マンガの中には心揺さぶられる名言がたくさんある。そんな名言の数々を、現在連載中の作品から劇画狼がピックアップ! 来世で使いたいと思ってしまう名セリフを紹介します。
『笑うネメシス』

『笑うネメシス』に見る完全なる自己救済
猿が初めて二本足で立ち上がったその日から、数百万年の間われわれ人類が燃やし続ける最も強く純粋な感情、それはムカつく上司への殺意と復讐心!
某ラーメンマンガの人も言っておりましたが、完膚なきまでの復讐ほど気分爽快でストレスの解消になり、自己の尊厳を回復させるものはない、「復讐は何も生まない」じゃないんですよ。
ということで! 令和最新の気分爽快な復讐方法が先日第1巻が発売された『笑うネメシス』にて展開されています!
広告代理店に勤務する新人・鈴木は先輩である小嶋に毎日パワハラを受けたうえに、自分が立てた企画を横取りされていたことに気づき殺意を抱く。
毎日のように完全犯罪について調べる鈴木だが、そこに現れたのがヤミノという謎の男。

ヤミノ曰く、たった一人で人間を殺害し、死体を運び埋めることは現実的ではない。ミンチにして処理するのも無理がある。そもそもネットで調べて出てくるような方法で警察をだまし通せるわけがない。この世に完璧な犯罪など存在しない。であるならば、重要なのは“捕まるかどうか”ではなく“悔いが残るかどうか”だ。借り物ではなく“貴方の復讐”をしましょうと。

その日から鈴木はヤミノを相手に綿密な復讐計画を練り始める。もっといい殺し方はないか。もっと残酷な方法はないか。もっと小嶋を後悔させられる方法はないか。計画を進める中で鈴木は「本当にしたかった仕事」に立ち返り、殺害を成功させる。
鈍器で後頭部を殴打し、バラバラにしてシュレッダーに詰め込み小嶋自身をボツ企画としてゴミにすることで意趣返しもバッチリ決まった。復讐のいいところは過程と結果両方に意味があるところ。古くからこの国では「新人に飲み会の幹事を任せて手配・調整能力やスケジュール管理に会計、コミュニケーション能力の適性を見るとともに、その成長を促す」という慣習があるが復讐は完全にその上位互換。業務能力を上げて上司を追い抜き溜飲を下げるより、復讐計画の進捗を管理して即座にぶっ殺すほうが多分早い。復讐最高!
と思ったらなんとヤミノが事件現場に刑事として登場。天才探偵を呼び出して推理バトルを特等席で鑑賞し始める。じゃあ今までここで書いたことはなんだったんだ。バラバラ殺人、ダメ! 復讐は気持ちいいが、それを娯楽として消費するのはもっと気持ちいいことだけがわかった!

『笑うネメシス』1巻
おぎぬまX(原作)、粂田晃宏(漫画)/双葉社
ギャグ漫画家おぎぬまXと『モンキーピーク』の粂田晃宏のタッグが描く、前代未聞の復讐ミステリー!
特殊出版レーベル・おおかみ書房代表。プロの漫画家が商業誌に掲載したが単行本化されなかった未収録作品の書籍化や書評、原画展企画、イベント司会など。