2025.09.27
最終更新日:2025.09.27

【山下美月インタビュー 後編】アイドルも俳優も向いてないと思うけど、生まれ変わっても就きたい仕事【映画『火喰鳥を、喰う』】

【山下美月インタビュー 後編】アイドルもの画像_1

10月3日公開の映画『火喰鳥を、喰う』で、ある秘密を抱えている繊細な女性、久喜夕里子を演じている山下美月さん。インタビュー後編では乃木坂46在籍時との「生活」や「気持ち」の変化についても聞いてみた。

インタビュー前編はこちら

仕事も頑張りつつ、趣味や勉強もしたいと思う年齢に

山下美月『火喰鳥を、喰う』

――『火喰鳥を、喰う』のなかで、「日々の暮らしを守りたい」という旨のセリフが出てきます。アイドルと女優を並行していた乃木坂46時代と比べて、いまのほうが落ち着いて生活できているな、という実感は山下さんにありますか?

山下 生活に関しては、年齢的な部分が大きいのかなと思います。アイドル時代は10代後半から20代前半で、これから20代後半になろうとする現在の私は、体力が落ちていることを実感していますし、考え方も変わりました。同年代のタレントや学校の同級生のなかには、結婚や子育てを経験している子が増えて。そんな状況は、5年前には想像できませんでした。「生活」を大切にする年齢になってきたのかな、と感じ始めています。仕事も頑張りつつ、趣味や勉強もしたいと思うようになりました。

働かないと自分と社会のつながりがなくなってしまう怖さがある

山下美月『火喰鳥を、喰う』

 ――最近始めた趣味や勉強はあるんですか?

山下 1、2年前は、仕事以外で運動することが考えられなかったんです。なんでお金を払って体を動かさなきゃいけないんだろう、と思って(笑)。

――ライブで体を動かしますからね。

山下 でも、グループを卒業してからピラティスに通うようになったんです。他にも、旅行することが増えて、英語を習い始めて。乃木坂46にいた頃より、自分の時間を上手く使えるようになったと思います。

――ただ、現在も忙しそうですよね。在籍中に撮っていた作品もあると思いますが、グループ卒業から1年半で、ドラマや映画が7本公開されて。乃木坂46時代から、「めちゃくちゃ仕事したい人なんだろうな」という印象は変わりません。

山下 仕事がなければ生きていけない、と思ってます(笑)。金銭面ではなく、精神面で。働いているからこそ生きている意味が見出せるし、働かないと自分と社会のつながりがなくなってしまう怖さがあるんです。この世界に自分が存在していることを証明できるものって、私にとっては仕事なんです。

本来は勝負事に挑みたくないタイプ

山下美月『火喰鳥を、喰う』

――いまは女優の仕事が、山下さんの存在理由なんでしょうか?

山下 そうですね。ただ、お芝居だけにこだわっているわけじゃないんです。美味しいものを食べに行って、その写真をファンの方向けのコンテンツやインスタグラムに送って、「自分も行ってみたい」と思ってもらえることも私にとっては仕事のひとつ。これからも発信していけたらいいなと思ってます。

――朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK)が放送されていた時期にインタビューした際、山下さんは「いつかグループを卒業したら、俳優としては元乃木坂46の先輩方とはライバルになるけど、負けたくないと思ってます」と話していました。

山下 すごいこと言っていましたね(笑)。

――我ながら(笑)。

山下 ただ、あの頃の私の気持ちがわからなくもないというか(笑)。本来は勝負事に挑みたくないタイプなのですが、どうしても比べられてしまうじゃないですか。そうなると「なめられたくない」という気持ちにはなりました。いまは「自分は自分」という気持ちが強くて、「誰より上にいきたい」みたいなことはないんです。応援してくれるみなさんには、私の頑張ってる姿を見てほしいと思っています。

「この子、何をやってるんだ⁉」と思われたい

山下美月『火喰鳥を、喰う』

――グループ在籍中、「アイドルに向いてない」と話していたこともありますが、女優には向いてると思いますか?

山下 アイドルにも俳優にも向いてないんです。そもそも表舞台に立つ仕事が自分の天職、なんて思ったことはありません。ただ、「生まれ変わってもこの仕事に就くことができたらいいな」と思うくらい、アイドルも俳優も好きなんです。向いてないのに楽しい仕事なんて、周りの方に恵まれていないとできないと思うので、環境に感謝しています。

――今年に入って、映画『山田くんとLv999の恋をする』やドラマ『御曹司に恋はムズすぎる』(フジテレビ系)とコメディ要素のある恋愛作品が続きましたが、『火喰鳥を、喰う』はシリアスなミステリー&ホラーです。女優として「こういうイメージをつけたい」と考えることはありますか?

山下 素の自分とパブリックイメージが離れている人間だと思っているので、「恋愛モノが向いてる」と言われても、「ミステリーが向いてる」と言われてもピンとこなくて。だからこそ、いろんなお仕事をいただけているのかなと思っているんです。これからも流れに身を任せつつ、自分自身と相談しながら仕事を続けていきたいです。

――山下さんはもっとふざけたいのかな、と思っているんです。

山下 ふざけたいですよ(キッパリ)。面白いことが好きだし、みんなと違うことをするのが好き。真面目な人を見れば見るほどふざけたくなります(笑)。「この子、何をやってるんだ⁉」と思われたいんです。

山下美月

1999年7月26日生まれ。2016年にアイドルグループ「乃木坂46」3期生オーディションに合格。中心メンバーとして活動し、2024年5月に東京ドームでの卒業コンサートをもって同グループを卒業。グループ在籍時より数々のドラマ・映画に出演し、俳優としても活躍。主な出演作にNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』、『下剋上球児』、『Eye Love You』など。

2025年は『山田くんとLv999の恋をする』に出演(作間龍斗とW主演)したほか、『名探偵コナン 隻眼の残像』にもゲスト声優として出演。映画『愚か者の身分』の公開が控えている。またファッション雑誌「CanCam」の専属モデルも務めている。

『火喰鳥を、喰う』

『火喰鳥を、喰う』スチル

信州で暮らす久喜雄司(水上恒司)と妻の夕里子(山下美月)はある日、一家代々の墓石から、太平洋戦争で戦死した先祖・久喜貞市(小野塚勇人)の名が削られていることを知る。時を同じくして、地元紙「信州タイムス」の記者・与沢一香(森田望智)とカメラマン・玄田誠(カトウシンスケ)が、生前の貞市が戦地ニューギニア島で書いたという日記を携え久喜家を訪れる。その日記に綴られていたのは、戦地での壮絶な日々と、何としてでも生きようとする貞市の異様なまでの執念だった――。

監督:本木克英
キャスト:水上恒司 山下美月 森田望智 吉澤健 豊田裕大 麻生祐未 宮舘涼太
©︎2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会

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