1873年の創業以来、英国ノーサンプトンで受け継がれてきたクラフツマンシップを持つチャーチの靴は、時代を経てなお多くの男たちを惹きつける。今春夏の新作コレクションも、伝統の技術を礎にしながら、今日の着こなしに自然に溶け込む洗練が宿っている。その魅力を、スタイルを持つ3人がそれぞれの視点で語る。

「素材のためのデザインという考え方は、靴選びにも通じている」
河野貴之 「アンデコレイテッド」デザイナー

年間を通じて同じ服を着続ける——。アンデコレイテッドのデザイナー、河野貴之さんのワードローブ哲学はそれほどシンプルで、潔い。春夏はTシャツとロンT、秋冬はニット。季節が変わっても同じ服を少数精鋭で回す「ユニフォーム思考」が、10年近く続いている。素材の8割を自社開発し、半年かけて実際に着用検証してから商品化するというブランドの制作プロセスとも、その姿勢は一貫している。「僕のデザインの軸は『素材のためのデザイン』なんです。素材が出来上がった瞬間だけじゃなく、服になってから、着た後にも心地よいかどうかを自分で確かめる。そのサイクルを回すためにも、同じ服を着続けることが自分にとって必然なんですよね」

今回選んだのは「ペンブリー 2.0」のスムースレザー。普段はデニムやスラックスにスニーカーやカジュアルなスエードシューズを履くことも多い河野さんが、この一足を選んだのには明確な理由がある。「デニムのカジュアルさと対比させて、キリッと見せたかった。スムースレザーの光沢感が効くんです。ローファーはドレスシューズの中で、自分のスタイルにもっとも取り込みやすい入口だと思っていて。実際に足を入れた瞬間にすっとなじみ、ヒールがわずかに持ち上がった設計が歩行を自然に助けてくれる。長年積み上げてきた設計の妙を、体で感じた気がしました」

シューズ「ペンブリー 2.0」¥165,000(予定価格)/チャーチ(チャーチ クライアントサービス)

撮影当日のスタイリングは、スイングトップを取り入れたブリティッシュなニュアンス。「チャーチは英国ブランドだから、そこに呼応させるコーデを考えました。ブラック同士でも、トップスのコットンと靴のレザーという素材の差が変化を生む。素材起点で考えると、コーディネートの可能性が広がりますよね」

着用したのと同じペンブリー 2.0のブラックスエードモデルも“もう一足”の選択肢として挙げてもらった。「スエードはウールスラックスとのなじみがいい。同じモデルでも素材が変わるとスタイリングの文法が変わる、そこが面白い」

シューズ「ペンブリー 2.0」¥165,000(予定価格)/チャーチ(チャーチ クライアントサービス)

TAKAYUKI KONO 1985年生まれ。「ヨシオクボ(yoshiokubo)」を手がける久保嘉男のもとで企画・生産アシスタントを務めた後、アンデコレイテッドデザイナーに就任。素材開発から着用検証まで一貫して手がけるものづくりで注目される。

「チャーチのスタッズは、長年の憧れでした」
長谷川裕也 靴磨き職人/Brift H

靴磨きという仕事を通じて、無数の革靴と向き合ってきた長谷川裕也さん。2017年にロンドンで開催された世界靴磨き大会で頂点に立った今も、その探求心は衰えない。チャーチの靴はすでに2足所有しているが、今回あらためてラインナップを目の前にして、即座に選んだのが「ペンブリー MET R2.0」だ。

「今回のラインナップの中で、スタッズが付いているのはこのモデルだけ。10年以上前にスタッズ付きのチャーチを初めて見たとき、一目惚れしました。パンクロックの美学があるじゃないですか。でも、それをチャーチが手がけることで、品のいいバランスに収まっている。カジュアルに合わせても決してソフトになりすぎない、そのギャップが好きなんです」。スタッズが放つ強さと、深い陰影が宿るブックバインダーフュメという革が持つ表情の深さ——相反するものが一足の中に凝縮されている。靴磨き職人の審美眼が選んだのも、当然の帰結だ。

シューズ「ペンブリー MET R2.0」¥176,000(予定価格)/チャーチ(チャーチ クライアントサービス)

