自然に向き合い前向きに生きるワイン生産者が
教えてくれる現代社会であるべき人の姿

南フランス、ルーション地方。フランス自然派ワインのパイオニアともいわれるジャン・フランソワ・ニックの元には、同じくワイン造りに取り組む者たちが集まってくる。彼らは常に情報を交換し、収穫時に人手が足りなければ助け合い、ワイン造りを行っている。生産性を追い求めることなく、どんなに手間がかかろうとも、体と地球に優しいワインを作り続ける彼らの姿は、人生で本当に大切なものは何かを気づかせてくれる。

有機栽培で育てたブドウを野生酵母で発酵させ、添加物を極力使わずに作られる自然派ワイン。生産者は化学的な添加物に頼ることや、低温殺菌法、酸化、補糖、おがくずの追加、外性の酵母、清澄などのワイン醸造の方法をすべて拒否する(ボトル内に亜硫酸塩(SO2)を含まない、またはほとんど含まない)。いわゆるSO2や工業生産の酵母の添加を認めている「ビオロジックワイン」と違い、明確にそれを認定するものがなく、明確な規則もない。可能な限りブドウのみでワインを造るが故に、自然派ワインは本質的にシンプルな信念に基づき生み出され、農地や土壌、木、人を尊重することで実践されている。

農薬や科学肥料、添加物を使わないということは、畑の管理に膨大な時間と手間がかかり、発酵時のトラブルがおきるリスクも高まる。しかし彼らは、「納得できる一滴を届けたい」という情熱と信念でワイン造りと人生を楽しんで生きている。自然派ワインこそ人生の楽しみそのものであると、早朝から汗を流して働き、家族とともに食事をとり、夜は仲間たちとワイン片手に語り合う姿を見ると、自分にとっての幸福の定義や仕事に対する姿勢を改めて考えるきっかけになる。本作は、そんな自然派ワインとそれを手がける生産者たちにフォーカスした映画である。苦境にいる人を助け、ともによりよい人生を歩もうと挑戦を続け、人生の成功は収入ではなく人間関係によって得られる充足感や満足感であると考える彼ら。そこで描き出されるのは、人間社会の本質と成熟した人生観だ。

自然派ワインを選ぶ消費者もまた、自身の健康や環境に対する意識が高く、その信念と取り組む姿勢から作り手との距離を近くに感じている人が多い。それはワインの発展と需要に寄与すると同時に、人と地球に優しい未来を築くための環境問題への配慮という部分でも少なからず影響を与えているようだ。また、日本人にとって自然派ワインは特にありがたい。他の人種に比べてアルコール分解酵素が少ない我々でも二日酔いになることがあまりなく、生魚など素材の味を生かした日本食にも合うと言われている。自然派ワインに興味がある人は、『映画で旅する自然派ワイン』と題し、同時公開されているドキュメンタリー映画『ジョージア、ワインが生まれたところ』もチェックしてほしい。人生に新しい味わいをプラスしてくれるだろう。


『ワイン・コーリング』

監督:ブリュノ・ソヴァール
出演:ジャン・フランソワ・ニック、他
2019年11月1日より、シネスイッチ銀座、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺にて公開(『映画で旅する自然派ワイン』上映作品)
©PINTXOS2018

『ワイン・コーリング』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi