家族思いの誠実な男が直面する
“突然”の意味を、今一度深く考える

妻のローラと幼い二人の子供たちと幸せに暮らしていると信じていたオリヴィエ。ところが、ある日突然、ローラが家を出て行ってしまった。オンライン販売の倉庫で働くオリヴィエには、ベビーシッターを雇うお金もなく、残業続きの仕事と慣れない子供の世話の両立を迫られる。次から次へと巻き起こるトラブルに奮闘しながら、ローラを捜し続けるオリヴィエだったが、彼女の行方も姿を消した理由も一向に分からない。そんな折、妻の生まれ故郷ヴィッサンから一通のハガキが届いたのをきっかけに、家族にさらなる騒動が起きる。

オリヴィエは真面目で面倒見がよく、職場のオンライン販売の倉庫でチームリーダーとして日々忙しなく働いている。上司の理不尽に思える指示に対応し、部下の不満や不安を会社に代弁することもある。そんな彼を支える妻が、何も言わずに突然失踪する。オリヴィエは動揺と怒りを隠せないが、量の減らない仕事と慣れない育児に向き合っていく。悪戦苦闘するオリヴィエ(男であり夫であり父親)を追う中で2つのことを思った。

1つは、何事も“突然”は一人(または一方)の目線でしかないということ。オリヴィエは、ローラや子供たちに深い愛情を持ち、働くことが家族のためだと考えていたと思う。その一方で妻のローラは、楽しく熱心に仕事と育児に取り組んでいたが、心と体を壊していたようで(本編ではっきりと描かれないけれど…)、実はしばらく前から、家族の知らないところで彼女のカウントダウンは始まっていたのかもしれない。“突然”には実は深い理由があるのだ。

そして、もう1つは、愛情は持っているだけではなく、行動で表すことで完成されるということ。父子が改めて気持ちを共有した時に幼い長男が言った「家出するなら言ってくれればいいのに」に集約されている。思ったことを話す、伝える、聞く、考える──いたって普通のことだと思うけれど、家族にとっては最も大事なことなのだ。

ある時オリヴィエは、上司から自分のチームの従業員の解雇を伝えられる。彼にとっては突然のことだが、会社は効率や仕事量を見てきた結果だという。そこでオリヴィエはその従業員の能力や魅力を、情を交えて語る。この家庭と仕事場の対比が、オリヴィエの不器用さや誠実さといった欠点と美点を自然に描き出している。オリヴィエを演じたロマン・デュリス(『タイピスト!』や『ゲティ家の身代金』に出演)は、ギヨーム・セネズ監督の演出により、セリフがない状態で演技をし、テイクを重ねるごとに監督や共演者と一緒に言葉を見つけていくスタイルで撮影に臨んでいた(自然で愛らしい演技をする兄妹役の2人も同じ手法で撮影を進めていたというから驚きだ!)。家族を持つ40歳男子は、実にリアルで生々しいこの父親像を自分以外の誰かとしてではなく、自分とどこが重なりどこが違うのかを少しだけ意識して観ることで、学ぶことが多いと思う。


『パパは奮闘中!』

監督:ギヨーム・セネズ
出演:ロマン・デュリス、レティシア・ドッシュ、ロール・カラミー、ルーシー・ドゥベイ
2019年4月27日より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
@2018 Iota Production / LFP – Les Films Pelléas / RTBF / Auvergne-Rhöne-Alpes Cinéma

『パパは奮闘中!』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi