「CALM WARBLE DECOYS」というブランド名で、鴨をモチーフにした木彫りの作品を作っている宮舘大さん。木工作家としてだけでなく、グラフィックワークなども手がけ、幅広く活躍している。こちらは長谷川が、宮舘さんに特注して作ってもらった木彫りのハンガー。スタイリストという仕事柄、ハンガーには一家言をもつ長谷川のために、何度もサンプルを作って完成させた。すべて手作業で、一つずつ形や表情が違っている。作るのが大変なため、月に5本くらいしか作ることができないオーダーアイテム。
ハンドメイドの木彫りハンガー¥13,200/CAHLUMN(CAHLUMN STORE)
文/宮舘 大(クリエイティブディレクター)
無名で駆け出しの自分にとっては半ば冗談とも捉えられる昭雄先生のその一言から始まったハンガーの製作。二つ返事で「やります!」なんて言ったはいいものの、普段は鴨をモチーフとした造形物しか作ったことがない上に、クライアントワークなんてまともに受けたことがない自分にとっては、どの角度から見ても大仕事過ぎるだろうと思いはしたが、根拠もなくいいものを作れる自信は不思議とあった。
とりあえずラフを提案して、いくつかサンプルを作っては送ってを繰り返すこと5、6回。恐らくそれ以上。同じハンガーとはいえ初回に作製したものと本生産分を比べると、似ても似つかない1本に仕上がり、ものづくりや試行錯誤の本質みたいなものの片鱗を、ハンガーの製作から感じ取ることができた。いつになったらこれで行こうとなるのか、心が折れかけそうになった瞬間は何度かあったにせよ、これまでの短い作家人生のなかで経験したことのない、達成感や満足感を得ることができて、昭雄先生には心より感謝しています。
普段の製作では、正解や落とし所を一人で見極めなければならないからこそ、逆を言えばいくらでも手を抜いたり妥協できてしまう。ただ作品や製品として人の手に渡る前の段階に時間をかけることで、自己との対話が増え、納得できるまでの見えないハードルみたいなものが新しい創作の度に上がっていく。
自分の満足度が結果的に質やこだわりにも直結していて、ここまでやろうという、あと一歩先までを意識できるようになった、今のものづくりにも繫がっています。素敵なご縁や出会い、創作の素晴らしさに愛と敬意を込めて。