僕の周りで、ラルフ・ローレン氏に影響を受けた人は少なくない。メンズファッション業界全体で考えても同じなんじゃないだろうか。氏が世界に与えた功績は’80〜’90年に、プレッピーらしいアイテムを作って、実際に本人が手を下し、プレッピースタイルを明確にビジュアル化し続けたことだと僕は思っている。そしてそのビジュアルや手法に異論を唱える者はいなかったということは皆、そこに憧れや敬意を抱いていたということだろう。実際、SNSが進化した今の時代においても、全世界で過去のビジュアルがシェアされ続け、今でも影響を与え続けているのだから。ここについては間違いなく、アメリカントラッドのどのファッションブランドとも一線を画すところだろう。

 ルールに縛られない自由さとリアルさと美しさというアメリカらしい表現には、アメリカ本国よりも、アメリカ影響下にある戦後日本のほうが実は強烈なインパクトを受けたのではないかと思う。そのクリエーションにおける服や靴下のシワや、シャツの袖やパンツの裾のロールアップ、ロケーションなど、細部の表現に、アメリカ社会を感じることができた。というとおおげさだが、ただきれいにアイロンを当てればいいということとは明らかに違うフィロソフィがある。それがとても手仕事的であり職人的であると思うのは、僕がスタイリストだからであり、常にその視点でビジュアルを見ているから。僕にとってこのブランドがすごいと思う最大のポイントは、製品の段階で洗いを施し、着慣れた雰囲気を誰もが演出できるように設計されているところだ。しかもおそらく細かく指示を出していて、生地の段階で洗ったり、生地そのものもどこにでもありそうでいて、そうではない独自の基準をもって作られている。この4ページはすべてポロ ラルフ ローレンの服。僕はコーディネートを組み、着せて多少ディテールを作ったりはしたが、特に洗ってない。いつもなら服は洗ったりスチーマーを使うなりして表現するのだが、あえて何もしていない。それでもこなれた雰囲気が出る。つまり、このブランドは意図的に誰が着てもいい感じに見えるように、下処理をしっかり行っているのだ。それはまるで寿司職人。これを手仕事と言わずに何と言おう。

 ポロ ラルフ ローレンは日常着のように作られたデザイナーズブランド。全世界にアイテムを供給するビッグブランドで、大量生産ではあるものの、アイテムはすべて、着たときに美しく見えるように一つ一つ、手仕事のごとく、意味をもって設計されている。

文/長谷川昭雄

こちらではポロシャツにストライプのボタンダウンシャツを2枚重ねた。ポロシャツについては後述するとして、ここのシャツの襟のボタンは留めないで着るものだと僕は思っている。ボタンはついてるけど、留めない。そこに侘び寂びがあるのだ。襟も小さめだから、適当にあしらって、重ねて着たっていい。このショーツとシャツは同じ生地だったからセットアップにしているけど、その上に着るシャツの柄はあえて大きめにした。そうなるとインナーはTシャツよりもポロシャツのほうが首まわりの馴染みがいい。仕上げはネイビーに小紋柄の入ったブルゾン。せいぜい色のトーンは合わせておきたい。こんなときに美しいのはブルー系。同じことをほかの色でやってもそうはならない。

マリン柄のコットンツイルブルゾン¥77,000・上に重ねたストライプシャツ¥26,400・下に着たストライプシャツ¥28,600・ポロシャツ¥22,000・腰に巻いたスウェットフーディ¥44,000・リネンショーツ¥28,600/ポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン)

ジャケットやネクタイを敬遠する人は多いだろう。でもそうではない。例えばショーツを合わせればだいぶカジュアルに見えるし、さらにはここのキャップをかぶればもっと簡単に日常的に見えてくる。洗い込むほどにいい雰囲気になっていくここのキャップは、こうしてブレザーを着たり、タイドアップしたときに、そのすべてを堅苦しくないものに仕上げてくれる強力なアイテム。フロントにポロ ポニー、後ろにPOLOとロゴが入っているから、後ろ前にかぶっても、いい雰囲気が出るのだ。このキャップはここのロングセラーであり、老若男女、人種を問わず誰にでも似合うアイテム。こうしたものづくりは、簡単そうでいて、意外と難しい。もし疑うのなら、街へ出て、見かけた帽子を片っ端からかぶってみてほしい。全部似合うとは限らないはずだ。でも不思議なことに、ここのは誰でも似合うはず。この素材感、大きさ、すべてが全人類に向けて作られているのだろうかと思うと、どうやったらそんなことができるのかさっぱりわからない。洗濯機で洗ってもほとんど縮まないから、何度洗っても、きちんとかぶれるし、ボロボロになってもなぜか雰囲気が損なわれないのもすごいところだ。

キャップ¥12,100・ブレザー¥198,000・シャンブレーシャツ¥23,100・肩に掛けたコットンセーター¥176,000・ツイルショーツ¥20,900・マリン柄のタイ¥24,200・スニーカー¥30,800/ポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン)

チェック柄にボーダーを合わせた。遠い昔に、ラルフ ローレンで、こういう複雑な合わせ方のビジュアルがあったことを思い出して。それ自体はもっと色も使っていて、柄ももっといろいろ使っていた。現実的に自分が着るならこれくらいなのかなと思うのだが、広告の役割であれば、もっと色や柄を複雑に使ったほうがいいのだろう。そうやって常に大胆にテーマを色濃くしてくれていたがゆえに、ラルフ ローレンはいつだってみんなのハートをわしづかみにしてきたのだから。

リネンシャツ¥49,500・長袖のボーダーTシャツ¥26,400・バケットハット¥27,500・ツイルショーツ¥20,900/ポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン)

その昔、とあるブランドで「うちはポロシャツの襟がよれにくいように作っている」という話を聞いたとき、僕と友人は首を傾げた。そんなポロシャツなら着たくない。でも、あくまで僕の推測だが、ラルフ ローレンにおいてのポロシャツの概念はおそらくまったく違うところにあると思う。2つボタンで、前立てが短めで、襟が適度にやれていくのがここのポロシャツが美しく見えるポイント。「ポロシャツは、ボタンなんか留めずに、開けて着るものである」とブランドはひと言も言っていないが、そういうつもりで設計しているとしか思えない。ボタンを留めないことで出来上がる浅いVネックTのようなVゾーンは、適度に色気がありつつも、気持ち悪くない。一応、襟があるけど、Tシャツのようなノリで着られるのだ。今季は裾にリブをつけたポロシャツが登場した。これにより、ウエストに適度なブラウジングが自然に生まれ、シルエットに緩急が生まれる。そうした一つ一つのディテールはただのデザインというよりも着たときにどう見えるのかが計算されているに違いない。しかも着込むほどに美しく見えるようになっている。着るほどに劣化していくものであふれている時代に、無駄なお金をかけることなく自分のスタイルをつくれる。それがここの魅力。

ポロシャツ¥22,000・ツイルショーツ¥24,200・キャップ(参考商品)/ポロ ラルフ ローレン(ラルフ ローレン)