天才ゴダールとその恋人兼女優が過ごした
日々から垣間見える人間の愛らしさ

パリで暮らす哲学科の学生アンヌは、20歳を前に人生を変える出会いを果たす。映画界に変革をもたらしたとされ、世界中から注目される気鋭の映画監督ジャン=リュック・ゴダールと恋に落ちる。さらに、彼の新作『中国女』で主演を飾ることになった! これまでになかった、新しい仲間たちと映画を作る刺激的な日々やゴダールからのプロポーズなどなど、生まれて初めての体験ばかり。アンヌはあらゆるものを夢中で吸収して魅力的な女性になっていく一方で、パリの街ではデモ活動が日に日に激しくなり、社会も変化の兆しを見せる。ゴダールは次第に革命に傾倒していき、そしてついに1968年の五月革命の勃発を期に、二人の関係も様相を変えていく…。

本作は、女優であり、作家であり、ゴダールの2人目の妻でもあったアンヌ・ヴィアゼムスキーによる自伝的小説の映画化。五月革命という社会的危機を迎える激動のパリを舞台に、見るものすべてが新しい、華やかな日常を通してひとりの女性として成熟していくアンヌが魅力的に描かれている。反体制運動にのめり込んで行く世界的天才と過ごした日々の光と陰を、人生の大きな分岐点として時にシリアスに、時にコミカルに表現し、観るものはいつの間にか人間のピュアな部分(みんな自分のことが好きだし、自分に素直でいたいと思う欲求がある!)に触れ、ハッとしてしまうのだ。

監督は、映画『アーティスト』でアカデミー賞に輝いたミシェル・アザナヴィシウス監督。アンヌを演じるのは、映画『ニンフォマニアック』で衝撃的なスクリーンデビューを飾り、ミュウミュウのフレグランスの広告塔を務めるなどファッショニスタとしても注目を集める女優ステイシー・マーティン。そしてゴダールを演じるのは、映画監督のフィリップ・ガレルを父に持ち、数々の作品でその演技が評価される名優ルイ・ガレルだ。当時世界が注目した完璧なカップルの裏側を、実に愛らしくチャーミングに演じている。

原作者であるアンヌ本人は惜しくも2017年10月に亡くなってしまったが、生前に間に合った完成作をとても気に入っていたとのこと。監督は、劇中で見せるゴダールに対して、「プライベートの彼と社会的な彼、コミカルな彼と悲劇的な彼、愛と政治の中を自由に行き来できるように気を配った」と語る。もしかしたらアンヌ自身は(ステイシー演じる劇中のアンヌの魅力はもちろんだが)、そんな憎めないかつての夫であり、カルチャーの象徴を思い出して楽しんだのかもしれない。この週末、愛と芸術と社会の変革の一瞬を見届けてみるのはどうだろうか。


『グッバイ・ゴダール!』

監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ルイ・ガレル、ステイシー・マーティン、ベレニス・ベジョ
2018年7月13日より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座他にて全国順次公開
© LES COMPAGNONS DU CINÉMA – LA CLASSE AMÉRICAINE – STUDIOCANAL – FRANCE 3.

映画『グッバイ・ゴダール!』公式サイト

Text:Hisamoto Chikaraishi

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