この世のあらゆる普通を憎んでいます! 異常こそ我が人生! ま、そういう世代じゃないですか、今54歳なんで。10代の多感な時期、リアル暴力が音楽とワンセットで、ライブに行けば3段特殊警棒でブン殴られる恐怖までもが自動的にオプションで付いてたハードコアパンクで’80年代を過ごし、無職ライフをはからずも満喫していた20代、深夜テレビをつければ企画単体AV女優の皆様が和太鼓のリズムに合わせて一斉にアンアン悶え出す集団催眠が名物の番組や、「アイドルが一日ホームレス体験!」と題してノーアポで新宿駅のダンボールハウスにガチで一泊したりの無茶な番組が連日明け方まで放送されていた’90年代を通過。そんなんばかり見てきたおかげで、2000年を過ぎてからも何らかの口実をつけて自分のバンドのライブでチ●ポを出し続けることに邁進。普通に服着てライブなんかやってられっかっつの! こちとら常軌を逸してナンボじゃい!

掟ポルシェ_ゲルニカ_推し

 すべての正統に背き、全力で「何故そっちに行く!?」と理解するのに時間を要するものばかりビンビン来る。そんなエクストローディナリー愛好家なアテクシの並外れ突拍子もない音楽の原体験が、そう! ゲルニカです!



掟ポルシェ_ゲルニカ_動力の姫

右から左へ表記されたタイトル文字がどこにもない捏造大正ロマンを描き出す1stアルバムはエバーグリーン。ちなみに中学の給食の時間のお昼の放送でかけたら中年男性体育教師が「これ気持ち悪くてダメだ! 今すぐやめてくれ!」と血相を変えて飛び込んできたなんてこともありました(曲は「動力の姫」。まぁ田舎の体育教師には理解が難しいのもわかる)。


 1982年6月、1stアルバム『改造への躍動』で鮮烈デビュー。YMOでおなじみのアルファレコードの中でひときわ普通じゃないものを選りすぐってリリースしていたYENレーベルからなんかとんでもないのが出た! ってことで、リアル中2の春に近所のレコード屋で発売日に購入。NEW WAVEやPOST PUNKの嵐吹き荒れる’80年代初頭に、大正時代のモボ・モガに扮したうら若き男女の姿が颯爽と時代の気風を無視しており頼もしい。電気パーマを当てた真珠夫人の名は戸川純! ビートたけし主演のTVドラマ「刑事ヨロシク」でネクラなお茶汲み女子・西ツヤ役を超絶怪演中のあの人! その隣にいるポマードでシュッと整えたテクノカットの勉強出来そうな風貌の青年は上野耕路! ハルメンズや8 1⁄2で狂乱のシンセサイザーを涼しい顔で奏でていたあのヤバい若者! そして表には出ないが作詞とビジュアルイメージを総合プロデュースするのは太田螢一! 帯も歌詞カードも誇張しすぎてオリジナルのやりすぎ旧仮名遣い表記で華麗に文化目眩まし! 若き才能溢れる傑物三名の邂逅が、普通だらけの日本歌謡界の片隅で綺羅星の如く叡智と異才をスパークさせており、塩化ビニールの匂いにホルマリン風味の幻臭を誘うのである!


掟ポルシェ_ゲルニカ_20周年記念CDボックスセット

ゲルニカ20周年記念CDボックスセットのノベルティだったゲルニカのロゴ入り缶バッヂ。同じGロゴだからか場合によってはもうちょいフリーメイソンのあれに寄せたロゴもあり、疑似秘密結社感までも表現に取り入れていて、そこは80年代的。


 何を言ってるかわからないかと思いますが大丈夫だ俺にもよくわかってないんで!
レコード盤に針を落とせば不穏にして勇壮なピアノとバイオリン、ポップスの唱法とまったく異なる力強い戸川純の歌声は感情が昂りすぎた情念声楽の響き。なんだこれは! と戸惑っていると一転してストリングス系シンセとチープなDR-55ドラムマシンによるNEW WAVEサウンドが。それも一筋縄では行かず転調を狂おしく繰り返すメロディの妙味が恐ろしいまでに美麗。アメリカ生まれのセルロイドな児童唱歌にも似た回転数これであってます?的なSP盤歌唱に加え、テンポチェンジと複雑なメロディの奇っ怪な曲の快哉連打に息つく暇もない。シンセサイザーを用いているのにそれらは凡百のテクノポップとは一線を画し、ロックや歌謡曲の使い古されたフォーマットに頼らない未知のメロディによる快楽が新時代のポップスとして次々紡がれていく。革新しかない天才の所業が詰まったゲルニカのアルバムに、普通がどこにもないことに感動しがちな自分の原体験をみるのです。ま、原体験つっといて今もハードにヘビロテしとるわけですが。嗚呼~、スンゲエしっくりくる。



掟ポルシェ_ゲルニカ_サウンドール

YMO人気にあやかったテクノポップ専門月刊音楽誌「サウンドール」の付録ポスター。EP「銀輪は唄う」のジャケット撮影時の別カットと思われる。中学高校と部屋の壁に貼ってましたが、今もまた額装して部屋に貼ってます! ノーモア画鋲跡!


Profile
1968年北海道留萌市生まれ。ニュー・ウェイヴ・バンド「ロマンポルシェ。」のボーカル、楽器、および説教担当。荻窪のラーメン屋「ひつじそば 人と羊」をこよなく愛する。



Text:Okite Porsche
Photos:Kanta Matsubayashi
Title Design:ZUMA

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