「100年近くたっていて、まだ現役なのがすごい」
有瀬肇(ARUSE 店主)
照明器具店「ARUSE」店主。彼と知り合ったのはニューオーモン。いつも京都の夜を徘徊し、シーンの最前線を見つめている。彼も僕も共通しているのは、新旧もトレンドも関係なく、ただ、いい店や物に出会いたいだけ、という気持ちだろう。
フランスのベルナール・アルバン・グラがデザインした照明、GRAS(グラ)。有瀬さんがヴィンテージのランプにハマったきっかけがこのメーカーのものだという。
「コルビュジエが愛用していたことでも有名なんですけど、僕の照明の師匠である写真家の雜賀(雄二)さんがグラに特別な思いをもっておられて、20年前くらい前に雜賀さんから買ったのが最初です。今では10台ほど手元にあります。中でも、去年買ったこれは特別珍しいものなんですよ。1930年代くらいのもので、このデザインは当時のお医者さんとか研究者が使っていたもの。本来台座は鉄製なんですが、薬品で酸化しないように木を合わせたNo.207というモデルです。そしてこの横長のリフレクターの形に、僕はずっと憧れていて。書類とかを見やすいようにこの形にしたかと思うんですけど、No.207のモデルに横長の1075というリフレクターがついたものがめちゃくちゃ珍しいんですよね。見た目がかっこいいのにオブジェじゃなくて、ほぼ100年たっていても、いまだに現役で使える道具ってヤバいと思うんです。今の家電と違って、当時の作り手は一生使ってほしいと本当に思っている。だから、ただ飾るだけじゃなくて、枕元に置いて使っています。どんなものでも買ったときはうれしくても、いつか飽きてくるじゃないですか。でもグラに関しては全部ずっと好きなんですよね。なかなかそういうプロダクトってないです」。
関節部分にネジや溶接をいっさい使わない、クリップ式の設計が革新的だった。多数のモデルとリフレクターが存在する。ヴィンテージランプ「GRAS No.207」/私物