音楽と愛に溢れた人生を送る
スーパー・スターの光と陰

グラミー賞を18回受賞し、ロックの殿堂入りを3回果たすなど、長年音楽界を牽引し続ける世界的ミュージシャン、エリック・クラプトン。ジェフ・ベックやジミー・ペイジとともに、世界3大ギタリストと言われ、“ギターの神様”と評されてきた。お金や名声よりも音楽性を優先し、愚直なまでにブルースに身を捧げ、天才の名を欲しいままにしていたが、私生活では欲望と愛情、快楽と幸せの区別もつかないまま、いつも“何か”を探して彷徨い続けていた。酒、ドラッグ、女、そして音楽、すべてのものに溺れていく彼の姿を赤裸々に映していく。

このスーパースターの素顔を、どれだけの人が知っているだろうか。複雑な家庭環境で母親に拒絶された少年時代の孤独、ともにギターの腕を競いあったジミ・ヘンドリックスら仲間たちの喪失、親友ジョージ・ハリスン(ビートルズ)の妻パティ・ボイドへの恋と苦悩、ドラッグとアルコールに溺れた日々、そして最愛の息子コナーの死。世界を魅了する数々の名曲を生んだ才能の裏には、波乱万丈の人生が対となって横たわっていたのだ。本編では、エリックが当時の映像やエピソードを振り返りながら穏やかにナレーションを重ねる。それは逃げられない自分の過去と対峙し、克己した姿を想像させる。

類まれなる音楽の才能と修練、さらに抜群のルックスを持つエリックは、デビューしてたちまち音楽界の寵児になるが、どこか満たされない。まるで、人生の答えを見つけるために歩く放浪者のよう。純粋に音楽と向き合いたい彼は、次々とバンド仲間や恋人と出会うものの、すれ違ってしまう。そして数奇な運命をたどるように、彼の前には数々の試練が立ちはだかる。人生の谷間であるその大きな溝を乗り越えるとき、名曲『いとしのレイラ』や『ティアーズ・イン・ヘヴン』が生まれた。じきに、帰る家と家庭を手に入れ、健康的な人間関係に生きる力と癒しを見出す。

本編の最後に、エリックの友人でありミュージシャン仲間である(そしてご存知、偉大なブルースギタリスト!)故B・B・キングがステージで語る映像が入る。「俺が永遠に生きますように。でも君(エリック・クラプトン)は永遠+1日生きろ。君のいない世界は見たくない」。壮絶な人生を送っていても、世界の人々を感動させ、幸せにするエリック・クラプトンが、家族や友達に囲まれ、今を幸せに生きているということが、この映画の最高のエンディングなのではないかと思う。


『エリック・クラプトン ─12小節の人生─』

監督:リリ・フィニー・ザナック
出演:エリック・クラプトン、B・B・キング、ジョージ・ハリスン・パティ・ボイド、ジミ・ヘンドリックスほか
2018年11月23日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
© BUSHBRANCH FILMS LTD 2017

『エリック・クラプトン ─12小節の人生─』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi