2019.08.09

8月10日公開! NYの廃材をギターへ変える『カーマイン・ストリート・ギター』

最近笑ってないかも、泣いてないなというおじさんのために、週末公開の心動かす注目映画を紹介するコラム『40歳男子はコレ観とけ!』。今回は、歴史的建築物の廃材からギターを作り、伝説のギタリストたちから愛されるユニークなギターショップと名物職人を追いかけたドキュメンタリーを紹介します!

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世界のギタリストたちを魅了するのは、 ヴィンテージ廃材が奏でる魔法のような音

ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジにあるギターショップ「カーマイン・ストリート・ギター」。店員は、パソコンも携帯も持たないギター職人のリック・ケリーと、パンキッシュな装いの見習いシンディ、そしてリックの母親の3人。リックのギターが世界中のギタリストを魅了する特別な理由は、ニューヨークの建物の廃材を使い、いい音を奏でる逸品を作っているから。チェルシー・ホテルや街で最古のバー・マクソリーズといった、長年愛されてきた街のシンボルである建物の工事の知らせを聞きつけるたび、現場からヴィンテージ廃材を持ち帰り、傷も染みもそのままに唯一無二のギターへ形を変える。足早に表情を変えゆくニューヨークで、変わらずにあり続けるユニークなギターショップの一週間を映し出す。

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小さな店舗の中にずらりと並ぶ個性豊かなギター。門外漢であってもその独特な質感や意匠、まとう空気感に不思議な魅力を感じる。これほどまでに強い情熱やこだわりが充満しているのに、店内には穏やかな空気が流れている。材料の木材を触る手つきや顧客との会話から、静かにギター愛を滲ませる職人で店主のリック。そして、彼を敬愛する愛弟子シンディの二人が醸し出す優しい表情は、この店の個性であり、大都会の癒しにもなっているよう。ルー・リード、ボブ・ディラン、パティ・スミスら大御所がリックのギターを愛用しており、劇中ではビル・フリゼール、マーク・リーボウ、チャーリー・セクストン、ジム・ジャームッシュなど、人気ギタリストたちが何気なく来店し、リックのギターで曲を弾き、幸せそうな顔を見せる。さまざまなグッドサウンドに彩られながら、売り手買い手の関係を超えた信頼で結ばれた間柄が描かれていく。そこには自ずと、音楽や楽器の魅力やすばらしさが溢れている。
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リックがニューヨーク特有の材木を発見するきっかけは、ジム・ジャームッシュが彼にギターを作ってもらおうと自宅の屋根裏の木材を持ってきたことだった。約2世紀前にロウアー・マンハッタン、グリニッジ・ヴィレッジ、バワリー、そして今のソーホーやトライベッカといった地域の建設のために使用された、いわば〈ニューヨークの骨〉を再利用するため、主にフェンダー・テレキャスターのデザインをモデルにエレキギターを作り始めた。それぞれの木材が持つ個性に、熟練した職人技が溶け合い、独創性に富む見た目と、豊かで深みのある洗練された音色が生み出される。その一つひとつから、ニューヨークの歴史と物語が五感を通して読み取れるのだ。音楽好き、ギター好きはもちろん、そうでない人はツウが通うショップを訪れる客になったように、好奇心と期待感を胸に観てほしい。

『カーマイン・ストリート・ギター』

監督・製作:ロン・マン
出演:リック・ケリー、ジム・ジャームッシュ、ネルス・クライン(ウィルコ)、カーク・ダグラス(ザ・ルーツ)、ビル・フリゼール、マーク・リーボウ、チャーリー・セクストン
2019年8月10日より、新宿シネマカリテ、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
©MMXVⅢ Sphinx Productions.

『カーマイン・ストリート・ギター』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi

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