エレガントな権威性を保ちつつ、多様なニーズに柔軟に応える懐の深さがファッションプロから高い評価を得ているメンズクロージングブランド「Belvest(ベルヴェスト)」。1964年に北イタリア・パトヴァで創業し、スーツをはじめ、芯地を抑えた軽やかさが魅力の名品ジャケット「JACKET IN THE BOX」など、着る人の体に自然に寄り添う仕立てを得意としている。今回はメンズファッションプロ8人に、今のムードを意識した着こなしを披露してもらった。
ノーブルな構築美をカジュアルに着崩したい

川辺圭一郎/トゥモローランド バイヤー
-JACKET IN THE BOX / SINGLE JACKET
「以前にイタリアの工場に伺ったことがあり、そのときに職人の丁寧な手仕事や、既製品とオーダー品を同じラインで作っていることに衝撃を受けました。クセのないノーブルなものづくりにも感動して、以来ずっと注目し続けているブランドです。今回は『JACKET IN THE BOX』のシルエットはそのままに、パッチポケットを採用して生地も別注。原型である段返り3つボタンのブレザーらしい、カジュアルな表情を大切にしています。ハリのあるギャバジン調の生地に対して、リネンTシャツとスラックスで軽快なスタイリングに。着心地はリラックスしているのに、美しいラインが出ている。シャツとタイでドレスアップしてもいいし、カジュアルに振っても崩れない。そういった着こなしの余白を許容する作りが、今の気分にちょうどいいんです」。

ブレザーの柔らかさとサイジングの妙で抜け感を出す

稲葉智大/伊勢丹新宿店 バイヤー
-JACKET IN THE BOX / DOUBLE JACKET
「長く取り扱っているブランドですが、マシンメイドのジャケットの中でも完成度は群を抜いています。定番の『JACKET IN THE BOX』は羽織るだけで、自然と所作までエレガントになる。このネイビーのダブルブレザーは、上品な光沢のウールギャバジン素材。しなやかでシワになりにくく、長時間着ても美しいシルエットを保ってくれます。今日は、かぎ針編みのニットと太めのスラックスに合わせて、着崩してみました。金ボタンのクラシカルな面持ちがありつつ、少し肩を抜いてもだらしなく見えないのは、『ベルヴェスト』の仕立ての妙。身幅にゆとりがあるのに、全体がすっきりとまとまる。ラフなスタイリングにも品が宿る、その器の大きさこそが最大の魅力だと思います」。

リネン混のニュアンスチェックを軽やかに

西口修平/BEAMS F ディレクター
-JACKET IN THE BOX / WOOL SILK LINEN WINDOWPANE JACKET
「『ベルヴェスト』のジャケットは、芯地や肩パッドを極力排した美しい仕立てが魅力。その佇まいに惚れ込み、毎シーズン継続してバイイングしています。今季選んだのは、リネン混のヘリンボーンにウインドウペンを重ねたチェック柄。柄に柄を重ねているにもかかわらず、視覚的なうるささがなく、むしろ春夏らしい柔らかなムードを醸し出してくれます。そして、胸ポケットとボタンの位置を少し上げて高重心寄りのバランスにし、裾のカーブをより流れるようなラインで別注するのがビームスFのこだわり。リネンのワークシャツにペインターパンツ、足元はウエストンのローファーでカジュアルな雰囲気に。イタリア製だけれど、どこかフレンチライクな抜け感を感じさせる佇まいで、デザイン的な特徴がなくても上質さがにじむ。着る人の個性に自然と馴染む“匿名性”こそ、大人にふさわしいラグジュアリーだと思います」。

モードな空気を取り入れた黒ブレスタイル

入井奏流/エストネーション バイヤー
-JACKET IN THE BOX / DOUBLE JACKET
「はじめて『ベルヴェスト』を手にしたのは、入社2年目の頃。『JACKET IN THE BOX』の軽やかな着心地に驚いて以来、スーツをオーダーし、メタルボタンのブレザーを購入し…と非常に思い出深いブランドです。ベルヴェストにはナポリっぽさや、ロンドンっぽさといったクセがなく、どことなく無国籍な雰囲気が漂う。だからこそ、着る人の個性でまったく違う表情になるのだと思います。そんなニュートラルな仕立てが成立するのは、パターンの完成度が高いから。襟の収まり、かまの位置も絶妙で、リラックスして着られます。今日着用したのは、定番である金ボタンのネイビーブレザーの形をベースに、あえて黒の生地にフラットボタン仕様に別注したもの。シャツでもこの絶妙なズレを表現したくて、グレイッシュなグリーンのレギュラーカラーシャツを合わせました。エストネーションらしい、抜けのあるドレススタイルになったと思います」。

