2019.12.12

12月13日公開! 家族の強い絆を描いたヒューマンドラマ『家族を想うとき』

最近笑ってないかも、泣いてないなというおじさんのために、週末公開の心動かす注目映画を紹介するコラム『40歳男子はコレ観とけ!』。今回は、フランチャイズの宅配ドライバーとして働く父を主人公に、家族を守るはずの仕事が家族を引き裂いてしまうという現代の実情をテーマにしたヒューマン・ドラマを紹介!

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すれ違う家族が置き忘れてしまった 無二の愛と絆を再び取り戻すまで

イギリス・ニューカッスルに住むある家族。ターナー家の父リッキーはマイホーム購入の夢をかなえるために、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立を決意するが、どこか不安を隠し切れない。彼がフランチャイズの配送事業を始めるには、パートタイムの介護福祉士として働く母アビーの車を売って資本にする以外に資金はなかった。そのため介護先へバスで通うことになったアビーは、長い移動時間のせいでますます家にいる時間がなくなっていく。16歳の息子セブと12歳の娘のライザ・ジェーンとのコミュニケーションも疎かになり、家族を幸せにするはずの仕事が家族との時間を奪っていき、子どもたちは寂しい想いを募らせてゆく。

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家族とは、見えない絆で強く結び付けられている一方で、想像以上に脆く、修復が難しい素材である。ターナー家の両親、リッキーとアビーは互いに愛情と友情を共有し、心優しく聡明な子どもを正しく育てる環境を手に入れようと、日々身を粉にして働いている。子どものセブとライザ・ジェーンは、そんな両親の思いを受け入れながらも、留守番電話から語りかける母のメッセージや毎晩兄妹2人だけで食べる晩御飯に寂しさを感じている。誰もが家族を疎かにしているわけではない。誰もが人生を諦めているわけではない。むしろ、生きるのに一生懸命なだけだ。ところが現実は、少しずつ前進しながらも消費していく時間と体力に、家族団欒が入り込む余地はない。
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これは、日々多くの労働問題が取り上げられ、働き方改革が推し進められる日本の虚像とも思える。必ずしも自分と合致する家族形態や雇用スタイルではないかもしれないが、自分ごと化するには十分にリアル。とはいえ、もちろん終わりの見えない暗闇が覆う物語ではない。同時に、ターナー家の目を通して、生きていく中での喜びとおかしみを気づかせてくれる。足早に通り過ぎてしまう時間も、思わず見過ごしてしまう風景も、その瞬間にしか存在しない。せわしない時間は人から視野と思慮を剥ぎ取ってしまうが、そんな時は一度深呼吸をして家族や友達、恋人など身近にいる大切な人の笑顔を思い出そう。それこそが自分が働く意味、生きる糧であると、心に忍ばせておくために。

『家族を想うとき』

監督:ケン・ローチ
出演:クリス・ヒッチェン、デビー・ハニーウッド、リス・ストーン、ケイティ・プロクター
2019年12月13日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019
© Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2019

『家族を想うとき』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi

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