2022.03.29

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.93ボウブラウス|2022年4月号

昨年の暮れ、ランバンコレクション メンズの期間限定店を大丸心斎橋店にオープンした。開店日の朝、トルソーに服を着せていると隣にいたベテランスタッフがぽつりと言った。「ボウブラウスは残り一点しかありませんね。やっぱり時代はジェンダーレスなんですかね」。確かに人気がある。でもこれを作った本当の理由は、「まず僕が着たかった」からなんです。

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.93ボウの画像_1

 ボウブラウスをジェンダーレスなアイテムと考えるのは今の流れなのであろう。だが、テレビの男性ニュースキャスターやコメンテーターがボウブラウスを着ているのはまだ見たことがない。そのうち誰かが着だすかもしれない。今回、僕がランバンコレクション メンズでボウブラウスを作ったいちばんの理由は、「自分が着たかったから」だ。スーツに合わせればしゃれたドレスダウンが楽しめるし、撮影ではフレアパンツに合わせてグラムロックスタイルみたいにしたら面白いな、とか、そういうことを考えていた。



 ランバンコレクション メンズの服作りに参加して、昨年10月末にファーストコレクションを発表。2月10日からは、再びGINZA SIXに1年間のポップアップストアをオープンした。そして、ボウブラウスは、デビューシーズンに続き今季も作り続けている。柄は、最初のシーズンはポルカドット柄と無地。今季の柄は小花とハウンドトゥースの2種類だ。無地もあって、ボウは小さめ。ファーストシーズンに続き、今季も黒と紺の2色展開だ。ボウは取り外しが可能で、外して着ればドレスシャツな印象。柄のほうは、ボウは大きめで取り外しはできない。男がボウの外せないブラウスを買うには、まだ多少の思い切りが必要かもしれませんね。僕にはわからんが。



 昨年末は、博多阪急でも期間限定のショップを展開させていただいたのだが、初日、店にポルカドットのボウブラウスを買いにいらしたお客様3名を僕が接客した。結局サイズの問題もあり、2名がお買い上げ。実際に2人分で在庫切れだったため、取り合いにならずにすんでよかった。冒頭でベテランスタッフがつぶやいた流れはある。そしてそれは、作り手としてはうれしい限りだ。まだ日本ではテレビに出るような“立派な大人”はボウブラウスを着ないけれど、市井では確かにそういう流れがある。そのことがとてもうれしい。



 長く続くコロナ禍は、オンとオフを着るもので分けるという愉しみにも影響を与えている。また、リモートワークの広がりとともに、家で着る服も変化している。男が着るボウブラウスは果たしてオンなのだろうか。それともオフなのだろうか。それは実際に着てみないとわからない。自分にとってオンタイムの服なのかオフタイムの服なのか。答えは着てみて初めてわかる。近い将来、ゴールデンタイムのテレビに映る、ビシッとボウブラウスをきめた男性ニュースキャスターを見てみたい。それで何カ国語も話すインテリでユーモアも抜群…なんて最高じゃないですか。



 僕のボウブラウス好きは、そもそもはネクタイやスカーフへの興味から始まっている。首元に、風になびくフワッとしたものをまとう。そんな姿に惹かれるからだ。はだけたシャツの胸元からのぞく日焼けした肌がセクシーで好き、という人ももちろん大勢いるだろうが、僕は暑苦しいのは苦手。涼しげで爽やかで悠々しい雰囲気をまとう大人になれたら最高だと思っている。かなうことなら、怪傑ゾロよろしく、ボウブラウスを着て神馬に跨がり、世界中のあちこちを快走してみたいものである。時には困っている人を助けたりして。
 ちなみに馬は、都内では軽車両扱いになるらしいです。

(左)ハウンドトゥース柄のボウブラウス。一枚で着ても素敵です。ショーツと合わせるなら、ロングホーズに厚底めのUチップなどがおすすめ。(中)小花柄は、大胆にもオンブレウインドウペーンのジャケットとベストに合わせました。ドレス仕様ですが、これまたグルカショーツにロングホーズの合わせがおすすめです。(右)ボウが取り外しできる紺無地のブラウス。黒や紺のダークスーツと合わせるのはもちろん、デニムとも相性よしです。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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