ロックフィッシュの氷なしハイボール

ハイボールとおいしいおつまみでお馴染みの銀座のバー、ロックフィッシュ。店主の間口さんがこれまで作ってきたハイボールは100万杯近く。名物の氷なしハイボールは、冷凍庫でキンキンに冷やしたサントリーの角瓶に、同じくサントリーの「ザ・プレミアムソーダFROM YAMAZAKI」を合わせて、最後にレモンピールをひと絞りすれば完成。ただ、同じ銘柄のウイスキーと炭酸を使ったとしても、間口さんのように作ることは絶対にできない。間口さんはウイスキーと炭酸の注ぎ方、グラスの中での泡の立ち方を見れば、飲まなくてもその一杯がおいしいか、否か、わかってしまうという。「お店とは違う環境で作るときが、いちばん技術が試されます。イベントなどで外に出向くときは武者修行の気持ちで、その場でできる限りを尽くして味をまとめていく。その瞬間が楽しい。やっぱり現場が好きなんです」。

氷なしハイボール(ダブル)¥1,650


文/関口一就(ロックフィッシュ店主)

ハイボールを知って37年、がむしゃらになって作り続けて26年が経ちました。何も考えず、毎日毎日夢中になって作っています。自分でもよく飽きないなあと感心しています。よく聞かれます。どうすれば美味しく作れますか? どれだけ冷やせば良いですか?と。答えはあるようで、ございません。

イベントで外へ出向くと、こちらの意思が通じず、すべて常温の状態から始まることもありました。そんな環境で「美味しく作ろう」と思った瞬間、きっと美味しく作ることはできないのだと思っています。誰かのために、という思い込みでも構いません。無心になることが大事ではないかと。その昔、カウンターの中に一枚の紙を貼っていました。「この一杯が幸せのきっかけになりますように」と。今は貼っていませんが、心の中にはずっと置いています。

前に出たいと思うと、仕事が手につかず、上の空になります。20代の頃は、まさにそうでした。一歩下がったところに立ったとき、視界が変わりました。そのときから、空回りしていた自分から抜け出せた気がしています。今やっている仕事より、気持ちを前に出さない。ただ、それだけを守っています。

その積み重ねが、一杯のハイボールになると思っています。