国連のアントニオ・グテーレス事務総長が「地球沸騰化の時代に入った」と警鐘を鳴らした7月の終わり、UOMOブランド統括の山崎&副編集長薬師神は「パタゴニア」2023年秋冬展示会場にいた。

私たちは、
故郷である地球を救うために
ビジネスを営む。

山崎:今日もめちゃくちゃ暑いね。


薬師神:ですね。


山崎:こんなに暑いとさすがに「待ったなし!」感が出てきて、イヴォン・シュイナードの言葉が染みる…。


パタゴニアの展示会は、ただ新製品のお披露目をするだけではない。毎回、環境・社会問題を掲げて、自分たちのアティテュードを示す場でもある。今回もまず入口に「地球を救うためのビジネス」という強いメッセージが。


会場に入ると今季の取り組みを示す大きなグラフィックボードが、目に飛び込んできた。

パタゴニア展示会_2023年秋冬_グラフィックボード

「人のちから」
「次は回復力」
「次はシンプリシティ」

パタゴニア マーケティング部の小林優子さんが、わかりやすく解説してくれる。


小林:私たちは地球から自然の遊び場を借りて、アウトドアのアクティビティを楽しんでいるんですよね。


山崎:はい。


パタゴニア展示会_2023年秋冬_パタゴニア マーケティング部の小林優子さん

小林:アウトドアアクティビティを愛する人は、自然との繋がりを感じています。だからこそ次は、いろいろなコミュニティの「人のちから」で、ともに行動をするのです。地球は驚くべき「回復力」を備えているので、力を合わせれば地球を救うことができるし、時代を超えて長く使える最小限のもので「シンプリシティ」を大切にすれば、過剰な消費を減らすこともできます。


薬師神:微力ながら頑張ります!


環境への意識を高めたところで、さっそく新作が並ぶゾーンへ。


Natural Icons –50th Anniversary
天然素材回帰を打ち出す50周年記念コレクション

パタゴニア展示会_2023年秋冬_ナチュラル・アイコン

小林:パタゴニアは2023年に50周年を迎えましたが、「ナチュラル・アイコン」は、これから50年先の持続可能な未来に思いを馳せたコレクションです。


山崎:「ナチュラル・アイコン」コレクションというだけあって、名品が並んでいますね。今までのものと、どう違うんですか?


小林:「ナチュラル・アイコン」は、自然界とのつながりを思い出させてくれる天然素材のコットンやウールなどからつくられています。化繊に代わる素材で、環境負荷が少なく、長く着続けることができる素材を考え、50周年を迎えて天然素材のすばらしさを、改めて発信していこうと。


山崎:ということは、このフリースは100%ウールですか?


小林:フリースに関しては100%天然素材というわけではありません。「ナチュラル・ブレンド」という形でリサイクル・ウールとリサイクル・コットンなどの天然素材とリサイクル・ポリエステルなどの化繊をブレンドしています。


山崎:なるほど、ハイブリッドですね。


小林:それから「ナチュラル・アイコン」は「ジェンダー・インクルーシブ・スタイル」もポイントで、すべてユニセックスの展開になっています。


具体的な製品を見て行こう。まず小林さんが紹介してくれたのは、ワックスド・コットン・ジャケット。


パタゴニア展示会_2023年秋冬_パラフィンを使用しない植物由来の天然ワックス

小林:現在流通しているワックスド・コットンには、ほぼ石油由来のパラフィンが使われています。今回パタゴニアは、ハレー・スティーブンソン社の食品産業の廃棄オイルを利用した、植物由来でパラフィンを使わないエバーワックス・オリーブで加工することで耐水性を実現しました。


薬師神:ハレー・スティーブンソン社? イギリスですか?


小林:はい。イギリス、スコットランドの老舗メーカーで、ワックスド・コットンがとても有名です。今回パタゴニアは協業して、パラフィンを使用しない植物由来の天然ワックスをつくってもらいました。


山崎:せっかくなんで、着ちゃいましょう。


01.ワックスド・コットン・ジャケット ¥55,000

パタゴニア展示会_2023年秋冬_ワックスド・コットン・ジャケット

コットン・イン・コンバージョン(オーガニック認証を目指す移行期間中のコットン)を100%使用して、ハレー・スティーブンソン社の植物由来のエバーワックス・オリーブ加工で保温性と耐水性を確保。もちろんフェアトレード・サーティファイド(製品をつくった人々が、労働に対してプレミアムな報酬を得る)縫製だ。


山崎:タグも70年代の創業の頃の、昔のロゴを使っているんですね。いいなー。


パタゴニアのヘヴィ・ユーザーでもある山崎だけに、すぐに気づいた様子。


薬師神:確かに。フォントも違うし、文字の背景が黒じゃない。僕も着てみていいですか?