デニムを合わせたスタイリングについても、その分析は鋭い。「ドレスシューズとデニム、異なるテイストのものを組み合わせるからこそ、互いが引き立て合うんですよ。スタッズが主役でも、足元全体を強くしすぎないのが大人の着こなしだと思います」。職人としてのキャリアを重ねた目線が、一足の靴から着こなしの本質を見抜く。

“もう一足”として選んだ「コンサル L73 2.0」は、ストレートチップが持つ端正さとスエードのリラックス感を合わせ持つ一足。「黒スエードは柔らかな雰囲気で、デニムにもスラックスにも馴染む。スエードのケアは毎日のブラッシングだけで十分だから、実は表革より付き合いやすい素材でもあるんです」

シューズ「コンサル L73 2.0」¥181,500(予定価格)/チャーチ(チャーチ クライアントサービス)

YUYA HASEGAWA 1984年生まれ。2008年に東京・南青山に靴磨き専門店Brift Hをオープン。2017年、ロンドンで開催された世界靴磨き大会で優勝。現在は同店代表として経営・イベント・海外展開に注力する。

「革靴は日常。だからこそ、品格のある一足を」
藤村雅史 アートディレクター

UOMOをはじめ、数々の雑誌のアートディレクションを手がける藤村雅史さんは、ページを構成するグラフィックの目だけでなく、自身の着こなしにも揺るぎない美意識を持つ。スタイルの軸はシンプルだ。黒を基調にグレーを差し色として取り入れ、足元は日常使いに革靴を選ぶ。

「革靴は普段から特別なシーンに限らず日常的に履いています。ローファーも好きですが、モンクストラップは一文字のストラップがあることで表情が出る。きちんと感とカジュアルの間をうまく取り持ってくれる形なんです」

今回着用したのは「ピカデリー L73 2.0」のブラック。モンクストラップのベルトが、シンプルな黒の中に品のよい個性を加える。「デニムと合わせるとき、紐靴よりモンクは入りやすいんですよ。形のシャープさがありながら、脱ぎ履きの気軽さもある。チャーチがこの形を作ると、英国トラディショナルの端正さが出る。今日試着してみても、アッパーの当たりがほとんどなくてすぐに足に馴染んだ。柔らかく軽い。革靴というとどこか硬くて重いイメージを持たれがちだけど、そういう先入観を覆してくれる一足です」

シューズ「ピカデリー L73 2.0」¥203,500(予定価格)/チャーチ(チャーチ クライアントサービス)

色のロジックも明確だ。「合わせる服は、黒と調和するくらい落ち着いたトーンのものに絞ること。今日のようにグレー系の装いは、黒の延長として自然に加えられる。デニムならリジッドで濃色のものを選ぶのもいいですね。少し遊び心を入れるのが大人の着こなしだと思いますよ」

スエードも試してみたいという藤村さんが“もう一足”に選んだのは、ペンブリー 2.0のエボニー。「ブラウンのリラックス感は欲しいけれど、黒のトーンから外れたくない。黒に近いエボニーという茶系のスエードなら、その両方を満たしてくれる選択です」

シューズ「ペンブリー 2.0」¥165,000(予定価格)/チャーチ(チャーチ クライアントサービス)

MASASHI FUJIMURA 1962年神奈川県生まれ。1996年より藤村雅史デザイン事務所代表を務める。「UOMO」ではアートディレクションを手がけるだけでなく、スナップなどで誌面にもたびたび登場。

チャーチ 伊勢丹新宿店
ポップアップ

2026年3月11日(水)~24日(火)、伊勢丹新宿店 メンズ館にて期間限定ポップアップを開催。今回掲載したシューズを含むポップアップ先行発売商品を展開するほか、アーカイヴコレクションの展示、英国から来日したチャーチの職人による靴制作工程のデモンストレーションも実施。職人の手仕事を間近で見ながら、チャーチが150年以上守り続けてきたクラフツマンシップに触れることができる。

■期間:2026年3月11日(水)~3月24日(火)
■会場:伊勢丹新宿店 メンズ館1F
■内容:ポップアップ先行発売商品展開、アーカイヴコレクション展示、靴制作工程デモンストレーション(ハンドソーイング[手縫い]、カッティング、フィンガーポリッシュなどの実演)