映画『終点のあの子』でダブル主演を務める當真あみさんと中島セナさん。誰もが通過する思春期の痛みと美しさを描いた本作品で、ふたりは何を考え、どのように演じたのか。
思春期の痛みを思い出した
――當真さんは、「自分も何者かになりたい」という気持ちを抱きつつも、周りに合わせながら生きている希代子を演じ、一方の中島さんは、知的で大人びていて、孤高の雰囲気漂う朱里を演じました。役をつくっていくうえで、どんなことを考えましたか?
當真 希代子は本当に普通の女の子というか、どこにでもいるような学校生活を送っている子だからこそ、その役を等身大の自分のままで演じられたらなと思いました。実際、周りに合わせながら生きていたりするところとか、私自身、希代子と似ているなと思うところがあって、共感できる部分が多かったので、現場でもいつも以上に自然体でお芝居に向かうことができた気がします。
中島 私も、登場人物の中で朱里がいちばん近しいと思える役でした。絵が好きだったり、ひとりでいることが多かったり、縛られるのがあんまり好きじゃなかったり、そういうところは自分と似ている部分だなと思ったので、そこから役のイメージを拾っていけたらいいなと思いました。
――本作は、ゆらぎやすい女子高生の友情と複雑な心情を鮮やかに描いています。先ほど共感できる部分が多かったという話がありましたが、具体的にどういったところですか?
當真 例えば、クラスのリーダー格で美人の恭子さん(南琴奈)みたいな人は実際の学校にもいましたし、私もそういう人たちを見て、「あれぐらい自由に話せたらいいな」とか「みんなの中心にいる人ってすごく楽しそうだな」と思ったことはありました。お芝居とはいえ、憧れや妬みみたいな部分を表現しないといけない場面では、当時の感情が蘇って、ちょっとぐさっと刺されたような痛みを感じました。思春期の痛みを思い出しましたね(笑)。
――他者との関わりの中で生きていると、妬みや怒りといったどす黒い感情が湧くことがあると思います。そういうときはどうしていますか?
當真 私は基本的にそういった感情は表に出さないですし、人と意見がぶつかりそうになったらとりあえずいったん自分の意見は飲み込んで、周りに合わせることでやり過ごすタイプです。その代わり、家に帰ったら母に全部話す。1回吐き出しちゃえば、あとは寝たら忘れちゃいます。次の日になったらリセットされるので、自分でも扱いやすい人間だなと思います(笑)。
中島 私は妬みは感じないですが、怒りは行動原理になることもあります。ひとりで何かすることに抵抗がないので、離れるという選択肢を選ぶことが多いです。友達だからといってずっと一緒にいなくちゃいけないわけじゃないので、同じ方向を見ているときは一緒にいればいいですし、違うなってときは離れればいいかなって思っています。
――今回の共演を通じて、お互いに相手をどういう人だと思いましたか?
中島 あみちゃんは、前向きでポジティブな人という印象です。めちゃめちゃ明るいというのを表に出すタイプではないと思いますけど、ポジティブに物事を考える人なんだなというのは撮影を通してずっと感じていました。
當真 モデルとしてのセナちゃんも見ていましたし、映画やドラマではクールな役柄が多くて、「どういう人なんだろう?」と探りたくなるタイプの雰囲気を持っている人だなと会うまでは思っていました。なので、最初は「どう話しかけていいんだろう?」とか、いろいろ考えていたんですけど、普通に笑って話したりするし、すごく柔らかい人だなって。そこがすごく魅力的だなって思います。
2つのダンスシーンが印象的
――印象に残っている場面はどこですか? 個人的には、ダンスシーンはふたりの感情と状況が表現されていて、すばらしかったです。
當真 ダンスシーンは私も印象深いです。特にふたつあるうちの前半のダンスシーンは、けっこう苦労したというか、私とセナちゃんは惑わされる部分が多くて。というのも、朱里はダンス練習に参加していないから、周りを見ながら踊っているという設定で、そのためにワンテンポ遅れて踊らないといけなかったんです。それが難しくて。周りにつられていろいろ間違えた気もしますし、難しいなと思いながら踊っていた記憶があります。
中島 私もダンスシーンはとても印象に残っています。それ以外の場面を挙げるとすれば、海に行くシーンですね。朱里がひとりで行くシーンと、希代子がひとりで行くシーンがあって、同じ日に撮影したんですけど、お互い相手の撮影を見ていなくて。完成した映像を見たとき、こういうふうになっているんだって思いました。教室での撮影が多かったりしたので、広々と開けた空間というところもよかったです。
當真 あと、この映画、私は終わり方がすごく好きだなと思っていて。1回目のダンスと2回目のダンスの大きな違いって、1回目はふたりで何とか合わせながら踊っているんですが、2回目は無音で、お互いをしっかり見ている状態で、最後は離れていく。その演出がすごく好きですね。
中島 2回目は無音で踊っていたので、足音とかちょっとした音が響いて聞こえるんですね。そういう細かな音が入ってくることで、すごく繊細な場面になっていて、私も好きです。お互い手を取り合って踊っているんですけど、最後は別々の方向に歩いていくところはある種の青春のリアリティが描かれていて、とてもいいなって思います。
當真 すっきり終わっている感覚はないですけど、これが終わりじゃなくて、これからスタートなんだという感じがすごくいいんですよ。
ひとり旅が楽しい!
