200年の時を超えて、現代にも通じる
野心と嫉妬の三角関係に感情移入してしまう

時は18世紀初頭、舞台はルイ14世が統治するフランスと交戦中のイングランド。揺れる国家と女王のアンを、彼女の幼馴染で女官長を務めるレディ・サラが操っていた。そこに、サラの従妹で上流階級から没落したアビゲイルがやって来て、召使として働くことに。サラに気に入られ、侍女に昇格したアビゲイルだったが、彼女の中に生き残りをかけた野望が芽生え始める。夫が総指揮をとる戦争の継続をめぐる争いにサラが没頭しているうちに、アビゲイルは少しずつ女王の心をつかんでいくのだが…。

まず圧倒されるのは、舞台となる城やキャストが身にまとうドレスの素晴らしさ。そして、息をのむほど輝かしい美麗な女性たち。しかし、じきに目を奪われるのは、美しさの裏にある功名心と裏切りだ。18世紀当時、権力を3人の女性が操り、英国だけではなく、ヨーロッパの政治にも影響を与えたという話はとても興味深い。女性のプライドを賭けた戦いは、会社の一つ先の部署でも起こりそうで、とてもリアリティがある。環境は違えど、または自分の周りに置き換えることも簡単で、実にハラハラしてしまう。もちろん、男性にもあり得る話で、社会の中で成功を収めたいと願う40歳男子の中には、少なからず共感できる部分も出てくるだろう。

次に、名女優たちが演じた3人のキャラクターが、実話とは思えないほど奇天烈でおもしろい。つねに不安や痛風に悩まされながら躁鬱を繰り返すアン女王を演じるのは、オリヴィア・コールマン。女王の財布を握り、必要に応じて女王を恐喝する当時最も強力な政治権力者だったレディ・サラ・チャーチルはレイチェル・ワイズ。そして、苦難の人生を歩んできた真の強さと、そこから滲み出る人を魅了する才能を持つアビゲイルをエマ・ストーンが熱演する。激しい駆け引きをする一方で女優たちがふと見せる、人の弱さや愚かさにぐっと心を揺さぶられる。誰が正しくて、誰を応援するべきかは正直わからない。それぞれの野心と正義と苦悩があって、一人ひとりがエンタメになっている。時におかしく爽快で時に切ない、ユニークな宮廷ドラマに注目だ。


『女王陛下のお気に入り』

監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ、ニコラス・ホルト、ジョー・アルウィン
2019年2月15日より全国公開
©2018 Twentieth Century Fox

『女王陛下のお気に入り』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi