時間と次元を超えて存在する
好きという思いを死後の世界から読み解く

田舎町の一軒家で暮らす1組の若い夫婦。作曲家のCはこの家が気入っているが、妻のMはどこか別の場所に移りたいと思っている。幸せな日々を送りながら、家をめぐって2人の間に小さな確執が生まれていた。そんなある日、Cは自宅前で起こした自動車事故で突然命を落としてしまう。病院で呆然としながら死体を確認するMは、耐えられずその場を去る。その瞬間、死んだはずのCはシーツを被った状態で起き上がり、家に向かって歩き出す。自宅でMと遭遇するも、彼女はどうやら彼の存在に気づかないようだった。

微妙にすれ違ったまま、2度と顔を合わせることが叶わなかった2人の男女。男は変わらず愛している恋人のそばに寄り添い、女はその感触すら感じないまま悲しみにくれる。やるせなくて、どこかものさびしい空気は、物語が始まる前の幸せな時間を十分に想起させ、また男の不甲斐なさ、無念さも痛いほど感じる(恋人や妻と喧嘩した後、素直に謝れない気持ちのような…)。しかし、古典的なシーツを被った幽霊は感情を読むことができない。ご丁寧にも目の穴は開いているけど、漆黒の闇があるだけ。唯一できることといえば、物を動かしたり、照明を明滅させたりすること。ポルターガイストという叫びだ。幽霊は家の角を曲がり、階段を上り、壁をさする。宙を飛び回ったり、人に取り憑いたりはしない。あくまで人間がそのまま移行した形であり、その人間味こそが幽霊から見た死後の世界という、ありそうでなかった物語を繊細に描いている。

そして幽霊となったCは去っていくMを力なく見届け、幾重の時代を経て、新しい旅に出る。終わりのない魂の行方は、やがて意外な形で終着点にたどり着く…。本編は終始、スタンダードサイズというアスペクト比1.33:1で撮影されている。これは、古典的サイレント映画時代の比率であり、監督は「映画にどこか古風で懐かしい雰囲気を引き出す」ことを目指していた。また、丸くした額縁型のフレームにしていることで、古い写真やスライドを眺めているような印象を抱かせる。同じ次元にはいないけれど静かに傍観している。幽霊のCがMを見守るように、観客がCを見守るというレイヤー構造が、実に不思議な感覚をもたらす。92分の上映時間の中で、今までにない感情が沸き起こるだろう。


『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』

監督:デヴィッド・ロウリー
出演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ
2018年11月17日より全国公開
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『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi