『こんなのみんなイヤ!』
アダム・ブロディ(1979年生まれ)
キャラ変無用の“イケてるオタク”
ロサンゼルス。恋愛や性生活を赤裸々に語るポッドキャストで人気を博すジョアンは、ある日、それまで出会ったことのないタイプの男ノアと運命的な出会いを果たす。しかし“これまで会ったことがなかった”のには理由があった。彼は敬虔なユダヤ教徒で、しかもラビ(宗教的指導者)として働いていたのだ。
奇跡を信じない女子と、神の存在を疑わない男の恋を描いたロマンチック・コメディ・ドラマ『こんなのみんなイヤ!』は、2024年にNetflixで配信されるや否や、各国で大ヒットに。普段は気さくで包容力もある彼氏なのに、人生や家族といったシリアスな話題になると、途端に“説教モード”へ突入してしまう困った男・ノアを演じたアダム・ブロディを、“デートしたい男ナンバーワン”の座へと押し上げた。
とはいえ、ブロディがこの種の役でブレイクしたのは初めてではない。2003年放送開始のティーン向けドラマ『The O.C.』で扮したのは見た目は爽やかなのに、コミックやSF、インディ・ロックの話になると急にマニアックな語りを始めてしまう“オタク少年”セス。今回のノアとほぼ同じキャラクターである。同作でティーン女子の人気を独占したブロディだったが、番組終了後はキャリアが停滞。出演作は年に1〜2本の映画やテレビのゲスト出演程度で、しかも役柄はセスの変奏曲のようなものばかりだった。普通なら焦ってイメージチェンジを図りそうなものだが、ブロディは「ぎりぎり業界に残っていられれば十分」とでも言いたげな、どこか飄々とした佇まいを崩さなかった。
転機が訪れたのは、アメコミ・ヒーロー映画『シャザム!』で身体を鍛えて少しマッチョになった頃から。2022年の配信ドラマ『バツイチ男の大ピンチ!』では、“大人になったセス”のようなキャラをさらりと演じ、かつてのファンを再び惹きつけた。そして『こんなのみんなイヤ!』での再ブレイクである。そう考えると、ブロディの趣味がサーフィンだというのも納得がいく。彼はハリウッドという大海原で浮かび続けながら、次に自分を運んでくれる波が訪れるのをじっと待っていたのだ。
『こんなのみんなイヤ!』
監督/グレッグ・モットーラほか
出演/クリステン・ベル、アダム・ブロディ、ジャスティン・ルーペほか
恋バナ系ポッドキャスターとして人気を博する女優エリン・フォスターが、現在の夫サイモン・ティクマンとの関係をベースに作り上げたロマンチック・コメディ。第2シーズンにはブロディの妻である女優レイトン・ミースターもゲスト出演して話題を呼んだ。
文筆家。映画、音楽雑誌など複数の媒体で執筆。大和田俊之氏との共著『文化系のためのヒップホップ入門1~3』(アルテスパブリッシング)が絶賛発売中。