――お芝居をすることの楽しさって何ですか?
當真 俳優さんは皆さん性格や考え方もそれぞれです。普通の生活をしていたらたぶん引き合うことがないような方たちとひとつの作品のもとに集まって、一緒に作業できることがすごく面白いなと思っています。お芝居をするにはお互いのことをしっかり意識してないといけなくて、そこのコミュニケーションの取り方とかも学生生活のときとはまったく違って面白いですし、自分の演じる役が自分と全然違うなって感じたときはすごく楽しいです。反面、難しいなって思うこともあって、完成した作品を観て、「もうちょっとこうできたな」って思うことはあります。そういった反省点を自分の中に書き加えていって、次に役立てるようにしています。
中島 俳優とモデルのお仕事は全然違うというか、表現するという面では共通するところもあるんですけど、自分と違う人になるってやっぱり難しいことだなと思います。もちろん、楽しめている部分もあります。でも、楽しいこと以上に考えることが多いです。現場では演じることに頭がいっぱいで、あとで振り返ったときに面白かったなと思う感じですね。
――「こうなっていたい」という理想の姿はあるんですか?
當真 具体的なものはないです。お仕事は今すごく楽しいと思いながらできているので、その感覚が変わらないように続けていけたらいいなと思っています。楽しめているからこそ、一つひとつのお仕事に向き合ってできているなと思うので、どう頑張っていけばいいかみたいなことを考えながらいろいろ挑戦していけたらいいですね。
中島 お芝居の楽しさというところの延長でいえば、役を演じていてもその人自身の特徴や個性が現れてくることがあって、どういうことを考えている人なのか、どういう仕草をする人なのか、みたいな部分が垣間見えたりするのが面白いなと思っていて。なので、私もいろいろなことを蓄えていって、あんまり多くを話さずとも伝わるような人になっていけたらいいなと思います。
――プライベートでは何をしているときがリフレッシュになっていますか?
當真 私は、休みの日は映画を観に行きます。先月は7回行きました。映画館自体が大好きなので、そこで映画で観ることがめちゃくちゃリフレッシュになっていますね。あと、最近になって、ひとり旅にもハマりました。もともとは友達と行こうとしていたんですけど、予定が合わなくてひとりで行ったら「あれ、ひとりで行けるじゃん」って(笑)。誰ともしゃべらず、ただその場を歩いて景色に触れることがこんなに楽しいんだってことに気づいちゃいました。
中島 私は、基本的に寝ることがリフレッシュなっています。ごろごろしたりするのが多いんですけど、予定が空いたときはあみちゃんと同じでひとり旅に行くこともあります。おいしいものを食べて、ぶらぶら歩いたりするだけで楽しいですよね。最近は行けていないので、またどこかに行きたいです。
2006年生まれ、沖縄県出身。21 年、CM にてデビュー。翌年、TVドラマ「妻、小学生になる」に初出演したほか、アサヒ飲料「カルピスウォーター」14 代目TVCM キャラクターを務め脚光を浴びる。以降、NHK 大河ドラマ「どうする家康」(23年)など多くのドラマに出演し、2025 年の「ちはやふる―めぐり―」では連続ドラマ初主演を務めた。近年の映画出演作に映画『おいしくて泣くとき』(25年)、映画『雪風 YUKIKAZE 』(25年)、『ストロベリームーン 余命半年の恋』など。待機作に劇場アニメ『パリに咲くエトワール』(3月13日公開)、映画『人はなぜラブレターを書くのか』(4月17日公開)、舞台『ハムレット』(5月より上演)がある。
2006 年生まれ、東京都出身。17 年にスカウトされモデルデビュー。オムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』(18年)で俳優デビューを飾り、『WE ARE LITTLE ZOMBIES』(19年)などの映画に出演。21 年には新人女優の登竜門とされるポカリスエットのCM に起用され、翌年も引き続きヒロインを演じた。主演作品としてDisney+日本発オリジナルシリーズ「ワンダーハッチ - 空飛ぶ竜の島」(23年)、映画『あこがれの色彩』(24年)など。待機作に映画『災 劇場版』(2月20日公開)、映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』(3月27日公開)がある。
映画『終点のあの子』
2026年1月23日(金)より公開
私立女子高校の入学式。中等部から進学した希代子(當真あみ)は、通学途中に青い服を着た見知らぬ女の子から声をかけられた。高校から外部生として入学してきた朱里(中島セナ)だった。学校では浮いた存在でありつつも、羨望の眼差しで見られていた朱里を希代子は気になって仕方がない。やがて一緒に時間を過ごすようになり 親密な関係になったと思っていた矢先、希代子は朱里の日記帳を見つける――。
監督・脚本:吉田浩太
原作:『終点のあの子』(柚木麻子[著]/文春文庫)
出演:當真あみ、中島セナ、平澤宏々路、南琴奈
配給:グラスゴー15
©2026「終点のあの子」製作委員会