“ないもの”を探し出すのはもっとも難しい。
それを追いかける男の行く道は暗く長い

大物”になる夢を抱き続けたが、気がつけば職もなく、家賃まで滞納しているサム。隣に住む美女サラにひと目惚れし、何とかデートの約束を取り付けるが次の日、彼女は忽然と消えてしまう。もぬけの殻になった部屋を訪ねたサムは、壁に書かれた奇妙な記号を見つけ、陰謀の匂いをかぎ取る。その頃巷では、大富豪や映画プロデューサーらの失踪や謎の死が続き、真夜中になると犬殺しが出没するなど、街を操る謎の裏組織の存在が噂されていた。そんな中、サムは重要なヒントが冊子<ニンテンドウパワーマガジン>の地図の中の暗号に隠されているという事実に辿り着くのだが──。

ゴリゴリのオタク気質で陰謀論好きであるサムは、我々40歳男子がすでに置き忘れてきたピュアな存在だ。好きな女の子のためなら無尽蔵にやる気が出てくるし、いざ対象が手に入らなければ入らないほど向こう見ずな行動を取ってしまう。のちのち恥ずかしいことだったと振り返ろうとも、いい思い出になるあの若かりし頃の男子。そんな共感を得る作品だが、サムと一緒に憧れのサラを追いかけ、謎解きを続けるうちに、ピリピリと不穏な空気を感じる。我々が毎日触れているもの、例えば広告や映画や音楽の中に、何者かのメッセージが仕込まれていると思い込んでしまう。これは、ポップ・カルチャー愛好家が長年取り憑かれている現象だというが、この作品で恐ろしいのは、探しているものが好きな女性から、特別な存在だと信じ込む自分にすり替わっていることなのだ。気づいたら自ら求めてしまっている陰謀や謎に絡め取られたサムは後戻りができなくなってしまう……。

監督は『アメリカン・スリープオーバー』『イット・フォローズ』で世界中を魅了するデヴィッド・ロバート・ミッチェル。彼が家族と住むカリフォルニアでふと「あのロサンゼルスの丘に建っている屋敷の中では、一体何が置きているのだろうか」という疑問から物語を組み立て、ハリウッドがもつ華やかな“光”から生まれる“影”を掘り起こす青年を主人公に据えた。この脚本は、『ソーシャル・ネットワーク』や『ムーンライト』、『イット・フォローズ』を手がけたそれぞれのプロデューサーたちが心を奪われ、度肝を抜く野心に飛んだ作品と評している。これを聞くだけで見ないわけにはいかない。『イット・フォローズ』のスタッフが再集結した本作は、細部までこだわったプロットや幻想的な映像を作り出し、前作同様、これまでにない感覚を味わわせてくれる。


『アンダー・ザ・シルバーレイク』

監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
出演:アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオほか
2018年10月13日より新宿バルト9ほか全国順次公開
© 2017 Under the LL Sea, LLC

『アンダー・ザ・シルバーレイク』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi