都市と自然、オンとオフ。その境界を自由に行き来する人のために——。
1940年創業のバッグ&ラゲージメーカーの老舗ACE(エース)が手がけるライフスタイルブランド「UNTRACK(アントラック)」が、2025年11月21日、原宿に初の直営店をオープンした。"URBAN×OUTDOOR"をテーマに、バッグとウェアをシームレスに展開する同ブランド。その世界観を体現した新店舗の魅力を、ブランドディレクターの生本紘史さんに案内してもらった。
直営店の世界観——なぜ原宿だったのか
店内に足を踏み入れると、中央に置かれたブルーの什器とドライフラワーのオブジェが目を引く。壁一面にはバッグがグリッド状にディスプレイされ、反対側にはウェアがずらり。バッグとウェアが同じ空間で共存する様子が、ブランドのトータル提案を象徴している。実際に手に取り、素材の質感や機能性を体感できる。まさにブランドの世界観を五感で味わえる場所だ。
初の直営店の場所に選んだのは、原宿・神宮前エリア。その理由を生本さんはこう明かす。
「原宿は、世界的な情報発信の地だと思っています。さまざまなカルチャーがひしめいていて、そこで得た情報をブランドとして取り入れ、発信していける。国内だけでなく、世界に向けても発信できる場所だと感じたので、原宿を選びました」
ブランドの原点——コロナ禍が生んだ「新しいオン」への問い
ブランドディレクター・生本紘史さん
「アントラックは2023年8月に立ち上げたブランドです。コロナ禍以降、働き方が多様になり、オンのウェアもかなりカジュアルになりました。でも、カジュアルバッグで通勤するスタイルは、まだそこまで浸透していなかった。そこで、バッグを起点にオンのシーンを含めたライフスタイルを提案していきたい、そんな思いからスタートしました」
生本さんは、アントラック誕生の背景をそう語る。80年以上の歴史を持つ老舗バッグメーカーが、なぜ今、ウェアまで手がけるのか。その答えは明快だった。
「バッグだけでスタイルを提案するのは限界があると思っていました。ウェアまで手がけて、全体のスタイリングとして伝えられるほうが、 わかりやすいし、イメージもしやすい」
バッグとウェアをトータルで見せることで初めて、ブランドが目指すライフスタイルが具体的な像を結ぶ。それは単なる商品展開の拡大ではなく、ブランドとしての必然的な進化だった。
感性と機能の融合——ヴィンテージに学ぶものづくり
生本さんのものづくりの原点には、全国の古着屋やヴィンテージショップを巡る趣味がある。
「ヴィンテージアイテムには、量産ではできない手仕事が加わっていたり、ものづくりにおいて妥協のないところに、すごく共感できる部分が多くて」
とはいえ、アントラックのプロダクトは単なる復刻ではない。
「当時のものづくりには、現代における高機能性がない部分もある。今の時代にあった使いやすさを加えてあげることで、感性的な価値に機能的な価値を融合させて、現代に生きるみなさんへご提案できるものになればいいなと」
ヴィンテージの普遍的な美しさに、現代のテクノロジーを掛け合わせる。それがアントラックのものづくりの核心だ。
注目のプロダクト① CITY / DS | Day Pack M (DP) ¥36,300
「ブランドの一番アイコニックなアイテム」と生本さんが語るのが、このデイパック。定番デイパックをベースに、ビジネスユースを意識した改良を加えている。カラーはブラックとグレー、そしてシーズンカラーとして、上品なペールグリーンカラーのジェダイの3色展開。
最大の特徴は「2.5層構造」。メイン収納と背面のPC専用スペースに加え、前面に浅めのポケットを配置した。
「電車移動で前持ちしたときに、さっと手を入れて物が出し入れしやすい。このトップ部分にポケットを設けているのが、使いやすさのポイントです」
ショルダーハーネスには、エース社内の研究開発部門「エースラボ」で開発された「ユニバーサルハーネス」を採用。60名以上の体格データを数値化し、形状・位置・角度を最適化。多くのユーザーの肩にフィットし、快適な背負い心地を実現する設計だ。
素材は国産ファブリックの「ディクロス ソロ」。ポリエステル100%ながら、超高密度に織り上げることで独特の質感と撥水性を実現している。
注目のプロダクト② CITY PLUS / The Helmet | Tote Bag ¥38,500
アメリカ軍でヘルメット収納用に開発されたバッグをモチーフにしたモデル。
「日本のブランドでも70~80年代に使われていたヘルメットバッグをモチーフにしたものが出ていますが、ほかと同じことをしても意味がないなと」
生本さんが着目したのは、1995年以降に採用された「進化版」ヘルメットバッグだ。前ポケットにマチ幅がつき、ショルダーベルトが追加、さらに背面ポケットも新設され、より実用的になっている。
当時はカモフラージュ柄だったものを、「ディクロス ソロ」の生地を使用し街中でも使えるスタイルに昇華。サイズも一回り小さくし、内装にはベロア調素材を再現。PC収納スペースも追加した。カラーはブラックとグレーの2色。
注目のプロダクト③ Essential Jacket ¥38,500・Wide Pants ¥26,400
「着るバッグ」というコンセプトを最も体現するのがこのジャケットだ。
素材は伸縮性のある国産の高密度ポリエステル。動きやすさと、洗濯機で洗えるイージーケアを両立。クリーニングに出さずとも自宅で簡単にケアできるのは、忙しいビジネスパーソンにとって大きなメリットだ。カラーは写真のカーキとブラックの2色。
「見た目はシンプルなんですが、内側にアイコンを設けたポケットが搭載されています。携帯、キー、イヤホン、財布、パスポート。出張にも、普段の必要最低限の荷物の持ち歩きにも最適です」
セットアップのパンツは、写真のワイドストレートとテーパードの2型を展開している。
「ここまでならいける」という新基準
最後に、どんな人たちへアントラックを届けたいかを聞いた。
「オンの服装をカジュアルダウンするときに、どこまで崩していいのか迷う人が多いのでは、と感じています。その“ちょうど良い境界線”を、アントラックのプロダクトを通じて提案していきたい」
生本さんは続ける。
「オンはもちろんオフも手放せなくなるような、いつでも心地よく過ごせるプロダクトを提案し続けたいと思っています」
スーツでもカジュアルでもない、第三の選択肢。老舗バッグメーカーが提示する“新しいオン”のスタイルが、原宿から始まる。
オープン記念キャンペーン実施中
「UNTRACK Harajuku」では、オープンを記念して店舗で購入した先着50名に、テック素材「ディクロス ソロ」を使用したオリジナル巾着をプレゼントするキャンペーンを実施中。素材選びにこだわるブランドらしい特典だ。なくなり次第終了なので、気になる方はお早めに。