「焚き火が仕事になるってすごいよね」

長谷川 イノくんはなんで焚き火やるようになったんだっけ?

猪野 理由の一つは、「POPEYE」編集部にいたAさんかな。

長谷川 なんて言われたんだっけ。

猪野 「これからはYouTuberか焚き火だ」って。

長谷川 あはははは(笑)。言いそう(笑)。

猪野 でも結構早かったよね、10年以上前。

長谷川 Aさんって東大出身で変わってたよね。何してるんだろ。

猪野 わかんない(笑)。あの頃の編集部って夜中でもたくさん人がいたよね。ハセはだいたい疲れた顔してやってきて、さっと帰る。

長谷川 5階の編集部にいないだけで、7階にいたよ。印刷所の人が朝来るからって、みんな夜中にいるのが当たり前だったよね。

猪野 あと、僕は山の雑誌でルポライターもやってたから。焚き火の企画の撮影が増えてきてさ。そうすると自然と火をおこす担当になるじゃない。それで「焚き火マイスター」っていう肩書をつけようって。自分で言い始めてたらヤバいやつだよね(笑)。

長谷川 でも、火をつけるのって難しいでしょ。

猪野 針葉樹のほうが広葉樹より燃えやすいとか、酸素が入りやすいように立てて組むとか、追求するとコツはあるけど、一般的にやるなら着火剤を使えばいいと思う。昔は着火剤は悪という声もあったけど。火をつける過程よりも、火を囲むことのほうが大事だと思っていて。こだわるのは道具よりも結果と場の雰囲気というか。

長谷川 それわかる。スタイリストでハサミやアイロンにこだわるとかどうでもいいというか。ダサいから嫌なんだよね。イノくんって、格好も焚き火の人っぽくない。あえてそう見せないというかさ。

猪野 育った環境もあるけど、小さい頃に学校から帰って、焚き火のためにわざわざ着替えるとかしなかったからね。難燃の服とか着ても燃えないわけじゃないし、火の粉とか目に見えるものは避けられるし。焚き火で白い服を着たとしても、別に洗えばいいやって。

長谷川 それにしても、すごいよ、焚き火を仕事にしてるんだから。これからはAIが台頭する時代だから、やっぱりAIにはできないことをしないと生きていけないと思う。真剣に向き合ってやる仕事は残ると思うんだよね。焚き火を極めることをすすめてくれた先輩は、焚き火っていうものが、時代を追うごとにどんどん時代の逆をいくから、そこに価値が出てくることを当時から考えてたんだろうね。

猪野さんは取材に応じながら、迷うことなく薪をくべて火をおこす。薪は立たせたほうが火が燃えやすくていいのだとか。

猪野正哉(焚き火マイスター)
若い頃はモデル業とライター業をこなし、「メンズノンノ」で専属モデルを2年ほど務めたことも。現在は、イベントやテレビ、書籍などを通じて焚き火の魅力を発信。祖父が手入れしていた造園を焚き火をするためのスペースにしている。