芋生悠さんが愛する名作『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』 

「自分にとって半身のような、大切な人を考えました」

芋生さんが最近観て心に残っているのは、大事な人を思い出したというNetflixのオリジナル映画『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』。友情と恋愛の中で揺れ動く女の子の心の機微が描かれる素敵な物語。


「主人公のエリーをはじめとする登場人物が私と同年代の話というのもあって引き込まれました。性別や国籍を抜きにして、恋愛や友情を自由に育んでいるところや、相手を自分の分身みたいに愛するっていうところがすごく好きです。世の中でどんな人でも愛せると思わせてくれる優しい映画。

『ハーフ・オブ・イット〜』を観てすぐに友達の映画監督、吉田奈津美を思い出して。彼女はすごく繊細でいろいろと考えちゃうタイプで、割とのんびりの私とは正反対。以前、彼女の監督作品『ひとひら』を撮影しているときに、ふと私が人生でいちばん好きで20〜30回読み返している恩田陸さんの小説『チョコレートコスモス』のことを話したら、『こわっ! 私もいちばん好きなんだけど』って言われたんです。あと、自分が悩んでいるときにこんなこと考えていてと打ち明けると『私も同じこと考えてた』って。そんな波長の合う彼女なので、最近は不吉な予感がするとすぐ電話で安否を確認しています(笑)。

吉田とは趣味や性格が違っても、自分の半身のような気持ちで接することができる人。いろいろなものを超えたところにいる、愛おしい存在。『ハーフ・オブ・イット〜』を観ながら、そういうことが頭によぎりましたね。吉田にもおすすめしたので、これから感想を聞くのが楽しみです」


 芋生悠さんが演じる最新作『ソワレ』 

「タカラのトラウマを計り知れなかった。だから、想像することをやめた」

漫画原作から社会派まで、多種多様な話題作に出演を重ねてきた芋生悠さん。最新作『ソワレ』で演じる山下タカラは、過去のトラウマを抱えた影のある少女。自分が働く高齢者施設に演劇を教えにきた役者志望の岩松翔太に、刑務所帰りの父親から暴行を受けているところを目撃され、二人はそのままあてのない逃避行に身を委ねる。

「物語のはじめのタカラは、翔太が訪れた施設にいた人くらいの感覚。彼女自身は、自分の人生の主役にもなりきれていないような人で、父親との事件から翔太に連れ出されて、やっと彼女の物語が始まる。それまでは『私、撮られているんだろうか』というくらいの存在感なんです。翔太との出会いによって、少しずつ自分の人生の主役になれていく。

彼との関係が自分を変えていくので、つねに翔太のことは念頭に置いていました。なので、駆け落ちが始まってからはとにかく翔太の一挙一動をつぶさに見ていたいなって思って。彼に怒りをぶつけられた時でも、逃げずにちゃんと目を見て、ぶつかってくる重みを受け止めるということは意識しました」

心の傷を隠すように淡々と日々を過ごしていたタカラの人生を変えるほどの、衝動的で情熱的な逃避行。翔太とともにいる時間が増えるにつれ、孤独感に温もりが帯びていく。感情の振れ幅が大きい役柄を演じることは、芋生さんにとって難しくなかったのだろうか。

「過去に大きなトラウマを持ち続けている役は、演じる時のエネルギーをぐっと上げられるので、気持ちを持って行きやすく、またキャラクターに入り込めるのでやりやすい場合もあります。でも、タカラに限っては特殊でした。私は優しい両親に優しく育てられたし仲がいいので、彼女が持つトラウマがどれほどの重さなんだろうと想像ができませんでした。なので、自分から決めつけたタカラ像を想像して持ち込むのではなく、舞台となる高齢者施設の殺伐とした空気や淡々と過ごす毎日など、現場の中から見つけていくようにしました。一方で、タカラの奥に眠っているものがなかなかわからない中で、この役へのアプローチは賭けでした。心から信頼している外山(文治)監督や主演の村上(虹郎)さん、共演者の皆さんがいたから飛び込めたのですが、すべての現場でできることではないと思っています」

