GUCCIのタキシード

「憧れの映画祭を一緒に過ごした、
人生最高の一着です」

伊勢谷友介さん/俳優・映画監督・リバースプロジェクト代表
 俳優、映画監督、実業家といくつもの顔をもつ伊勢谷さん。20代前半から積み上げてきたそのキャリアの中で、自身が人として、また俳優として成長を感じる場面で着ていたのが、グッチのタキシードだという。
「僕が25歳の頃、是枝裕和監督の映画『DISTANCE』でカンヌ国際映画祭に参加した際に、初めて自分でグッチのスーツを購入していったんです。その後、年を重ねる中で、グッチのイメージに僕がマッチするようになってきたのか、お仕事をいただけることになり、今日着ているこのタキシードをオーダーメイドで作っていただきました。最初に訪れたカンヌから7年たち、映画『ブラインドネス』で再び映画祭に呼んでいただいた際、着用しました。俳優の僕にとって、カンヌ国際映画祭は憧れの舞台。そんな大切な時間をともに過ごした自分だけの一着は、人生の宝物です」
 映画祭ではドレスシャツにボウタイで着こなしたタキシードだが、この日は自身が手がけるリバースプロジェクトのオーガニックコットンの白Tで、さらりとクリーンにまとめた。
「大人になるとシンプルに着たいし、力を抜いているようにも見られたくないですよね。本来タキシードは日常着として使わないけど、自分に合っているオーダーメイドだからこそ、エレガントな雰囲気をキープしながらカジュアルダウンして着られると思うんです。タキシードにTシャツというバランスは面白いですし、こうやって着ている人はあまりいません。43歳の今だからできる格好。まさに大人の装いだと思います」


CORDINGSのブレザー

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「その場に対して尊敬の念を表することの
大切さを理解した出来事でした」

栗野宏文さん/UNITED ARROWS クリエイティブディレクション担当 上級顧問
「1977年にこの業界に入り、初めての海外出張に出たのが’85年のこと。毎年、ロンドン、フィレンツェ、ミラノ、パリとバイイングで回り、自分なりにヨーロッパでの過ごし方を会得してきたと思った’88年に、妻と同じコースを回ることにしたんです。プライベートの旅行だからと思いそのときはジャケットを持っていかなかったのですが、当時イギリスで話題を集めていたレストランを訪れた際、あまり心地よいとは言えない対応をされてしまった。不愉快だと思いましたが、すぐに『ああそうか』と理解しました。イギリスは基本的に階級社会。ジャケットを着用していない僕に対するその対応は当然のことだった。僕は洋服のプロとしていろいろなことを理解しているつもりでしたが、実際にそれを体感したのが初めてだったんです。もうこんな思いはしたくないと、翌日買ったのがこのコーディングスのジャケットです。
 尊敬の念をもってその場に接すること。知識としてはあったものの、当時の僕はきちんと理解をしていなかった。服がもつ意味や力、社会性を痛感した出来事でした」


日本国有鉄道のナッパ服

「利便性を突き詰めたシンプルな
デザインが着る人に個性を与えてくれる」

永井ミキジさん/アートディレクター
「趣味が高じて、今や古物収集が自分のライフワークに。古い時代の物を取り扱う中で、モノとしての機能性を見ていくうちに、作業着は無駄を省き利便性に特化した服だと魅力を感じるようになったんです。例えば、この国鉄時代の作業着も懐中時計が入るポケットが、右胸の下の取り出しやすい位置についていたり、仕事の役割によってボタンの色や形といったディテールが変わっていたり、シンプルだけど理にかなっている。知識を得ることで、コレクターとして、デザイナーとして物に対する着眼点が変わり、古物や古着も自分の個性として取り入れられるようになりました。それによって着る服の選択肢も増えますし、自分だけのスタイルをつくるという大人の嗜みを楽しむことができると思うんです」


GIORGIO ARMANIのダブルブレステッドスーツ

「一段階上のテーラードを
初めて体感させてくれました」

長谷川裕也さん/靴磨き職人
「紆余曲折ありました。昔はいわゆる裏原系からヴィヴィアン・ウエストウッドのようなパンクまでさまざまに着倒し、就職と同時に買ったファーストスーツはなんと明るい水色(笑)。自分なりのこだわりの結果、一見、変わった服も多かった。対して、これは初めての正統派かつ高価な買い物。正直、高いな…と思いながら恐る恐る着てみると、カッティングも素材の柔らかさも匠の技。タキシードに近いドレッシーさがあり、映画『007』のジェームズ・ボンドのようにブラックタイでパーティスタイルもいけそうで…思い切って購入しましたね。以来、よいものを求めるようになり、靴はジョン ロブの一足にしたりと日常的にビスポークを着るように。今、こうして靴を磨きながら、しゃれたお客様方と話が弾むのも、このスーツがきっかけをくれたからかもしれません」


Paul Harndenのウールジャケット

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「手作業の跡と洗練された佇まいは
まるで一つの作品」

江藤公昭さん/PAPIER LABO. オーナー
「洋服にもモノとしての強度があることを教わった一着です。パピエラボの立ち上げ前、ランドスケーププロダクツに勤めていた25歳の頃、ある程度の経験を積み、家具や布、器…とモノへの審美眼に少しばかり自信がもてるようになった一方で、洋服に関しては実用面にしか目がいっていなかった。けれどこのジャケットを手に取って考えが覆りました。19世紀後半のドブクロス織機を使って織られている生地の独特な表情、手作業から生まれる微妙なズレの心地よさ…作品を買うような気持ちで即決。洋服を見る目に新たな視点を与えられましたね」


Photos:Arata Suzuki[go relax E more] Shintaro Yoshimatsu Takahiro Idenoshita Teppei Hoshida Toru Yuasa Mitsuo Kijima[Cutout]
Hair&Make-up:ShinYa[Primal](Mr.Iseya) 
Stylist:Atsuo Izumi[Cutout] 
Text:Jun Namekata[The VOICE] Hisamoto Chikaraishi Takako Nagai

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