クラシックを脱構築するハイブリッドなブルゾン

豊永譲司/ユナイテッドアローズ メンズチーフバイヤー
-SHORT BLOUSON
「『ベルヴェスト』の魅力は、かしこまりすぎず、ゆるすぎない絶妙な空気感。今回は、あえてショートブルゾンを選んでみました。社会性の象徴のようなテーラードジャケットとは異なり、身近に感じられるアイテムだけど、ブランドならではの品位をしっかり残したアイテムです。ジャケット同様に仕立ては軽やかなハーフキャンバスを採用し、スリーブは『LIGHTWEIGHT SINGLE JACKET』と同じ仕様に。ブルゾンとジャケットとでは工場を分けるのが常識のなか、それらをひとつのラインで仕上げられるのがベルヴェストのものづくりの素晴らしさですね。初夏らしくレザーサンダルを合わせて、色味を揃えたリラックス感のある装いに。クラシックの枠組みを壊さずにモダンに仕上げる。今の時代にユナイテッドアローズがこだわりたい提案です」。

軽やかなウールサッカー生地が白を引き立てる

宮崎雄司/DESIGNWORKS Mens DIV. ディレクター
-LIGHTWEIGHT SINGLE JACKET
「『ベルヴェスト』はドレスブランドでありながら、普段使いの最上級として提案できる稀有な存在。今回選んだのは、インラインのライトウェイトジャケットです。ウールサッカー生地で仕立てられた一着で、とにかく軽く、気兼ねなく羽織れる。肩の入り方やウエストのシェイプなど、パターンはしっかりとしているのに、クラシックすぎない絶妙なバランスが魅力です。そこに、古着のウエスタンシャツとペインターパンツで上下を白のトーンでまとめてみました。ラフな着こなしの雰囲気に、この柔らかで軽いジャケットが絶妙に馴染んでくれる。ドレッシーで高級なのに、古着とも違和感なく調和がとれる振り幅の広さこそが、ベルヴェストの真骨頂でしょう。仕立てがいいからこそ成立する自由度といいますか、懐の深さがあるんです。Tシャツとデニムでラフに振っても、佇まいはあくまでニュートラル。長く楽しめる一着だと思います」。

枠にはまらないトラッドを楽しむ

伊藤 誠/SHIPS PR
-JACKET IN THE BOX / DOUBLE JACKET
「かねてより、諸先輩たちが『ベルヴェスト』のジャケットにインコテックスのパンツ、足元はオールデンという組み合わせを実践していて、ずっと憧れてきました。もともとアメトラが好きでブレザーは何着も持っていますが、『ベルヴェスト』のそれはまるで別物。上質なウールを用いた背抜き仕立てが軽やかで、ふとした瞬間に生地が揺れる様もエレガント。紺ブレ特有のアメリカっぽさがなく、タイドアップはもちろん、ポロシャツやニットT、バスクシャツなどを合わせても、洗練されたスタイリングとして成立させてしまうパワーがある。きっと何年も着続けてしまうと思います」

パターンの美しさが、古着との合わせに品を添える

町 直哉/バーニーズ ニューヨーク六本木店 シニアセールスアソシエイト
-JACKET IN THE BOX / SINGLE JACKET
「気がつけば、手持ちのテーラードジャケットはすべて『ベルヴェスト』になっていました。10着以上所有し、パターンオーダーも何度か経験。ブランドにハウススタイルという縛りがないからこそ、こちらの意図をしっかり汲んでもらえるし、毎回違った楽しみかたができるのだと思います。そして最大の魅力は、やはり構築的な美しさと軽やかな着心地。ドレスの知識がない人でも、袖を通した瞬間にいいものだとわかる。そんな説得力があります。今日はウール100%のヘリンボーン地で仕立てた『JACKET IN THE BOX』で。ヴィンテージのデニムなど着用感のあるアイテムに、こうした上質で端正なジャケットをさらりと合わせるのが自分らしさです。カジュアルな素材とも違和感なく馴染み、かつ『ベルヴェスト』の格の高さが常に窺える。この懐の深さこそが、永く愛され続ける理由ではないでしょうか」。

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