2025.06.16
最終更新日:2025.06.16

【二宮和也インタビュー】「SNSならInstagramよりXが好き」。最新刊『独断と偏見』を“新書”で出す理由

俳優として、アイドルグループ「嵐」のメンバーとして、会社のオーナーとして。様々な顔を持つ二宮和也さんが、初の新書『独断と偏見』を誕生日の6月17日にリリース。40代になった二宮さんがこれまで考えてきたことや今考えていることを、自身の言葉で率直に語った話題作だ。 “ニノ流哲学”が凝縮された本作の魅力をインタビューとともに紐解く。

二宮和也 嵐 独断と偏見 著者近影
©︎Sai

長い付き合いの編集者からのメールがなければこの本が出ることはなかった

新書『独断と偏見』は、二宮さんの会社のホームページの問い合わせページに届いた、長い付き合いの編集者からの “あなたの言葉たちを文字化し、一冊の本にし、お守りとして持っていたいのです”という一通のメールが始まりだという。

二宮さん自身が「長い付き合いの編集者」と語る野呂さんは、2009年に雑誌『MORE』で始まった二宮さんの連載『二宮和也のIt[一途]』の担当で、終了までの10年間変わることなく務めた。

「メールが来た後、詳しく話を聞いていくうちに、野呂さんは大きな病気を患っていて、先々のことを考えることが増えたのだとか。そのとき、僕の言葉をよく思い出し、励みになることが何度もあったそうなんです。僕自身、自分の言葉にそういう力が宿っているとか、誰かの心を動かすなんて考えたこともなかったので、それを聞いた時はピンとこなかったのだけれど、野呂さんのことはものすごく信じていたので、だったらやってみるかという気持ちになりました」(二宮さん・以下省略)。

そして毎月1日、四文字熟語をテーマに話しをすることを決め、1年もの月日を費やし、ゆっくりと丁寧に100の問いに答えていった。

「改めて1冊の本としてまとまったものを読んだとき、最初に思ったのは “こんなこと喋ってたんだ”ということでした。その中には何度も言ってきたフレーズもあったし、今回初めて出てきたものもありました。でも言語化したことで、その両方がかけ離れていることはなかったし、1本のライン上にあるんだなとわかり、自分自身の整理ができました」。

二宮和也 嵐 独断と偏見 インタビューカット
©︎Sai

言葉だけで思いをカタチにできる“新書”という選択がベストだった

本書は編集者である野呂さんの質問に二宮さんが答えていく形式を取っている。あえて自叙伝のような形にしなかったのも二宮さんのこだわりだ。

「偏見になってしまうかもしれないけれど、自叙伝って自分の考えや思いを信用して突き進んだ結果、成功したみたいな流れになると思うんです。この本はサクセス本のようなものではなく、“二宮和也はこう思ってるよね”くらいの客観的な立場で自分の考えや思いを出したかったので、質問に答える形で進めていくのがちょうどよかった。未だに悩み続けていることだってあるし、まだファジーな状態にいる人間なので、そもそも成功体験をまとめられるわけがありません(笑)」。

だからこそ読み進めるうちに、二宮さんがどんなことに悩み、どんな風に生きてきたのかが鮮明に見えてくる。

「1人の人間として、自分らしい言葉で出せるようにということは考えて答えていたけれど、ここまで載るとは正直、思っていませんでした(笑)。それから野呂さんの投げてくる質問の温度感は気にして答えるようにしていました。理解を深めていただくのには必要なことだと思ったので」。

真っ直ぐに向き合う姿勢は、アイドル「嵐」として二宮さんが考え、実践してきたことにも通じる部分があるようだ。

「アイドルとして活動する中で “相手の望むことをを叶えてあげたい、痒いところに手が届く存在でありたい”という思いは常に抱いていました。自分たちのことを応援してくれるコミュニティの人たちがどんな曲を聴きたいのか考えたとき、時には最新の曲ではなく往年のヒット曲なことだってあるのを、きちんと理解した上で歌うというのがアイドルなんだと思っています。応援してくださる方が喜んでくれることを第一にやっていけば、自然とお茶の間の人たちにも届くとでも言いましょうか。それから「嵐」は応援してくださる方々のお父様・お母様が“嵐のコンサートだったら行っていいよ”と言ってくれるような、安心で安全な存在でありたいとも思っているし、それが僕の考えるアイドルの概念です」。

そして文章だけで構成された新書で出せたこともベストな選択だったと二宮さんは振り返る。

「本を読むという行為もそうですが、普段から文字で情報を捉えることが多い人生を歩んできたので、文字ベースの形で出すことがしっくりきたんです。それこそSNSの世界だと、インスタグラムよりもエックスが好きですし。もし仮に文章の間に1ページずつ撮り下ろしの二宮がいたら……邪魔だなと思います(笑)」。

二宮和也 嵐 独断と偏見 インタビューカット
©︎Sai

タイトルをギリギリで「独断と偏見」に変更

そして本書のタイトル『独断と偏見』についても驚くべき事実が。インタビューが終わって原稿がまとまる段階までは、なんと違うタイトルがついていたとのだとか。

「MOREでやっていた連載が『二宮和也のIt[一途]』というタイトルだったことと、この本が100の問いに答えるという内容だったので、当初は『百問一途』で出す予定だったんです。でもまとまった原稿を読んでいるとき、内容とタイトルが合致していない気がして。一般論として答えているものではなかったので、自身がどう思っているのかを書くとやっぱり独断になってしまう。世間一般には偏見として聞こえるかもしれないことを、直さず自分の言葉として載せているので、タイトルを『独断と偏見』にしたいと、すべて読み終わったタイミングで伝えたんです」。

その結果、タイトルはギリギリのところで『独断と偏見』へと変更されたわけだが、二宮さんならではのフラットな視点で語られる独断と偏見は、読み手の心に自然と入り込み、心地よい余韻を残していくから不思議としか言いようがない。

「1年という期間で出来上がった本ではあるけれど、野呂さんとは10年以上も一緒に雑誌の連載をやっていく中で築いた関係値があったから答えられた部分もたくさんあります。そして野呂さんが聞きたいことは、野呂さんだけでなく、その後ろにいるであろうたくさんの人たちも聞きたいと思って待機していると思ったので、マイルドに話すのではなく、自分の言葉で純度を高めて話しました。それからもう1つ。僕は、わからない人にはわからなくていいとは思わないんです。だから質問者である野呂さんが俺の言ったことに対して“?”の顔をしているときは、何で迷っているのか教えてくれという話をして、そこからわかるまで砕いて話をしていきました。そこまでやったのだから、読んだ人がどう受け取るかはもう読む人におまかせします。それもあってこのタイトルになったとも言えるし、あくまで一個人の意見として読んでもらって、その中で自分が持っておきたい言葉があれば嬉しいという気持ちです」

二宮和也 嵐 独断と偏見 インタビューカット
©︎Sai

編集者と二人三脚で作り上げた今のリアルが詰まった珠玉作!

本作では二宮さんと編集者である野呂さんのみという、非常にミニマムなスタイルで作られたのも大きな特徴の1つ。だからこそ二宮さんの声が細部にまで反映され、リアルな声として伝わってくる。

「せっかく野呂さんから一緒に作りませんかと声を掛けてもらったので、作るところをしっかり見て、徹底的に参加しようと思ったし、制作から関わることで自分らしさのあるものを作りたかったんです。インタビューならではの生っぽい言葉は残したいという思いはありつつも、ニュアンスを変えたくて書き直す箇所もあったし、内容ごと変える部分もありました。それからこの本の一人称には“僕”と“俺”が混在しているのですが、それはあえて統一していないんです。僕の方が多いけど、このときに俺と言ったのは、僕ベースではない何かがあるはずで違うニュアンスで何か言いたかったんだと思うんですよね。そういう細かい部分まで探りながら、3回くらい手直しを繰り返しました」

完成した本を手にした今、発売に向けての今の気持ちを問われると「世に出てから感じる部分が多いと思うので、今はまだ出来上がっていないのと同じ」との答えが返ってきた。それは読んでもらった人の声を受け止めて、初めて何かを感じられるという二宮さんの思いがあるからかもしれない。

「同世代はもちろん、若い世代や上の世代の方にも読んでもらいたいです。説教くさいと感じるのか、あんただからできるんだよと思われるのか、まだまだひよっこだなと思われるのか(笑)。世代によって価値観は違うと思うので、その人たちがどう思うのかというのは興味深いところです。1人でも多くの方にこの本が届いたらいいなと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします!」

二宮和也 嵐 独断と偏見 著書手持ち
©︎Sai

『独断と偏見』

二宮和也 独断と偏見 書影

二宮和也著
集英社
2025年6月17日発売
¥1,100

©︎Sai

二宮和也

1983年6月17日生まれ、東京都出身。1999年、アイドルグループ「嵐」のメンバーとしてデビュー。映画やドラマ、バラエティ、CMなど幅広く活躍。最近の主な出演作品に映画『ラーゲリより愛を込めて』『アナログ』『8番出口』、ドラマ『ブラックペアン』シリーズなどがある。2016年、映画『母と暮せば』では第39回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。近著に『二宮和也のIt[一途]』(集英社)がある。

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