創業当時のタグは文字の背景が白いため、マニアの間では通称「白タグ」と呼ばれている。


パタゴニア展示会_2023年秋冬_ワックスド・コットン・ジャケット02

小林:ワックスド・コットン・ジャケットはこのコバルトブルーと、ダークトーンのピッチブルー、ベイジングリーンの3色展開です。


薬師神:ブルーの色みが、かわいいですね。


山崎:このブルーはパタゴニアっぽいよね。マンゴーがあればよかったのに…。


小林:マンゴーはコットン・ダウン・ジャケットで展開していますよ。こちらもパタゴニアのアイコン的なハイロフト・ダウン・ジャケットを、コットン・イン・コンバージョン素材でアレンジしています。

パタゴニア展示会_2023年秋冬_ハイロフト・ダウン・ジャケット

山崎:裏地のカラーが昔のストーム・ジャケットみたいだ。


小林:裏地はコットン・イン・コンバージョン・フランネルです。表地もコットン・イン・コンバージョンで、こちらはピーチ加工をしてPFCフリーDWRの耐久性撥水コーティングをしています。



02.コットン・ダウン・ジャケット ¥49,450

パタゴニア展示会_2023年秋冬_コットン・ダウン・ジャケット02

コットン・ダウン・ジャケットには環境に配慮された、HeiQ® Eco Dry PFC フリーDWR加工(ペルフルオロ化学物質を含まない耐久撥水コーティング)が施されているのもポイント。中には600フィルパワーの100%リサイクル・ダウンが使用されている。


山崎:ボディの裏地はコットンだけど袖裏はポリエステル! すべりがよくて着やすい。


薬師神:マンゴーとブルーでは、裏地のブルー系の色みが違うんですね。


03.ナチュラル・ブレンド・ビブ ¥40,700

パタゴニア展示会_2023年秋冬_ナチュラル・ブレンド・ビブ

山崎:このサスペンダーのパンツは何ですか?


小林:リサイクルのウールと化繊をブレンドした素材のビブスです。アーカイブをリメイクしました。


山崎:ヒップ部分にナイロンの補強パッチが付くんですね。今まで、あまり見たことがないデザイン。


小林:実はストラップ部分をラグビー・シャツのようなストライプにしているのも、50周年を象徴するディテールなんです。


山崎:それはパタゴニアが初期に丈夫なラグビー・シャツを仕入れて、登山ウエアとしてヒットさせた歴史を暗喩しているのでは?


小林:ご存じでしたか!


薬師神:鋭い…。


小林:そういうわけで、このコレクションはラグビー・セーターもラインナップしています。



04.リサイクル・ウールブレンド・ラグビーセーター ¥28,600

パタゴニア展示会_2023年秋冬_リサイクル・ウールブレンド・ラグビーセーター

薬師神:暑いけど試着します! これもいいですね! 着やすいし、パタゴニアの旧ロゴがきいています。


こちらもリサイクル・ウールとリサイクル・ナイロンをミックスした、バーズアイジャカードニット。台襟なしで、軽く着られるニットポロ風のデザインが秀逸だ。


山崎:着てみたいが、この暑さでサイズMのニットは厳しい。


薬師神:僕(身長165m)はMでOKだけど、山崎(身長178cm)はLだね。

パタゴニア展示会_2023年秋冬_ナチュラル・アイコン_織りネームの裏にアルマジロの刺しゅう柄

小林:「ナチュラル・アイコン」シリーズはタグも凝っていて、織りネームの裏にアルマジロの刺しゅう柄が入っているんですよ。


50YEARの記念グラフィックとして、パタゴニア地方に生息するアルマジロを擬人化したキャラクター。グラフィックTなどにも登場する。


山崎:バックカントリーしているようなアルマジロのイラストは、ユーモアがありますね。ときに、このラグビー・セーターはブルー×黒配色も、あったりします?


小林:ブルー×黒配色ではないんですが、ブルーベースの胸部分にブラック、マンゴーのラインが入ったバージョンはあります。残念ながら、トルソーが着てしまっていますね…。フリースのレトロX・カーディガンでしたら、ピッチブルーがありますよ。


パタゴニア展示会_2023年秋冬_ピッチブルー

山崎:サンダー柄? とにかく暑いんですが、着てみましょう。


05.ナチュラル・ブレンド・レトロ・カーディガン ¥49,500

パタゴニア展示会_2023年秋冬_ナチュラル・ブレンド・レトロ・カーディガン

薬師神:これもウールが入っているんですね。僕はSサイズをきましたが、Sだとちょっと小さい感じです。やっぱりMでよいかと。


小林:リサイクル率60%のポリエステルとリサイクル・ウールのジャカード・シェルパ・フリースを使っています。


山崎:僕はMですが、少し小さいかな。ジッパーの内側にウインドフラップが付いているから防風性はOKだね。



06.ナチュラル・ブレンド・スナップT・プルオーバー ¥40,700

パタゴニア展示会_2023年秋冬_ナチュラル・ブレンド・スナップT・プルオーバー

山崎:スナップTはリサイクル・ウールのほかにリサイクル・コットンもブレンドしているんだ。暑すぎるから、試着は任せる。

パタゴニア展示会_2023年秋冬_ナチュラル・ブレンド・スナップT・プルオーバー02

薬師神:天然素材が入ると肌ざわりがやっぱりやさしい気がします。


山崎:このシリーズはどれもローテク、ローファイでいいね。


山崎も薬師神も大いに感動した様子で、「ラグビー・セーターは絶対欲しい!」と買う気も満々。「ナチュラル・アイコン」シリーズは8月24日(木)から店頭とオンラインストアで発売される。展示会でも大好評らしく、早くも完売予報が。発売日をお見逃しなく!


Radically Recycled Outerwear Collection
リサイクルを徹底した最新コレクション

山崎:そういえば、気になっていたんですが、この黒いロゴタグのジャケットはなんですか?


パタゴニア展示会_2023年秋冬_ラディカリー・リサイクルド・アウターウエア

小林:こちらは「ラディカリー・リサイクルド・アウターウエア」コレクションのアイテムです。GORE-TEXとの協業で開発した、初のPFCフリーのゴアテックス・メンブレンを採用しているのが特長で、こちらのスタイルだけロゴもモノトーンになっているんです。


07.メンズ・ストームシャドー・パーカ ¥143,000

パタゴニア展示会_2023年秋冬_メンズ・ストームシャドー・パーカ

山崎:せっかくなんで、着ちゃいましょう。モノトーンロゴ、新鮮ですね。


暑さとサイズMの壁を越えて、果敢に試着。


薬師神:そういえば、エントランスにはpatagonia×GORE-TEXのメッセージボードもありましたね。


小林:アウトドア業界はもとより、世界的にフッ素化合物排除の動きが加速しています。フッ素化合物は自然界から永遠に消えない物質とされていて、人体や環境に有害性があります。ヨーロッパでは規制法案なども成立して、やがて使えなくなる素材なのですが、アウトドアで使用するシェルの多くには、耐久性撥水加工として使われているんです。


薬師神:それは聞き捨てなりませんね。


小林:そこでパタゴニアはGORE-TEXと協業で、ePEメンブレンを開発してきました。フィールドテストを何度も繰り返して、エクストリームな使用にも耐えると判断され、2023年秋冬シーズンに製品化にこぎつけました。


山崎:ところでこのストームシャドー・ジャケットの価格は?


小林:14万3千円です。


山崎:14万3千円! もしやパタゴニアのダウンジャケットでは史上最高値かも?


山崎もさすがに驚いた様子だが、今後、GORE-TEX製品がPFCフリーメンブレンに切り替わっていくこと、そして丈夫で修理も可能で、一生着られると考えれば、決して高くはないかもしれない。


パフォーマンスやエキップメントカテゴリーのトピックは後編にて!



パタゴニア日本支社 カスタマーサービス TEL:0800-8887-447
https://www.patagonia.jp/

Photos:Kanta Matsubayashi
Composition & Text:Hisami Kotakemori