デザイナーの柏崎亮さんが2010年に立ち上げた、エンダースキーマ。長谷川曰く、「柏崎くんはレザーアイテムをどうやったらクリエイションに昇華できるかを常に考えている。だから面白いアイデアが出てくるし、世界中から注目されている。ブランドを立ち上げた初期からずっと見ているけど本当にすごいと思う」。こちらはヴィブラム社が開発した「VIBRAM COMPONENT」というソールを採用した新作シューズ。アッパーとソールはストレッチコードで縫いつけられており、中底は凹凸で固定されているのが最大の特徴。そのため、アッパーのレザーをラストに合わせて固定する「吊り込み」という技術や接着剤を使用せずに、組み立てることが可能になっている。
レザーシューズ「hammock」¥39,600/エンダースキーマ(スキマ 恵比寿)
文/柏崎 亮(Hender Schemeデザイナー)
昨今、後継者不在による職人や工房の廃業が止まらない。作り手が途絶えれば、僕たちは存在価値を失う。
だからこそ、作ることを段階的にさらに内製化していくこと、デザインの力で生産の持続性を再定義すること。この二点の試みが、僕たちには不可欠である。その結実がこの「hammock」というシューズだ。靴づくりの最大の難所は、職人技を要する「ラスティング(吊り込み)」だろう。僕はその技術に敬意を持ちつつも、デザイナーとしてそこを「軽やかに、あえて無機質にジャンプしたい」と企み、ラスティングをせずにアッパーをソールに収める方法を模索してきた。
転機は、Vibram創業者のひ孫のMatteoが見せてくれたソールだった。驚いたのは、僕たちが「ラスティングせずにアッパーをどうソールに収めるか」を考えていたのに対し、彼らは全く逆方向から「ソールをどうアッパーと接続させるか」という視点で研究していたことだ。東京とミラノ。アッパーとソール。上下逆方向から同じ問いを立てていた仲間がいた事がとても嬉しかった。
すぐにMatteoからソールを借りて、Vibramが想定していない方法でアッセンブルできる構造を模索した。そうして生まれた「hammock」の最大の特徴は、手編みのコードが生み出す「可変性」にある。ストレッチと非ストレッチのコードを使い分け、柔軟なクッション性と歩行の安定感を両立。接着剤を一切使用しないため、ソールの交換も容易だ。一見、無機質な見た目だが、その成り立ちはとても温かい。
工業的な無機質さと有機的な手仕事のスキマにある、いわゆる手仕事っぽくない「手仕事」。この塩梅が、Hender Schemeが考えるNEW CRAFTなのだと思う。