親が自分に与えてくれたものとは何か。
特異な親子が人生をかけて見出した真理

「ニューヨーク・マガジン」で活躍する人気コラムニストのジャネット・ウォールズは、恋人との婚約も決まり、順風満帆な日々を送っていた。ある日、ジャネットは車道に飛び出してきたホームレスの男性に遭遇する。それは、なんと彼女の父、レックスだった──。彼はいつか家族のために「ガラスの城」を建てるという夢を持つエンジニア、母親のローズマリーはアーティストを生業とし、定職につかずに理想や夢を追い求め、自由気ままに暮らしていた。物理学や天文学などを教えてくれるレックスは、ジャネットたち兄弟にとってカリスマ的な存在で、幼いながらも聡明なジャネットにとりわけ愛情を注いでいた。しかし、仕事がうまくいかないレックスは次第に酒の量が増え、家で暴れるようになる。やがて高校生になったジャネットは、大学進学をきっかけにニューヨークへと旅立ち、両親との関係を断とうとするが…。

ジャネットの両親は、毒親と言われてもおかしくないほどに自分勝手で破天荒だ。特に父のレックスは、入院している娘を病院から連れ出し費用を踏み倒したり、子供たちに強く生きろと諭しながらも子離れができなかったり。また、子供を守る親としては自尊心が強く、かつ未熟である。しかしその一方で、現代社会で生きる上での建前を取っ払ったさまざまな真理や知識、想像力の源となるロマンチシズムを与えてくれる。ウォールズ家はかなり極端な例ではあるけれど、誰もが家族に対して抱く愛憎をはじめとするアンビバレントな感情が散りばめられている。

レックスが夢見た家族のためのガラスの城は、彼ら一家の常識にとらわれない生き方を象徴すると同時に、堅牢ながら扱い方次第でもろく形を変える家族の関係を表しているようだ。子供は自分を育てる者を親として見ているか、人として見ているか。優れた親=優れた人であるとは限らないし、その天秤は己の成長とともに揺らぐもの──親密に感じる時と厄介で疎ましく思っている時が繰り返される──ジャネットや姉弟たちは両親に対して、理不尽さや怒りを感じながらも表裏一体の感情として、自由意志の下で自分らしく生きる“人”への愛情を抱いている。そして、大人になり、社会的成功を収め恵まれた暮らしを送るジャネットは、かつてレックスとローズマリーが通った精神的轍をなぞり、自分に影響を与えたいびつで愛おしい家族を想いはじめる。そんな中、これまで燃やし続けた怒りに身を任せるように親と決別を図るジャネットは、最後にどんな未来を選択するのか。家族を持つすべての人へ、親と子供の関係を問う心に残る物語だ。


『ガラスの城の約束』

監督:デスティン・ダニエル・クレットン
出演:ブリー・ラーソン、ウディ・ハレルソン、ナオミ・ワッツ
2019年6月14日より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
©2019 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『ガラスの城の約束』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi