢いを増すブランドを引き継いだ女性デザイナー、ルイーズ・トロッター。モダンかつクリーンなデザインで知られる彼女の1stコレクションは、構築的なシルエットに流れるようなドレープなどが加えられた、強さと優しさが同居したような趣。ありそうでない8ボタンのダブルブレステッドスーツに白のコットンキャンバスコートという潔いモノトーンルックは意志のある中島さんによく馴染む。
「かっこいい」より「面白い」と言われたい。
ラグジュアリーブランドに就いた新デザイナーが手がけるコレクションを、それぞれ異なる人物像を思い描き着こなした中島歩。一着一着袖を通しまとった感覚から、シリアスに、ミステリアスに、ユーモラスにイメージを醸成していく。
「どのブランドもそれぞれの美しさとクセがあって、バチバチにキメるよりちょっとキャラクターがついた見せ方がいいのかなって。かっこよくいることがすべてかっこいいわけじゃない、とも思っていて。芝居もかっこいいより、面白いと言われたい。かっこいいもうれしいけど、気恥ずかしくなっちゃう(笑)」
そんな中島の美学は、子どもの頃から身についていたようだ。話は10代に遡る。
「昔からクラスのお調子者で、高校のときはコントや漫才をやって、大学では『お笑いサークルだよ』って半分騙されて落語研究会に入部してガチの落語をやらされて。でもやっていくうちに、稽古して一人で高座に上がり、ウケたりスベったりするのが面白くなっちゃった。その経験から芝居に興味をもちました。そこから日本映画や演劇を見まくったり、心から面白いと思える劇団の人々に出会い、刺激をもらったりして、20代は舞台を中心に技術をひたすら勉強しました」
芝居を愛し、打ち込む彼に転機が訪れる。映画『パビリオン山椒魚』や『乱暴と待機』『南瓜とマヨネーズ』などを手がけた冨永昌敬監督との出会い。
「冨永さんの映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』でご一緒した後、次にドラマ『ひとりキャンプで食って寝る』に呼んでいただいて、変で面白い役をくださったんです。それまで学んだ技術も試しながら、自由にやらせてもらう演技を冨永さんがどんどん肯定してくれる。『これでいいんだ』とやりたい表現ができた感覚を得られたのが大きな自信になりました。その時期を境に仕事が増えていって。それが30代に入る頃」
それから約7年。ドラマ、映画、舞台で幅広いキャラクターを演じ、存在感を示してきた中島は今、初めて連続ドラマの主演を務める。「好きな要素とお芝居が集約された作品」と、放映中のドラマ『俺たちバッドバーバーズ』を語る。
「マレットヘアの個性的なルックでギャーギャー言う元美容師の日暮というキャラクターを演じていると、自分がどんどん解放されていく感じがあるんです。変に気取る必要がない役で、気づいたら気持ちよくなっちゃってた感じ(笑)。月白を演じる、同じ主演の草川(拓弥)くんと阪元裕吾監督とお互いにアイデアを出しながら、自由にやらせてもらっています。プロレスの回では、台本にないけどずっと(アントニオ)猪木さんをマネして、誰も止めないから『これ、どこまでいけるのかな』って続けたり(笑)。結果、家では思い浮かばない面白いことを形にできる瞬間があって、本当に楽しい」
俳優は作品に入るたび、新しい仲間や状況に出会い、新しい人物になる。ある意味、常に“新しい中島歩”と言える。
「最近は現場にあるものや起きていることに影響されようと、状況に対してオープンでいることを意識しています。芝居には台本もあるし準備も大事だけど、相手役の芝居もあるし演出の意向もあるし、その場に行かないと最終的に自分がどういう話し方になるかも決まらない。その一方で変わらず思っているのは、僕は映画でも漫画でも音楽でも、日暮みたいに何かが欠落していたり、『え〜、だめじゃん』と思われたりする人たちに救われてきたこと。自分も役を通して、そんな人の愛らしさを伝えたいと考えています」