映画界における意識の変化
2025年11月2日(日)、第38回東京国際映画祭にて、KERING(ケリング)が主催する公式プログラム「ウーマン・イン・モーション」トークがTOHOシネマズ 六本木ヒルズで開催された。この企画は2015年のカンヌ国際映画祭からスタート。映画界における女性の活動に光を当て、対話を通じて変化を促す取り組みだ。本年10周年を迎え、東京国際映画祭での開催は5回目となる。
今回は『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』の特別上映後にトークセッションを実施。登壇したのは俳優の高畑充希、俳優・アーティストの中島健人、キャスティング・ディレクターのデブラ・ゼイン、プロデューサーの福間美由紀。ファシリテーターは映画ジャーナリストの立田敦子が務めた。
幕開けを飾ったのは是枝監督のオープニングスピーチ。「新しい視点と対話を通して、自身の現場から変化を起こしていきたい」。その言葉に応えるように、拍手がやさしく会場を包み込んだ。
続いて登壇者が姿を見せる。高畑は「俳優として、そして一人の女性として、これから直面するであろう課題に向き合う機会になる」と語り、中島は「今まさに業界がアップデートしている時期。今日の対話を次の行動につなげたい」とコメント。福間は「海外の現場と比較し、日本でも環境が変わりつつあることを実感している」と述べた。
キャスティングという創造の最前線
今年のテーマは“キャスティングと女性”。来年の第98回アカデミー賞®で新設される“キャスティング賞”を受け、キャスティングの役割と表現の幅について議論が深まった。
デブラ・ゼインは『アメリカン・ビューティー』『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『オーシャンズ』シリーズなど数々の大作を手がけてきた人物。「キャスティングは世界中の俳優を知り、最適な一人を見つけ出す仕事。監督と意見がぶつかることもある」と裏側を明かし、会場を沸かせた。高畑は「役に選ばれることで見えてくる課題がある」と語り、ゼインに「役と俳優の適合をどう判断するのか」を質問。ゼインは「技能だけでなく、役と俳優の呼吸が合うかが重要」と回答。中島は「自分ならどんな役が向くか?」と冗談交じりに問いかけ、ゼインは「学生役も似合う」とユーモアたっぷりに返答。会場は和やかな空気に包まれた。
また、映画で描かれる女性像の変化について、各登壇者はそれぞれの考えを述べた。ゼインは「女性のリーダー像やヒーロー像が増えている。時代が反映されている」と語り、中島も「主体的に生きる女性を描く作品が増えた」と共感。一方で高畑は「当事者性にこだわりすぎず、多彩な視点で描く柔軟さも必要」と指摘し、ゼインも「上手い俳優が演じるべき役もある」と同意した。
福間は「働き方の変化が表現の幅を広げる」と語り、海外と日本の制作現場の違いを挙げながら、働きやすい環境づくりの重要性を強調した。
最後に登壇者たちは、現場で起きつつある変化と未来への期待を語った。高畑は「変化の只中にいると実感している。声を上げることで良い環境づくりに関わりたい」と話し、中島は「現場に小さな改革を積み重ねたい」と前を向いた。ゼインは「多くの気づきが得られた特別な時間」と振り返り、福間は「誰もが声を届けられる場であるべき」と締めくくった。観客からの温かな拍手とともに、イベントは幕を閉じた。
世界と日本の映画界が少しずつ歩み寄りながら、より自由で開かれた表現を模索している。ケリング「ウーマン・イン・モーション」トークは、その変化を後押しする場であり、今日の対話は未来へと続く一歩である。
トークセッション後のディナーには豪華セレブリティも来場
ケリング・グループ





















