自分は何者なのか…。
夢と現実の間で生きる複製画家の人生を追う

複製画制作で世界の半分以上のシェアを誇る油絵の街、中国・大芬(ダーフェン)。出稼ぎでこの街にやってきた趙小勇(チャオ・シャオヨン)は独学で油絵を学び、20年もの間ゴッホの複製画を描き続けている。絵を描くのも食事を摂るのも寝るのもすべて工房の中。いつしか趙小勇は、今後の人生の目標を明確にしたいという熱い思いを胸に、オランダ・アムステルダムにあるゴッホ美術館へ行くことを夢見る。

この作品で描かれているのは、複製画制作が産業として確立している大芬の「油画村」の実情と、絵画に対する誇りと愛とともに生きる画工(複製画を描く絵描き)の姿だ。主人公の趙小勇は1996年に出稼ぎでこの街を訪れ、それ以降10万点以上の複製画を家族とともに描き世界中に送り出してきた。そして、彼は自分に問う。数十年もの間、誰よりもゴッホを描いてきたのに本物を見たことがない。ゴッホを生業とし、敬愛する彼は、本物を見てなにか気づきを得たいとアムステルダムへ向かう。度々スクリーンに映し出される趙小勇の眼差しは、大好きなものに熱中する少年のように澄んでいて、その絵画に向かう純粋な姿は、誰もが羨ましく思い、魅せられるだろう。

妻の反対を押し切り、なんとか渡航費を捻出し、趙小勇はついに仲間たちと旅立つ。取引先のアムステルダム画廊の元を訪ねてみるが、そこには彼が思いもしない現実が待っていた…。自分は職人か、画家か──。ゴッホの生き様に自分を写し合わせ、本物の絵画を前に何百万回となぞった筆致を反芻する中で、彼はたしかにある気づきを得る。大芬に戻った彼は、澄んだ眼差しで前を見据える。絵画に人生を捧げた男の人生の大きな決断に、胸が熱くなる。


『世界で一番ゴッホを描いた男』

監督:ユイ・ハイボー、キキ・ティンチー・ユイ
2018年10月20日より、新宿シネマカリテ/伏見ミリオン座ほか、全国順次公開
© Century Image Media (China)

『世界で一番ゴッホを描いた男』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi