今に至る政治とマスコミの
あり方を変えた歴史的事実を追う

舞台は1988年アメリカ・コロラド州。ジョン・F・ケネディの再来と言われたゲイリー・ハート上院議員は、大統領選挙の最有力候補“フロントランナー”に躍り出る。若き天才政治家に死角はないはずだった。しかし、マイアミ・ヘラルド紙がつかんだスキャンダルが世に出ると事態は急変する。ハートの政治家としての才能や理念を捨て置き、一斉にスキャンダルを報じるマスコミ。それらの報道に踊らされ、迷走する世論。そして、国の未来を考える余地すらなくなる国民。ハートの政治生命が抹消される引き金となった一連の事実の裏側に、いったいどんな真実があるのか…。

国民の味方として圧倒的カリスマ性を放ち、大きな支持を集めていたハートが、あるプライベートの一部を報道されたことで政界から姿を消してしまう歴史的事実を描いた本作。主人公のハートをはじめ、選挙キャンペーンスタッフ、真実を追い求めるジャーナリスト、スクープが欲しい記者、ハートの妻と娘、12人それぞれの視点で描かれ、この事件を前に誰もが選択を迫られていく。こんなことが起きたらどう対処するか。どんな反応をするか。次に打つ手は。そして結果どうなるのか──ストーリ―は実に臨場感たっぷりでスピーディに展開していく。追い詰められていくハートを見届けながら(結末はわかっているものの!)、最後まで緊張感はそのままに観客を引っ張っていく。

米国政治史上では、大統領の性や結婚、家族背景などに関して、多くのことが許容された時代が長かったという。重要なのは政策や行動であり、人柄や個人の問題は別物(かのジョン・F ・ケネディ大統領にも女性問題はあった)。しかし、この事件をきっかけにマスコミと政治家の距離感はぐっと近くなり、刺激を求める国民の関心とも相まって、多くの人が政治家の政策よりも人柄を重視する価値観へと変化していった。そして選挙は徐々に人気投票へと加速していくことになる…。もちろん、品行方正で誠実な人であれば、国民は安心して信じられる。同時に、信じたいという気持ちがあるからこそ、ハートのような優秀な人の裏側が暴かれることで拒絶反応をしてしまったのかもしれない。その政治家が輝いている理由は、感情に訴えかけるスター性なのか、それとも能力なのか、その境界線を改めて考えるきっかけになるだろう。


『フロントランナー』

監督:ジェイソン・ライトマン
出演:ヒュー・ジャックマン、ヴェラ・ファーミガ、J.K.シモンズ、アルフレッド・モリーナ
2019年2月1日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

『フロントランナー』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi