人種差別問題をコミカルに描き発信する
現代への痛烈なメッセージ

1970年代半ば、コロラドスプリングスの警察署に勤める黒人刑事ロン・ストールワースは、新聞広告に掲載されていた白人至上主義団体KKKのメンバー募集に電話をかけ、なんと面接に進んでしまう。騒然とする署内の一同は「KKKに黒人がどうやって会うんだ!?」と心配する。そこで、同僚の白人刑事フリップ・ジマーマンに白羽の矢が立つ。彼らと電話で話すときはロン、直接会うときはフィリップが担当し、二人で一人の人物を演じながら、じわじわと団体の奥深くまで潜入捜査を進めていく。

驚くべきは、この荒唐無稽に感じる物語が実話だということ。街で初めての黒人警官であるロンが、KKKに自分の本名を伝えてしまうところも本当だというのだ。そんな状況で飛び出した秘策が物語のキモであるが、おかげでこちらの肝も冷やしっぱなしなのだ。ロンとフリップは入れ替わり立ち替わり、KKKと接触し、バレずに信用をつかんでいく。相手は不当な差別を行う団体で、得体の知れない怖さがあり、潜入捜査は実に緊張感を持っている。しかし、無鉄砲で大胆不敵なロンと冷静沈着なフリップが活躍すればするほど、相手を翻弄し、物語におかしみが生まれてくる。実に軽妙なクライム・エンターテインメントといえる。

とはいえ、テーマとして「楽しかった!」で終われない作品でもある。過去だけの話ではなくて、人種差別や白人至上主義は今でも根強く存在するからだ。本編のラストに急に生々しく映し出されるここ数年のドキュメンタリー映像は、観る者に警鐘を鳴らす。かつて『ドゥ・ザ・ライト・シング』『マルコムX』といった人種差別というテーマに真摯に向かい発信してきた監督スパイク・リーは、この作品を現代に紐づけて演出している。そして、作品中でもKKKのデビッド・デュークが口にする「『アメリカ・ファースト』って最近耳にしたことがあったな」なんて思いながら、俳優たちが演じている物語も現実世界も地続きなのだ、と気づくだろう。


『ブラック・クランズマン』

監督:スパイク・リー
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、アダム・ドライバー、ローラ・ハリアー、トファー・グレイス、アレック・ボールドウィンほか
2019年3月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
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『ブラック・クランズマン』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi