歴史的事件の裏で紡がれる
子供を守る大人へのメッセージ

1992年、LA・サウスセントラル。家族と暮らせない子供たちを育てる女性、ミリー。貧しいけれど、彼女には愛情が溢れ、多くの人の居場所となっていた。隣人のオビーは騒々しいミリーたち家族に文句をつけながらも、実は彼らを見守っている。しかし、黒人が犠牲になった事件に対する不当な評決が出たことにより、LAで暴動が始まり、ささやかに暮らしていたはずの彼らの生活にも変化が訪れる…。

人は相手の善良な面を信じるようにできている。なぜならその方が社会を作りやすく、生きやすいからだ。それは家族という最小単位の社会では大きな意味を持ってくる。ミリーは全身に愛を湛えていて、不遇な子供たちと家族を築くステキな女性。オビーは、口は悪いが心根は優しく、彼女たちの精神的支えになってくれる頼れるオジサン(日本にもかつて近所にひとりはいた)。2人が人間的にとても魅力的で、感情移入する。安心する。期待する(もちろん名俳優のダニエル・クレイグとハル・ベリーの演技力も大きい)。確かに経済的に余裕はないけれど、子供たちを未来へ導き、見守るという人間本来の誠実な姿に感動してしまう。

しかし、この作品は社会の光と陰も描いている作品だ。1991年に実際に起きた2つの事件とそれらに対する裁判所の不当な判決による暴動を、家族の目線で展開する──一つは、黒人男性が白人警官から理不尽な暴行を受けた「ロドニー・キング事件」。もう一つは万引き犯と間違われた黒人の少女が韓国系の女店主に射殺された「ラターシャ・ハーリンズ射殺事件」──。ミリーの手によって肌の色に関係なく堅い絆と愛情で結びついた家族も、人種差別が横行する不安定な社会の波を受けてバランスを失う。そして、圧倒的な絶望がもたらされたクライマックスに映画は問いかけてくる。人を信じてよいのか。最後まで希望を捨てず、生きることを諦めないミリーとオビーを追いかけながら、まず自分が信じられる大人になることから始めればいいんだと、元気づけられるだろう。


『マイ・サンシャイン』

監督・脚本:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
出演:ハル・ベリー、ダニエル・クレイグ、ラマー・ジョンソン、カーラン・ウォーカー、レイチェル・ヒルソン
2018年12月15日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国公開
©2017 CC CINEMA INTERNATIONAL–SCOPE PICTURES–FRANCE 2 CINEMA-AD VITAM-SUFFRAGETTES

『マイ・サンシャイン』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi