2026.04.09
最終更新日:2026.04.09

【森七菜インタビュー】 映画『炎上』|「面白いな、自分」と思いながら生きています(笑)

話題作への出演が続く森七菜さん。最新作『炎上』では、逃げるように家を飛び出して、トー横へとたどり着いたひとりの少女を演じた。役づくりの話を皮切りに、お芝居することの楽しさやプライベートでの面白エピソード(?)を聞いた。

じゅじゅとして生きた日々は濃かった

森七菜

――森さん演じる樹理恵(じゅじゅ)は、カルト宗教の信者の家の子として厳しく育てられ、そこから逃げるようにして新宿歌舞伎町にたどり着きます。作品内では、性暴力や薬物、家庭内暴力なども描かれていますが、その世界で生きるじゅじゅは森さんにとって新境地ともいえる役柄だったと思います。本作の出演が決まってから、どのように役に向き合っていきましたか?

 台本を読んだときは、本当にすごい話だなと思いました。と同時に、これが自分の未来になっていくというか、じゅじゅとしての時間を経験するんだろうなという予感はしました。じゅじゅはヘビーなバックグラウンドを持っている女の子だったから、最初は悲劇のヒロインとして捉えようとしている自分がいたんですけど、監督の長久さんが「トー横にたむろする彼女たちには自分のことを守るための強さがあるし、悲劇を悲劇だけで終わらせない強さがある」みたいなことをおっしゃっていて、すごく腑に落ちたんです。悲劇だけを抱えていくのもあんまりリアルじゃなくて、人はどれだけつらいことがあっても、つかの間忘れることはあるし、自分がどれだけ悪いことをしても、人のことを簡単に殴れちゃう瞬間とか、たぶんあると思うんですよ。なので、そういう人としてのゆるさ、いい意味でのいい加減さをじゅじゅにも持たせたいなと思いました。例えば、友達とふざけるシーンで肩パンしたりするとか、そういうリアルな部分をちゃんと持っておかないと、ただの物語上の女の子として終わってしまう気がして。それはイヤだったので、そうならないように意識しました。

森七菜 2

――楽しい瞬間はあるとはいえ、やはりヘビーなことが起こるので、じゅじゅとして生きる日々は大変ではなかったですか?

 ほかのキャストの子たちもみんなそうですけど、それぞれ自分にとっての地獄はあっても、そこで生きていくための強さは持ち合わせているし、仲間たちと過ごす楽しい時間も描かれているので、撮影中は大変だなと思うことはあんまりなかったです。ただ、サンダンス映画祭で作品を観たときに、ぼろっと泣いちゃって。周りの人に「この人、自分のお芝居を見て泣いている」と思われたらイヤだなと思って、めっちゃ必死で隠していました。そういう思い出し方はしますね。それだけじゅじゅとして生きた日々は濃かったんだなって思います。

森七菜 3

――じゅじゅとの共通点って何かありますか?

 ないです。もう全然違うし、新しく経験することばかりでした。だから、すごく受け入れやすかったんだと思います。悲しいことは起こるんだけど、人生にひとつも重なりがないからこそ、受け入れることができたのかなって。


――キャストやスタッフとのやり取りで、何か思い出に残っている出来事はありますか?

 怪獣の着ぐるみを着たアニマルギャルズの子たちと一緒にお芝居したときですかね。普段アクロバットとかを習っている小学生の子たちなんですけど、体の使い方も上手でしたし、とにかくお芝居していても自由で、感情の開け方とかすごいんです。あんまりルールがない感じがすごくかわいくて、かっこよくて。自分にはない表現だったので、衝撃でした。それと、トー横キッズを演じたみんなで寄せ書きを書きあったんです。そこで「かっこいい」と書いてくれた子が何人かいて、それがすごくうれしくて、宝物にしていますね。


――どの部分がかっこいいと思われたのか、何となくでもわかりますか?

 いや、わからないです。私、めちゃくちゃかっこ悪いですもん。不器用ですし。


――不器用なんですか?

 不器用です。でも、そのぶん飽きないです。不器用過ぎて自己嫌悪に陥ることはありますけど、自分に迷惑かけるぶんにはいいというか、「面白いな、自分」と思いながら生きています(笑)。

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カットがかかった瞬間がいちばん楽しい

――今回の『炎上』もそうですが、最近だと、『秒速5センチメートル』の花苗や、『ひらやすみ』のなつみの演技がとても素晴らしく印象に残っています。やってみたい役とかはあったりするんですか?

 ないんです。持たないようにしているというのが正しいかもしれません。それこそ『ひらやすみ』の原作を読んで、「この役こんなふうにやってみたいな」と軽く考えたりすることはありますけど、私は緊張しいなので、強い憧れを持ってしまうと、あんまりよくない気がして。


――そうなんですね。お芝居することの楽しさはどういうときに感じるんですか?

