2026.02.05
最終更新日:2026.02.05

『高木りゅうぞう作品集 ツイステッド』|24歳で生涯を終えた若き才能の一冊に、今浸る【歌人が推す 短いのに、引きずり込まれるマンガ|枡野浩一】

『高木りゅうぞう作品集 ツイステッド』

『高木りゅうぞう作品集 ツイステッド』の一コマ
Ⓒ復刊ドットコム

 本欄は「全3巻くらい以下なのに心をわしづかみにされる短い漫画」を紹介するという方針であり、けっして「高価格な漫画」ばかりを取り上げたいわけではないのですが、今作は本体価格2200円。まあまあ高い。本は、服にくらべたら安い状況が長年続いてきました。近々「電子書籍なら普通に買えるけど紙の本は贅沢品として買う」時代になるかもしれません。紙代も印刷代も昨今、高騰しているからです。

 とはいえ本書の値段には理由があります。著者、高木りゅうぞうは漫画家デビューしてまもない1993年に、バリ島で急逝しました。享年24歳。関係者のみに配布された遺作集を編み直し、「復刊ドットコム」によって初めて一般に発売された一冊がこれ。筆者は初めて目にする作品群でした。「商業雑誌に適応すべく洗練された、わかりやすい盛り上がりやオチ」のない作品群が、じつに珍しい味わいになっていると感じました。

 著者が夭逝しているという情報を知ってから読んだため、作中に描かれる「死」が、心に重くのしかかります。なにげない、大げさなことは何も起こらない日常を描いた作も、「そのような人生を著者は生きなかった」と考えてしまうと、別の意味をまとってしまうきらいはあるでしょうか。それでも著者に才能があるのは明らか。本欄で前々回紹介した、よしもとよしとも氏が表題作「ツイステッド」を「カバー」した短編を『青い車』(太田出版)に収録していることもあいまって、「なんという惜しい才能が失われてしまったのだ」と、愕然とせざるをえませんでした。

『高木りゅうぞう作品集 ツイステッド』の一コマ 2

 8の短編で構成されています。絵柄も内容も一作ずつ雰囲気が全然ちがいます。お嬢様の女子高生と、年配の男性運転士のふれあいを描いた「笠井萌子の運転手」など、どうしてこんな話を若者が描こうと考えたか怪訝に感じるくらい老成したトーンです。「酔っぱらいの夜空に」は、離婚して生き別れの息子がいる枡野を泣かせようとしているとしか思えないストーリーですが、なんとなく海外の作品かと思ってしまいそうな洒脱さがあります。

「プリオの気持ち」は壮大かつマヌケで笑えるSF。「不安なテーブル」は渋い大人の随筆を思わせる筆致。「昔のともだち」は一番好きな異色作ですが、芥川賞作家・長嶋有が原案を担当したと言われたら信じてしまいそう。

 なによりも「ツイステッド」が、よしもとよしとも版とはまったくちがう話だったのに驚きました。ぜひ読みくらべてみてください。

『高木りゅうぞう作品集 ツイステッド』

『高木りゅうぞう作品集 ツイステッド』
高木りゅうぞう/復刊ドットコム
1990年代、講談社「ちばてつや賞」準入選に輝きその将来を期待されるも24歳で逝去した作者の、惜しまれる才能が随所に詰まった一冊。

枡野浩一

歌人。『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである 枡野浩一全短歌集』(現在11刷)、漫画紹介本『漫画嫌い』(絶版)など、著書多数。タイタン所属。

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