翔太とタカラ、2人の物語を追いかけていくうちに、単なる若者の恋愛ストーリーでも、逃避行を切り取ったロードムービーでも、さらには華やかな人間讃歌でもないことに気がつく。実にカテゴライズが難しい。しかし芋生さんは、そういった言葉や観念の外側にあるものを大事にしたいという。

「2人が抱える自分だけの悩みや問題、孤独感や焦燥感は、一般社会からは“カテゴライズできないもの”であり、大抵の場合は見放され、軽蔑されてしまうんです。本作を観ることで、そういった名前のないものが『それでいいんだよ』と肯定されるような気持ちになります。悩んでいる自分を自分自身がちゃんと認めることができて、最終的に愛することができるようになる作品だと思っています」


『ソワレ』

監督:外山文治
出演:村上虹郎、芋生悠
配給・宣伝:東京テアトル
(C) 2020ソワレフィルムパートナーズ
●8月28日より全国公開

俳優を目指して上京するも結果が出ず、今ではオレオレ詐欺に加担して食い扶持を稼いでいる翔太(村上虹郎)。ある夏の日、故郷・和歌山の海辺にある高齢者施設で演劇を教えることになった翔太は、そこで働くタカラ(芋生悠)と出会う。数日後、祭りに誘うためにタカラの家を訪れた翔太は、刑務所帰りの父親から激しい暴行を受けるタカラを目撃する。咄嗟に止めに入る翔太。それを庇うタカラの手が血に染まる。逃げ場のない現実に絶望し佇むタカラを見つめる翔太は、やがてその手を取って夏のざわめきの中に駆け出していく。こうして、二人の「かけおち」とも呼べる逃避行の旅が始まった──。

https://soiree-movie.jp/

Netflix映画『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』

監督:アリス・ウー
出演:リーア・ルイス、ダニエル・ディーマー、アレクシス・レミール、キャサリン・カーティン

田舎町でクラス高校生のエリーは、同級生の宿題を代行して小遣い稼ぎをしていた。ある日アメフト部のポールから、好きなアスターに送るラブレターを代筆してほしいと頼まれる。実は、エリーはアスターに密かに思いを寄せていたが、感情を抑えて依頼を引きつける。デートにこぎつけたポールは、奥手すぎてまったくアスターと会話ができない。その様子を見かねたエリーがポールをサポートしていくうちに、2人の間に友情が芽生え始める。しかし、しばらくして、エリーのアスターへの気持ちがポールにバレてしまう…。

https://www.netflix.com/title/81005150

芋生悠 HARUKA IMOU

1997年12月18日生まれ、熊本県出身。15年に女優としてのキャリアを始め、16年、『バレンタインナイトメア』で映画デビュー。『マタードガス・バタフライ』で映画初主演を飾る。近年の出演作は、『東京喰種 トーキョーグール』や『斉木楠雄のψ難』、『恋するふたり』、『左様なら』、『37セカンズ』、『#ハンド全力』などがある。公開待機作に、2021年に公開する柳楽優弥主演の『HOKUSAI』がある。豊原功補演出の「後家安とその妹」では舞台女優としての力量も発揮。大河ドラマ「いだてん〜東京オリムピック噺〜」を始め、テレビドラマへの出演も多数。写真集に、初舞台「欲浅物語」の舞台裏を追いかけた「はじめての舞台」がある。

デニムジャケット¥43,000/BELPER イヤーカフ[細]¥6,800/ warmth(ユーストン) イヤーカフ[太]¥12,000・シルバーネックレス[40㎝]¥8,000・シルバーネックレス[60㎝・非売品]・パールネックレス¥10,500・アクアマリン+シルバーネックレス¥18,000/TEtoME

BELPER TEL:03-6721-0566
ユーストン TEL:03-6413-0156
TEtoME https://www.tetome-official.net

Photo:Takahiro Idenoshita
Hair & Make-up:YOUCA
Stylist:Kumiko Sueyoshi
Interview & Text:Hisamoto Chikaraishi