 カットがかかった瞬間がいちばん楽しいです。楽しいっていう感情がどかーんと来ます(笑)。


――どういうことですか?

 お芝居の中で爆発させた気持ちが、カットになった瞬間に、現実に引き戻されてウソみたいになるわけじゃないですか。でも、この気持ちの高鳴りはたしかにあって、それが楽しいの方向に一気に爆発するみたいな感じです。


――散々泣いたお芝居の後でも、カットがかかった瞬間、楽しいってなるんですか?

 なります。終わった瞬間、走り出すときもあります(笑)。

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――爆発してますね(笑)。ほかにも、何か感情が大きく動くことってあるんですか?

 そうですね。今ぱっと思いついたのは、2年くらい前にシャネルのイベント(「CHANEL & CINEMA – TOKYO LIGHTS」)があって、そこで役所広司さんや安藤サクラさんが講師になって、若手の俳優に演技を教えるワークショップがあったんです。それはすごく感動しました。私は見ているだけでしたけど、参加しているみなさんの熱量がすごくて、「私も舞台に上がってみたい!」という気持ちになりましたし、そう思えるくらいの熱量が自分にもあることがわかって、とてもうれしかったんです。お芝居にちゃんと情熱を持っていることが確かめられたというか。


――その気持ちは今も残っていますか?

 はい、残っています。やる気満々です!(笑)


――では、将来的にどういう存在になっていたいとかってあるんですか?

 具体的なものはないんですけど、とにかく安心して見てもらえる人でありたいし、信頼してもらえている人でいたいなと思っています。「この人が出るんだったら面白そうじゃん」とか「この人だったら自分の好きなアニメのキャラ任せてもいいな」とか、そう思ってもらえる人でいたいです。

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面白ハプニングが起こってほしい

――プライベートでの息抜きって何ですか?

 最近は旅行に行きます。放っておくとずっと家にいちゃうので、それだともったいないと思って、何か面白ハプニングが起こってほしいなという期待も込めて旅行に行きます。


――話せる範囲で、何か面白ハプニングはあったんですか?

 ありますよ。去年カナダに留学に行ったとき、入国審査が厳しくていろいろ質問されたんです。英語が全然わからないのに、めちゃくちゃ早口でしゃべりかけてきて、もう10分ぐらいずっと聞き返してやっと何しに来たのか聞かれていることがわかったんです。で、よくわからないまま咄嗟に「ナイアガラの滝を見に来ました」と答えたら、「はあ?」みたいな感じになって。「だったら、トロント空港だろ」的なことを言われて、別室に連れて行かれて、荷物も全部開けられて。ひとりだったから、もう不安で泣いちゃいました。何とか英語がわかる人に電話がつながって、私が俳優であることを説明してもらったら、職員の方がネットでばーっと調べて、「行っていいよ」となって入国できたんです。もう足ががくがく震えちゃって大変でした。さすがにここまでのハプニングは期待してなかったですけど、今となってはいい思い出です(笑)。

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俳優
森七菜

2001年生まれ。大分県出身。NHK連続テレビ小説「エール」(20年)で広く知られ、『ラストレター』(20年)で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。代表作に、ドラマ「3年A組 ─今から皆さんは、人質です─」(19年)、「この恋あたためますか」(20年)、「舞妓さんちのまかないさん」(23年)、「真夏のシンデレラ」(23年)、「ひらやすみ」(25年)、映画『天気の子』(19年/声の出演)、『君は放課後インソムニア』(23年)、『四月になれば彼女は』(24年)、『国宝』(25年)、『フロントライン』(25年)、『秒速5センチメートル』(25年)など。

映画『炎上』
4月10日(金)全国公開

映画『炎上』

監督・脚本:長久允
出演:
森七菜 アオイヤマダ 曽田陵介
古舘寛治 松崎ナオ 新津ちせ 森かなた 髙橋芽以(LAUSBUB) 高村月 きばほのか
月街えい 川上さわ ユシャ みおしめじ 広田レオナ 一ノ瀬ワタル

あるカルト宗教の信者の家の子として、妹とともに厳しく教育されて育った小林樹理恵(森 七菜)。ふたりは毎日訪れるつらい日々が消えるよう、そして教育熱心な父がいなくなるよう神様にお願いをしてきた。数年後、願いが叶い、突然父親が亡くなる。しかし、父親がいなくなっただけで母親から教育を受け続ける現実は変わらない。ついに樹理恵は母の目を盗み、妹を残して家を飛び出してしまう。「あの広場に行くと、この⼈が助けてくれるよ→@kami」。行き場のない樹理恵のSNSに届いたDMを頼りに向かうと、そこには若者たちがたむろしている広場が。そこで「じゅじゅ」という名前をもらい、ひとりで母親の元に置いてきた妹を連れ出し、ともに暮らすという“夢”を持った。そんな彼女が歌舞伎町に火をつけるまでの150日間の物語。

配給:NAKACHIKA PICTURES
©2026映画「炎上」製作委員会

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