かつて青年だったオジサンを応援!
素直な心があればやがて人生は輝き出す

終わりの見えない経済の低迷が続く1974年のイングランド。北部の退屈な町バーンズワースに暮らす高校生のジョンは、学校にも家庭にも居場所がなく、毎日にうんざりしていた。唯一のなぐさめは、そんな自分を気遣って優しくしてくれる祖父と過ごす時間と、毎朝バスでかわいい黒人の看護師を見つめることだけ。ある日、両親に勧められ、気乗りしないまま行ったユース・クラブで、ソウル・ミュージックに合わせて激しく踊る青年マットに出会う。初めて聴く音楽と軽快なダンスを目の前に、ジョンにとって新しい世界の扉が開かれた気がした。マットが傾倒する斬新な“ノーザン・ソウル”に、彼もまた次第にのめり込んでいく。高校をドロップアウトしたジョンは、マットとコンビを組みノーザン・ソウルDJとして活動をスタートする。やがてトップDJになるため、新しいレコードを探しに仲間とともにアメリカへ行くことを夢見るが…。

ノーザン・ソウルは、イングランド北部のクラブDJの個人的なセンスであり、音楽のジャンルとしての定義はない(のちのレイヴ・カルチャーなどに影響を与えたムーブメントも指す)。7インチシングルを使ってクラブで激しく踊れることが重要で、DJは誰も知らないレアなシングルを探し出し、躍らせることだけに情熱を注いでいたという。フロアが盛り上がる曲はDJにとってアイデンティティであり、誰にも真似されないように曲名を隠していた。それを観客たちは“COVER UP(隠蔽)”と呼んでいた。ブルース・リーのようなキックをしながらウッドフロアで踊り、未知のレコードをディグリ続けるジョンやマット。好奇心に身を任せ、好きなことに一直線に突き進む姿にワクワクが止まらない。

というのも、この映画は、かつてジョンと同じような若者であったオジサンたちが終わった若さを懐かしむ作品ではなく、今だって若者の延長にいることを認識して、元気をもらえる人生賛歌なのだ。だって、オジサンも自分を少しは変えてみたいし、何か新しいことに挑戦したいし、友情や恋心に浸りたいって思うから(あとは体力との相談か…)。学校ではいじめられ、家庭では母親に変な子だと言われるジョンは、きっとピュアだっただけだ。馴染めない友達にあえて迎合しないのも、新鮮な音楽であるノーザン・ソウルに心をときめかせるのも、そして気の合う仲間のマットとはすぐに親友になれるのも、自分に素直だからだ。その心は今のオジサンも共感できる。ただ、現実に生きている大人たちは、世間体や人の顔色をうまく見ながら過ごさないといけない。だが、ジョンとマットの友情や情熱を見ることで、自分たちだっていつでも心は彼らのような若者に戻れるのであれば、いくらか毎日が楽しくなって気持ちが軽くなるだろう。


『ノーザン・ソウル』

監督:エレイン・コンスタンティン
出演:エリオット・ジェームズ・ラングリッジ、ジョシュ・ホワイトハウス、スティーブ・クーガンほか
2月9日より新宿シネマカリテ、神戸・元町映画館にて公開。以降、全国順次公開。
Film © 2014 Stubborn Heart Films ( Heart Of Soul Productions) Limited All Rights Reserved.

『ノーザン・ソウル』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi