2025.06.26
最終更新日:2025.06.26

『「地震」「火山」の国に暮らすあなたに贈る 大人のための地学の教室』【BOOKレビュー 未知への扉|嶋 浩一郎】

まだ知らない体験や世界を読書は教えてくれる。嶋浩一郎さんの薦める今月の一冊は?

『「地震」と「火山」の国に暮らすあなたに贈る 大人のための地学の教室』

『「地震」と「火山」の国に暮らすあなたに贈る 大人のための地学の教室』

ズルズル動くわ、揺れるわ、爆発するわ
地球のことをもっと知っとこう

 仕事するのも、食べるのも、眠るのも、我々あらゆることをこの地球の上でやっているわけですが、絶望的といっていいほど、唯一無二の相棒である地球のこと、知らないんじゃないでしょうか?

 「地球さんは今何歳?」「地球さんの機嫌は今いいのか?」などなど。

 知ってますか? 地球ができたのは46億年前。太陽系に散らばったチリが集まって地球になりました。しばらく太陽系はチリだらけだったので、生まれたての地球には岩石や氷が隕石として次々降ってきました。ムッチャでかい隕石がぶつかって地球の一部が飛び散ってできたのが月ですよ。そして、月ができたおかげで地球の自転の地軸がズレたんですって。そのおかげで我々日本人は四季を愛でられるようになったわけですから、旬の食材をレストランで楽しんでる皆さんもこれからは地球と月に感謝してください。

 そして、我々が住んでいる地殻の下はカンラン石など岩石が対流しているマントルといわれる部分ですが、マントルからは超高温のマグマが噴き出てくるわけです。太平洋の真ん中にはマグマが噴き出す中央地溝帯があって、噴き出したマグマが海洋プレートになります。つまり、太平洋の底です。次々噴き出すマグマはこのプレートをじわじわ両脇へ動かしていきます。そして海洋プレートは我々の住む大陸プレートの下に潜りこみ、地面を引っ張りこみますが、これが跳ね返るのが地震で、火山も地下に潜った海洋プレートの熱が原因で生まれます。そんなプレートテクトニクスといわれる壮大ドラマが進行中の地球の上で我々は呑気に「UOMO」を読んでいるというわけです。

 本の表紙にも書いてあるように、日本は「地震」と「火山」の国なんですよね。著者の鎌田浩毅さんは京大名誉教授で地球科学研究の第一人者。2030年代に南海トラフ地震がかなりの確率で起きるであろうこと、富士山の噴火もそれに続くであろうと書かれています。地球のしくみ、すなわち地震や噴火の起きるしくみを知ることは、それらの災害に備えることのファーストステップになるはずです。

『「地震」と「火山」の国に暮らすあなたに贈る 大人のための地学の教室』

鎌田浩毅著
ダイヤモンド社 ¥1,980

この本は、火山と地震の第一人者である京都大学名誉教授の鎌田浩毅先生がわかりやすく、面白く「地学」を解説した本。「地震」の国に住みながら、我々日本人の高校での地学の履修率は5%と低く、「地学リテラシー」はほぼ皆無。鎌田先生は南海トラフ地震とそれに続く富士山の噴火、首都圏直下型地震は確実に起きるとおっしゃっています。地学の知識は、防災意識を高めることにつながるはず。

嶋 浩一郎

1968年生まれ。博報堂ケトルクリエイティブディレクター、編集者。本屋B&Bの運営にもかかわる。著書に『「あたりまえ」のつくり方』『アイデアはあさっての方向からやってくる』『企画力』など多数。

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