混沌とした時代に輝く天才の姿を
貴重なエピソードとともに回顧する

1978〜81年頃、バスキアは路上生活をしながら友人のアパートを転々とし、ニューヨークのストリートに作品を刻みつけていた。ファッションや音楽など、さまざまな新しいカルチャーが生まれた激動の時代に愛された彼は、ドラマチックな成功を収めた矢先に27年という短い人生を終える。いまやダ・ヴィンチやピカソと同じように、その存在に触れなければ美術史を語れない重要なアーティストの一人。そんなバスキアが唯一無二の芸術家へと成長していくさまを、宝のような映像や証言を交えて映し出していく。

1970年代末にかけて、ニューヨークは財政が崩壊したことで、人々の生活水準は悪化し、暴力と犯罪が増加。その一方で、音楽を根本から変えたヒップホップやパンクロック、日々アップデートされるファッションやアート、そして揺れ動く政治に人種問題など、刺激的なムーブメントが巻き起こっていた。まだ何者でもない若者にとっては、既成概念を壊し、新しい時代を自分たちの手で作り出すチャンスでもあったのだ。本作では、当時のニューヨークの実態を語るとともに、バスキアのリアルな姿を、時代をともに生き抜いた名だたる友人たちが振り返る──映画監督のジム・ジャームッシュ、映画『プラダを着た悪魔』の衣装を担当したファッション・デザイナーのパトリシア・フィールド、アーティストのリー・キュノネスほか──映像を見ているだけで感性が刺激され、知的好奇心が湧き上がるにちがいない。

そして本作の大きな見どころに、バスキアが有名になる前、10代の頃に一緒に暮らしていた元カノのアクシス・アドラーが30年間個人で所蔵していたコレクションの映画初公開がある。絵画だけでなく、部屋の冷蔵庫、壁、ドア、そして外のゴミまでがアートに変わる様子や創作中の写真も登場し、彼の存在を身近に感じるとともに、圧倒的才能を体感する絶好の機会となっている。世界を巡回しているバスキアの回顧展『ブーム・フォー・レアル』のように、まるで美術館を巡っているかのような満足感と感動を得られる。


『バスキア、10代最後のとき』

監督:サラ・ドライバー
出演:ジャン=ミシェル・バスキア、アレクシス・アドラー(生物学者)、ファブ・5・フレディ(ミュージシャン)、リー・キュノネス(グラフィティ・アーティス ト)、ジム・ジャームッシュ(映画監督)、パトリシア・フィールド(ファッション・デザイナー)
2018年12月22日より、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
©2017 Hells Kitten Productions, LLC. All rights reserved. LICENSED by The Match Factory 2018 ALL RIGHTS RESERVED Licensed to TAMT Co., Ltd. for Japan Photo by Bobby Grossman

『バスキア、10代最後のとき』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi