年齢もキャリアも超えたまっすぐな愛に
誰もがピュアな感情を思い出す

1981年9月29日、ピーター・ターナーの元に衝撃の知らせが飛び込んでくる。かつての恋人グロリア・グレアムがイギリス・ランカスターのホテルで倒れたのだという。グロリアは「リヴァプールに行きたい」と懇願し、ピーターはリヴァプールにある自分の実家で彼女を療養させることにした。ピーターの家族やリヴァプールを懐かしむグロリアだったが、まったく病状を明かそうとしない。心配になったピーターは、アメリカの主治医に連絡をとり病状を確かめ、グロリアの死が近いことを知る。そして、不意に彼女と楽しく過ごしていた頃を思い出していくのだった。

2人の出会いはありふれたものだった。あるゲストハウスで隣同士になり、何気ない会話を交わすうちに階段を登るように隣人から友人、友人から恋人になっていく。グロリアは1940〜50年代にハリウッドで活躍していたオスカー助演女優賞に輝いたことがある女優で、舞台となっている1980年頃には落ち目と噂されるようになっていた。そんな彼女を知らない若手舞台俳優のピーターは、温かさと奔放さを持つ彼女に普通の女性として惹かれる。年の差や立場を乗り越えて愛し合うグロリアとピーターの間には、ユーモアと思いやりと情熱があった。男女関係として成熟している、大人の恋物語に静かに、そしてじんわりと感動するだろう。

年上の女性と青年。大女優と若手俳優。そんなギャップを埋める色褪せない愛情が穏やかに語られる。しかし男女には、強い愛情や思いやりがあるがゆえに、相手を想いすれ違ってしまう瞬間がある。そんな恋愛の分岐点に立った時にどうやって行動するべきか、男性はピーターの目線で気づきを得るだろう。相手の言うことを聞くことが優しさか、自分の言葉で導くことが思いやりか、恋愛において本当のところはわからない。ただ、ピーターと別れる間際まで女優を貫いたグロリアは、世界でいちばんピーターを想っていた。その事実さえあればいい。その事実をお互いが知っていればいいと、最後は観る者を初めて恋愛をした時のような無垢な気持ちに帰らせてくれるのだ。


『リヴァプール、最後の恋』

監督:ポール・マクギガン
出演:アネット・ベニング、ジェイミー・ベル、ジュリー・ウォルターズ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ケネス・クラナム、スティーヴン・グレアム
2019年3月30日より新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
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『リヴァプール、最後の恋』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi