2022.09.13

祐真朋樹の密かな買い物 |Vol.97 コラボレーションアイテム

伝統を守りながら新しいことにチャレンジする。何事も長く続けるためには必要なセオリーだ。どれだけ栄華を極めても、国も企業も物も人も常に革新的でなければ衰退の一途をたどる。“コラボレーション”という言葉が浸透して久しい。“コラボレーション”は、あらゆる業界において現状から新たな一歩を踏み出す手段となる。で、僕も、3つのコラボレーションに挑みました。

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 先日、俳人の堀本裕樹さんにお誘いいただいて、「NHK俳句」に出演した。番組の冒頭、司会の武井壮さんに「ファッションと俳句には共通点があるのではないでしょうか」と振られた僕は、とっさに「ハイ!」と答えた。なんとなく、季語のような存在がスタイリングにもあるような気がしたのだ。現に、ファッションに該当する季語はいくつかある。「半ズボン」や「夏シャツ」「夏帽子」など、今ではあまり使われない言葉も季語である。もう日常にはない言葉だが、そういったワードが句に哀愁や切なさを与え、聞く者の琴線に触れたりする。スタイリングでも、時々季節感を出すために、クロゼットから懐かしい服を引っ張り出して組み合わせたり、外国で買ったステッキやアイウェアをモデル撮影に使ったりする。ファッション表現においてはそれらは遊びだが、四季折々に生きるというのは、衣・食・住、すべてにおいて大切なのではないかと思う。



 俳人に招かれたスタイリストが、俳句を考える。この異業種への招待は、昨今ファッション業界では当たり前なコラボレーションと似ているかも。専門分野の人たちだけでは考えつかないアイデアや、それまでの常識にがんじがらめになって進行できなかったような計画が、コラボレーションによって実現することもある。招いたほうも招かれたほうも、専門分野内のルールに縛られない自由な発想と柔軟な行動力を喚起して、新しい何かが出来上がる。最近、僕ももの作りに参加する機会が増えた。ありがたいことである。この業界に入って36年。ずっと服に携わってきたが、いざ「作る」となると知らないことだらけ。日々勉強であり、それもまた楽しい。例えば、「綿」一つとっても、世界中に産地があり、それぞれに特徴がある。それをどう生かして何を作ればいいのか? ウールの中には、羊の生育環境にまで徹底的にこだわったブランドのものもある。それは普通のウールとどう違うのか。それで作ったアイテムはどんな着心地なのか。今までなら取材先で話を聞いて「ほ〜」と思っていただけの生産背景が、商品と結びつく重要な要素となってくる。がぜん、面白い。僕は今、実にいい経験をしている。



 というわけで、今回は僕が参加したコラボアイテムを3点紹介。バケットハットは僕がクリエイティブディレクターを務めているランバンコレクション メンズと“ツール・ド・フランス”とのコラボレーション。“ツール・ド・フランス”といえば、フランスの国を挙げた大イベント。毎年夏に行われているが、一度、パリ滞在中にゴールの熱狂ぶりを体験したことがある。リボリ通りのホテルに泊まっていたのだが、抜けるような青空の下、ライダーたちが色鮮やかなユニフォームで自転車をこぐ躍動感には目を見張った。あのときの素敵なパリを、日本の夏に紹介したかった。ジョン スメドレーとコラボしたセットアップは、僕が集英社のECサイトで企画をしているMHのもの。ロロ・ピアーナの艶こしがきいた素材は、僕が望む“カジュアルに着られるドレスウェア”を完成させた。Uチップはパラブーツのシャンボード。ランバンコレクション メンズとコラボし、内側をグレーのレザーに、アッパーをガラスコーティングにしています。いずれも会心の逸品です!

(左)“ツール・ド・フランス”の公認ロゴを使ったバケットハット。イラストで僕がかぶっているのが、レインボー柄。基本、絵の位置は左後方ですが、前にしたければ前向きにもかぶれます。(中)ジョン スメドレーとMHがコラボしたセットアップ。ロロ・ピアーナならでは!の、絶妙な光沢感にシビれます。(右)パラブーツの人気モデル、シャンボードをキラキラな表面にしていただきました。ミスターシューシャインでヨロシク。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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