西島さん主演でニューヨークロケを敢行した映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』。俳優人生の中でも特別な経験だったという撮影を語る。
言語や文化が異なる他者とともに映画をつくる面白さ

日本から世界へ──。俳優・西島秀俊さんが、新たな舞台でキャリアの全盛期を迎えている。主演映画『ドライブ・マイ・カー』(’21)が米アカデミー賞で作品賞にノミネートされたことで、世界中の映画ファンがその存在に注目。昨年はA24のドラマ『サニー』(’24)に出演し、そのほかにも国内外の出演作の公開が控える状況だ。そんな中、日×台×米合作映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』では主人公の賢治役に抜擢。セリフの9割が英語というかつてない挑戦の中で、ニューヨークで暮らすアジア人家族を演じた。

「賢治は大学で廃墟の研究をしている日本人助教授なので、英語がものすごく堪能である必要はなかったんです。ただそれでも、僕にとっては難しい試みでした。その中で妻のジェーンを演じたグイ・ルンメイさんとご一緒できたのは本当に幸運でした。初めてオンラインで本読みをしたときから素晴らしかったです。彼女が目の前で自然な演技をしていたことが、僕にとって大きな助けになっていました」
真利子哲也監督のもと、本作の撮影は多言語が飛び交うインターナショナルなチームで行われたという。それゆえに、スタッフや俳優間では言葉を超えた交流が生まれていった。

「現場に入る前は、積極的にコミュニケーションをとり、互いに理解し合わなければと思っていました。でも、実際に撮影が始まるとみんながそれぞれの持ち場に集中していて一体感があった。だから僕自身も、演技に没入することが許される素晴らしい現場だったんです。“映画を撮る”という共通の文法を通して、言語が異なるからこそ言葉を飾らずに正直にものを伝え、お互いに理解し合おうとしていました。この映画が描くのは最も身近な他者である家族ですが、この最小単位の共同体ですら、昔と比べてわかり合うのが難しくなっています。今の時代に他者とどうつながっていくのか。難しいテーマですが、見てくださる皆さんに共感していただける作品になっていればうれしいです」
1971年東京都生まれ。’92年に俳優デビュー。2021年公開の映画『ドライブ・マイ・カー』では、第56回全米批評家協会賞 主演男優賞などを受賞。ドラマ『きのう何食べた?』シリーズや、映画『首』『スオミの話をしよう』、Apple TV+『サニー』など、国内外の映画・ドラマで幅広く活躍。現在、主演を務めた映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』が全国公開中。
映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』

©Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.
2025年9月12日(金)全国ロードショー
【あらすじ】
ニューヨークで暮らす日本人の賢治(西島秀俊)と、中華系アメリカ人の妻ジェーン(グイ・ルンメイ)は、仕事や育児、介護と日常に追われ、余裕のない日々を過ごしていた。ある日、幼い息子が誘拐され、殺人事件へと発展する。悲劇に翻弄される中で、口に出さずにいたお互いの本音や秘密が露呈し、夫婦間の溝が深まっていく。ふたりが目指していたはずの“幸せな家族”は再生できるのか?
【キャスト・スタッフ】
監督・脚本:真利子哲也
出演:西島秀俊 グイ・ルンメイ