2024.02.20

『Gペンマジック のぞみとかなえ』|若さの全肯定! それも情熱(パッション)!【来世で使いたいマンガ名言|劇画狼】

マンガの中には心揺さぶられる名言がたくさんある。そんな名言の数々を、現在連載中の作品から劇画狼がピックアップ! 来世で使いたいと思ってしまう名セリフを紹介します。

『Gペンマジック  のぞみとかなえ』|若の画像_1

 難しい! よき指導者として、青少年との適切な距離感を測るのは難しい!


 特に一生の中で最も感受性が豊かな中学生とどうコミュニケーションをとるかについては、われわれ子育て世代の多くが日々苦悩していることと思います。


 叱ってばかりでは自主性やモチベーションを引き出すことはできないし、褒めるだけでも言うことを聞いてくれない。…というデリケートな問題にこれ以上ない正解をたたきつけてくれた、崇山祟『Gペンマジック のぞみとかなえ』の五十嵐先生を今回はご紹介!


 五十嵐先生の教育スタイル、それは「常軌を逸した全肯定」。


 やまびこ中学校2年A組に赴任してきた五十嵐先生は自由をはき違えた生徒・高井のぞみが空中におでん串でイラストを描いている姿に胸を打たれ、彼女の情熱に応えるために漫画研究部を設立することを決意。

Gペンマジックのぞみとかなえ 2
 ここから五十嵐先生は早い。部活漫画の序盤の山場である「設立に必要な人数を集め、顧問になってくれる教師を見つけて説得し、活動場所を確保し、学校側に設立の許諾を取る」というおいしいところを、五十嵐先生は「人数は高井さん一人でいい、私が顧問になる、活動場所はあること前提で漫画をたくさん部室に置いて好きに読めるようにする、学校の許諾も取れたものとする」で一気に解決。この間わずか2ページ。「漫画部」ではなく「漫画研究部」とすることで、描く活動だけに限定せず、研究と称して好きに読めばいいだけという環境を整え、さらには漫画を読みながら名作お菓子ロマンロールを食べることも許可。


 生徒のモチベーションを高く保ちながら漫画制作も順調にスタートさせ、明らかに遠回りな自己流を見ても「試行錯誤して自らのスタイルを見つけていけ」と、矯正せずに応援。


 全肯定は回を重ねるごとに増大しついに五十嵐先生は「校則にタヌキの入学を禁止する要項はない」と、人間とタヌキの共学化も推し進め、そうやって育てた生徒たちが漫画を宇宙に流行らせ、最終的に地球を救う(雑なネタバレ)。

Gペンマジックのぞみとかなえ 1
 地球を救う人材を育てる教育者、これは全大人が真似するしかない。


 作者の崇山祟は2023年惜しまれつつ世を去ったが、この人の漫画は基本全部コレ(かかわる者すべての自由を肯定しつつなぜか完璧に着地)なので、とにかく読んで!!


『Gペンマジックのぞみとかなえ』  崇山祟 全1巻/秋田書店

『Gペンマジックのぞみとかなえ』
崇山祟 全1巻/秋田書店

2023年5月に急逝した崇山祟が最後に遺した、全展開が規格外のガールズ・ビー・少女まんが家コミック!



劇画狼
特殊出版レーベル・おおかみ書房代表。プロの漫画家が商業誌に掲載したが単行本化されなかった未収録作品の書籍化や書評、大阪の画廊モモモグラでの原画展企画、イベント司会など。



Ⓒ崇山祟(秋田書店)2023

RECOMMENDED