数年前、オーストラリアのメルボルン郊外へロケに行った。撮影場所から中庭を挟んですぐ横が雰囲気のいいカフェになっていて、日曜日だったために、そこを目指して訪れる30代の夫婦や家族連れがたくさんいた。ファーマーズマーケットもやっていて、平和で気持ちいい空間だった。でも、そこは初めて来た街。どれくらい繁華街から離れていて、どんな街なのかはさっぱりわからないでいた。そんなところへ突然現れたカップルの白人男性の足元は、C.Eだった。ファッションを感じさせるんだか感じさせないんだか判断もつかない街の、いや、村ののどかな日曜日に、C.Eの、しかも靴を履いた30代後半の白人男性。ストリートなムードはほとんどないが、洗練されていて爽やかで落ち着いた印象。その瞬間に僕は、ここはとんでもないおしゃれタウンなのだと確信した。ファッションブランドのアイテムを買うときに、見るのはたいてい、服である。靴はどうしても、大手の靴専業ブランドが圧倒的。そんな中、ファッションブランドの靴を選ぶ。しかもコラボスニーカーでもなく、クラシックな革靴でさえなく、日本のストリートファッションを牽引してきた人物たちが携わるブランドC.E。それをストリート感あふれる着こなしにするのではなく、大人らしく無地の服に合わせていた。そんな30代後半の白人男性に、底知れぬ知性とリテラシーを僕は感じたのだった。ストリートウェアはただのロゴではない。ただのグラフィックデザインでもない。モチーフ、ロゴの配置の妙もあるが、作り手の生き様そのものが見えてしまう。だから作り手に魅力を感じるかどうかが大事だ。一方で、右も左もわからぬ街で名刺代わりになるのは自分のルック。大人であれば、どのブランドの何を選んで、どう着ているかでその人のたどってきたファッションの変遷が想像される。おそらく彼はこれまでいろいろな靴を履いてきた歴史があって今、ここにいるのだ。見知らぬ男の歴史さえ想像してしまう。それがC.Eの魅力。
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