2020.12.27

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.81 ランバン オン ブルーのケープ|2021年1月号掲載

1年前に始まったファッションショーの企画は、コロナの影響で何度も変更を余儀なくされた。終わりなきゴールを目指すには、忍耐力が必要。それを乗り越えて得た至福は何物にも代えがたい。そんなこととっくにわかっているつもりだった。だが、あらためてこの秋、そんな実感を嚙みしめた。コロナのせい? いや、コロナのおかげなのかも。まだまだ試練は続くが、この体験を糧にしたい。

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「コロナに負けるな」とばかりに、東京では感染予防対策に万全を期しながらの「生のファッションショー」が復活してきている。だが、アメリカ、インド、ヨーロッパ、南米におけるコロナ感染者の増え方を知ると、日本でも冬にパンデミックが起こるかも、と不安が募る。個人的には、感染予防に最大限努力する以外、手立てはない。

さて、ファッションショーは生で見るのがいちばんだが、この秋、僕は初めてリモートライブのショーの制作に参加した。高橋幸宏さんのプロデュースのもと、素材メーカーであるアルカンターラが、ランバン オン ブルーとランバン コレクションのメンズ&ウィメンズとコラボしたコレクションだ。場所の選定、モデル選び、スタイリング、時々服のデザイン、そしてランウェイの演出にも参加した。音楽とランウェイにおける映像が今回のコレクションの目玉で、それらは幸宏さんの完璧なオーガナイズで進行した。

そもそもこのプロジェクトは、2019年の11月にキックオフミーティングがあり、当初は3月に生のランウェイショーをやる予定だった。だが、コロナショックで5月、6月とリスケが続き、最終的には10月8日にリモート公開となった。スタートから考えると、実に約1年越し。長い業界人生でも、一つのショーにこれだけ時間をかけたのは初めてだ。僕は春頃から、この仕事を「時間がかかった」と考えるのはやめにして「時間をかけられる」プロジェクトだとポジティブに考えることにした。途中、もうこの企画は消えてなくなるかも、と思う瞬間もあった。でも、ふんだんにある時間の中で気持ちを前向きにすると、不思議とユニークなアイデアがどんどん浮かんできたりした。面白いものである。

今回着ているケープは、そのアルカンターラの素材を使ったランバン オン ブルーのもの。最初は女性に着せたくてデザインを考案したが、最終的には男性が着たほうが面白いと思い、フィナーレで男性モデル全員に着せた。ちなみに女性には同素材のバルマカーンコートを着せた。これはもともと男性に着せる予定だったもの。フィナーレでは、アルカンターラの生地とランバンのエレガントなシルエットを強く印象づけたいと思ったのだが、男女反対に着せることによって、結果、両方とも男女共有のアイテムになったと思う。そしてこのケープは、僕にとってもお気に入りのワードローブとなった。このファッションショーはYouTubeで見ることができるので、ぜひチェックしてほしい。本来はライブで見て迫力を感じてほしかったのだが、そのぶん映像でしか味わえない、音楽、グラフィック、そしてファッションの融合が楽しめます。

さて、お気に入りとなったケープは、インナーに白いタートルネックを合わせています。パンツは10年以上前に買ったプラダの雪山向けパンツ。短めの丈なので、首元と同じく足元にも明るい色をチラ見せ。靴はアデューのブーツ。しっかりと張ったコバが、ケープのシルエットによく合うと思う。帽子は3年前のグッチだが、ジョン・レノンのバッジや「す」のブローチを重ねづけしてイメージ一新。

そして私事ではございますが、事務所が24年ぶりに南青山から元代々木へ引っ越し。気分も新たに新生活がスタートしました!



(左)アデューのブーツは、下に広がったソールシルエットが好き。光沢感のある鏡面仕上げも素晴らしい。(中)アルカンターラの素材を使ったランバン オン ブルーのケープ。フードのついたカジュアルなデザインだ。着丈、ラインの広がりともにバランスよし。(右)グッチの帽子は3年前のもの。僕は大きいつばが好き。久しぶりにかぶったら、毎日かぶるように。「す」のピンバッジはビジュードエムで特注したもの。キラキラです。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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