男女間に時間をかけて積もる
愛と嘘を繊細、かつリアルに描く

偉大なる世界的な作家と、彼を慎ましく支えてきた完璧な妻。長年連れ添ってきた夫婦の関係は、夫ジョゼフがノーベル文学賞を受賞したことで静かに揺らぎ始める。授賞式に出席するため、2人はスウェーデンのストックホルムを訪れ、ジョゼフは式のリハーサルなどの慌ただしい行事をこなすことに。一方、夫が栄光のスポットライトを浴びようとしている陰で、妻ジョーンは彼を愛しながらも、心の奥底に溜め込んだ複雑な感情がわき起こってくるのを抑えられなくなっていた…。

長く結婚生活を共にしている夫婦が一緒に観たら、妙にドキドキしてしまうかもしれない(夫のジョゼフがやや軽率だから、男性陣は気まずいかも…)。授賞式会場で無遠慮な発言を繰り返すジョゼフに辟易していると、ジョーンの元に記者のナサニエルがやって来て言う。「“影”として彼の伝説作りをすることにうんざりしているのでは…」と。ここから夫婦という、自分にとって身近な他人における心理サスペンスがじわじわと展開される。ドライな感情に駆られた現在と、出会った頃の、恋に溺れていた過去を行き来する秀逸なストーリーテリング。妻や恋人のいる男なら、この夫婦の人生に自分を置き換えて観てしまうだろう。円滑な夫婦生活を送るために、本当の感情を隠したり、よかれと思って嘘をついたり、フツーの我々だって男女間の“演技”はどんどん上手くなっていくもの。その危うさを、ひいては結婚の複雑さを感じ、ジョーンとジョゼフの駆け引きを見ていると、背筋がゾワソワしてしまう(こう書くと怖いけど、本作は結婚を否定しているものではない!)。

内なる激しい葛藤を見せる“天才作家の妻”を演じたのは、『危険な情事』『アルバート氏の人生』などでアカデミー賞に6度ノミネートの実績を持つ女優グレン・クローズ。本作で、第76回ゴールデン・グローブ賞主演女優賞を獲得し、本年度アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされている。また、ジョーンを愛しながらも男のエゴをさらけ出すジョゼフを演じるのは、『未来世紀ブラジル』『キャリントン』の名優ジョナサン・プライス。さらにクリスチャン・スレーターが夫婦の秘密を探る記者役で曲者ぶりを披露する。名優たちの演技にハラハラしながら見届けた最後の最後、内気で品のある妻が出る行動とはいったい…。あなたは奥さん/恋人のことを本当にわかっていますか?


『天才作家の妻 -40年目の真実-』

監督:ビョルン・ルンゲ
出演:グレン・クローズ、ジョナサン・プライス、クリスチャン・スレーター、マックス・アイアンズ、ハリー・ロイド、アニー・スターク、エリザベス・マクガヴァン
1月26日より新宿ピカデリーほか全国公開
© META FILM LONDON LIMITED 2017

『天才作家の妻 -40年目の真実-』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi